第41話 最後の日常2日目その2

 事件から2日目。

 朝食を終え藤井孝明ふじいたかあきとアイリーは一緒に映画を観たりゲームをしたりして過ごした。

 

 昼食を終えると孝明はちょっと買いたいものがあると言い出かけてしまった。

 残り時間が限られてる中できるだけ一緒にいてほしいと思うアイリーだったが、孝明が必要なものがあると言うのだから仕方ないと思い見送りする。


 アイリーは待っている間何をして過ごそうか悩んでいる時に部屋中をウロウロしていると、ふと孝明のパソコン画面が目に入る。

 孝明が何やら調べ物をしていたようでスリープモードもオフにしつけっぱなしで出て行ったようだ。


(どうしよ。勝手にいじったらダメだよね。でも・・・もっと孝明のこと知りたい)


 本来ならプライバシーに配慮し勝手に人のパソコンやスマホを覗くなどしないアイリーだったが、もうすぐ孝明と別れなければならない。

 そう思うとできるだけ孝明のことを知りたいと思い、思いとどまることができずにパソコンをいじりだす。


 するとそこには何やらアクセサリーの作り方を紹介したサイトのブラウザが開かれていた。

 どうやら孝明はまた何か作るつもりなのだろうか。

 もしかすると自分へのプレゼントかもしれない。そう思うとアイリーはパソコンを覗いてしまったことを後悔した。


(もし私に何か作ってくれるんだとしたら、見なきゃよかった。もらった時に嬉しさが半減しちゃう。)


 そしてパソコンから離れようとするアイリー。


 しかしその前に別のブラウザが開かれていることに気づく。

 アイリーはもう見るのはやめようとも思ったりしたが、どうしても気になってしまい結局見てみることにした。

 また見てしまったことを後悔することになるかもしれないが、今更だと思いマウスを操作しそのブラウザをクリックする。


 するとそこには「夜逃げ」「失踪 方法」等といったワードで検索したサイトが開かれていた。


 一体なぜこのようなものを調べていたのだろうか。

 まるで何かから逃げようとしているようにしか見えない、そう思うアイリーであった。

 だが明後日のアイリーの引き渡しの日になっても孝明は何の罪にも問われないはずである。警察から逃げ隠れする必要などないハズだ。

 それ以前に孝明なら自分に罪があったとしても、逃げたりせず素直に受け入れ警察の元はへと行きそうである。


「孝明・・・。」


 すると玄関が開く音が聞こえる。

 どうやら孝明が帰ってきたようである。


「ただいま。遅くなってごめんね。」


 アイリーはパソコンを見ていたことがバレないよう部屋から出て孝明を出迎える。


「おかえり孝明。何買って来たの?」


「へへ。内緒だよ」


 孝明は笑いながら誤魔化す。

 やはり自分の為に何か作ってくれるつもりなのだろう。

 孝明は自分を驚かせようと内緒でプレゼントを渡すつもりアイリーはますます孝明のパソコンを勝手に見てしまったことを後悔していた。


「さてと、何して過ごそうか。アイリー、何かやりたいことある?」


 孝明はとりあえず作業に入る訳ではなさそうであった。

 アイリーはおそらく自分がスリープモードに入ってから夜更かしして明日までに作るつもりなのだろうと思っていた。

 孝明に無理はしないでほしいと思いつつも、今は一緒にいてほしいとも思っていたので、とりあえず孝明の提案を呑むことにした。


「じゃあ孝明が好きって言ってた恋愛ドラマ。もう一回一緒に観たい。」


「うん、いいよ。」


 孝明はPCのサブスクを開き、アイリーの言っていたドラマを再生する。

 二人は隣りあわせで座り動画を鑑賞する。


 しばらく観ていると孝明がアイリーに尋ねる。


「アイリー、このドラマ気に入ったの?」


「このドラマがって言うより・・・孝明が好きだって言うからもっと知りたくなった。」


 孝明はそう言われると顔を少し赤らめる。


「あんまりそういうこと言われると・・・照れくさくなってくるなあ・・・。」


 またしばらく黙々とドラマの続きを観始める二人で会った。すると今度はアイリーが話し出す。


「孝明は・・・今一番好きなものや興味あるものって何?私、それが知りたい。」


 孝明は少し言うのをためらった様子を見せ答える。


「だったら・・・」


 孝明は少し溜め、優しく微笑みながら続ける。


「僕は君のことをもっと知りたいかなあ。」


 アイリーはその言葉を聞き嬉しく思い目を見開く。

 だがそれと同時に悲しみに満ちた表情を見せうつむき始める。


「私・・・自分の事何も分かってないかも・・・。」


「・・・え?」


 孝明は聞き返すように言いアイリーの言葉を待った。


「私、ついこの間まで自分の過去のこととか・・・自分がこんなに危険な存在だってことも・・・全然知らなかった。もしかすると・・・もっと危ないところ・・・あるかも・・・。だからごめんね。何も分かってないから・・・何も教えられなくて・・・。」


 アイリーはそのままだまりこくってしまう。

 だが孝明が優しく諭そうと彼女の頭を撫でながら伝える。


「アイリーは優しくていい子だよ。たとえ人に襲い掛かるリスクがあっても、それは君の意思じゃない。そうだろ?」


 アイリーはそう言われると無言で孝明の方へ寄り添う。


「孝明・・・。もっと頭撫でてほしい。」


「うん、いいよ。頭を人に撫でてもらうとなんか気持ちいいよね。」


 その辺はアンドロイドも一緒なのだなあと思う孝明であった。

 孝明は彼女の頭を撫でながらドラマの続きを一緒に観る。




 



 

 

 

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