第36話 処分
話を聞いた
横で聞いていた警部の
「なぜ当時嘘をつき今までその事実を隠し通して来たのですか?あなたは悪意あってそのようなことをした思えず聞くのですが。」
太田の問いに成瀬は答える。
「もしこのことを打ち明ければあなた方警察はアイリーを回収することでしょう。そして研究所のデータや資料等も押収し今後同じようなアンドロイドの開発を許さないでしょう。」
「・・・まあ、そうなるでしょうな。」
太田は肯定すると成瀬は話を続ける。
「私は・・・どうしても今回の企画を完遂させてみたかったのです。これが完成すれば日本・・・いえ、世界中の人たちに貢献できると思いアイリーに全てを掛けるつもりでした。ですので同僚にはこのことは内密にしてもらい
成瀬は苦笑しながら言う。
「皆が同意してくれたのは私と一緒の意志を持っていた・・・という訳ではなく、人の命を奪うかもしれないアンドロイドを開発してしまったと世間からの批判が怖かったのでしょう。皆何も見てないフリをして次々と辞めていき、残ったのは私だけでした。私はたとえ一人になってもどうしてもアイリーを完成させたい。もう二度とあのような悲劇が起こらないよう研究し続けたのです。」
そう言う成瀬だったが、悲しそうな目でアイリーを見つめる。
「ですが・・今回はそうはいかないでしょう。人が死んだ現場に2度も彼女がいては偶然で片づけるのは厳しい。そして藤井君とその友人にも知られ更に今回の騒動はすでに近所の住人もすでに目撃しているようだ。そうですよね?警部さん。」
「その通りです。すでにSNSでは今回の事件の目撃情報が出回っているようです。そのアンドロイドが被害者を突き落とすところを目撃した住人がいたようでしてね。」
太田はスマホを取り出し成瀬達にそれを見せつける。
『殴られていた少女が襲い掛かっていた女性を突き落とす』と書かれた現場の写真や動画が太田の言っていた通りヅイッターではトレンド入りしてしまっている。
「たとえそのアンドロイドとは別に他の物を開発し出品したとしても、あなたの製品を買い取ろうなどと言う会社や人々はいないでしょうね。」
太田は厳しい言葉を成瀬にかける。
「・・・はい。その通りです。」
成瀬はもう諦めたかのように放心状態で答える。
そして孝明はずっと太田に聞きたかったことを口に挟む。
「あの・・・。アイリーはこれからどうなるんですか?」
そう聞かれた太田は孝明を睨むような目つきで答える。
「人一人亡くなっただけでも大問題だ。しかもそれを隠蔽し理由はどうあれ今回また人の命を奪ってしまった。アンドロイドが人を殺めるなど前例のない事件だからなんとも言えないが・・・おそらく廃棄処分は免れないだろうな。」
今度は成瀬に向かって太田は言う。
「もちろん成瀬博士。その製作者であるあなたもただでは済まないでしょうね。業務上過失致死に加え、前回の事件を隠蔽した余罪も兼ねてね。」
成瀬は致し方ないといった感じで小さく頷く。
それを聞いた孝明は今まで感じたことのない絶望に浸る。
「アイリーを・・・殺すってことですか・・・?」
「まるで我々が悪党のような言い方だが・・・。まあそういうことだな。これ以上そんな危険な製造物を野放しにできる訳がない。」
孝明は自分がどうするべきなのか考えようとしたが、現実を受け入れることができず思考が停止し考えが巡らない。
そこで悠真が割り込んでくる。
「待ってくれ!たしかに取り返しのつかないことをしちまったかもしんないけど、アイリーちゃんは人を助けようとしてこんなことをしちまったんだぞ!もし彼女が止めなかったら孝明は今頃 、
悠真は必死に太田を説得しようとするがあっさり否定に入る。
「俺が決めることじゃねえからな。判断するのは上の連中だが、そうなるだろうって話さ。人ならお前の言う通り今回の事件の正当性も認められるかもしれねえ。こういう場合当てはまるとしたら緊急救助ってやつだな。だがあくまでそいつは物だ。人間の法律を適応させるのは厳しいだろうな。」
「けど・・・!!」
悠真が何か言おうとする前に太田は一喝し黙らせる。
「ガキがなめた口聞いてんじゃねえぞ!!お前ら、そいつを見逃して今まで通り日常生活に戻した時、次に同じ過ちを犯さないという保証はどこにある!?それでまた人が死んでお前らは責任が取れるのか!?下手したら、次に殺されるのは貴様らかもしれないんだぞ!!」
「・・・!!」
悠真は何も言い返すことができなかった。
太田の言っていることが正論だったからである。
もしまたアイリーが人を殺めてしまったら・・・。
命とまではいかなくとも取り返しのつかない重体を負わせてしまったら・・・。
相手と身内の方にどう詫びれると言うのか。
更に自分たちの身の危険を考えるとこれ以上アイリーを今まで通り人間社会にいさせるのは無謀極まりないのかもしれない。
「・・・アイリー・・・。」
孝明も悠真も何も言うことができず、ただ彼女の名前を呟くしかできなかった。
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