第24話 団欒
しかし今日は友人の
アイリーと一度会って話がしてみたいと言うのだ。
大学の方までアイリーを連れて行って会わせ他の人に見られてしまい注目の的になってしまうのは避けたいと思い家で会ってもらおうと思ったのだ。
「アイリーちゃんかあ。一度見たことあるけど遠目でだったし楽しみだなあ。人形とはいえすごいかわいい子だったもんなあ。」
「お前ってかわいい女の子好きだよなあ。見境がないというかなんというか。」
悠馬は周囲に配慮ができ紳士的な雰囲気があるが女の子のことになると割と女癖が悪いような言動を見せる。
会った時から女の子を見かけると『なあ、あの子かわいくね?』と言って相槌を求めてきたりしていた。
「お前だって好きだろ?アイリーちゃんと一緒に暮らしたいって思ったのだってかわいいからじゃないのかよ?」
「いや・・・!決してそんな・・・。」
そんな気は無いとは言い切れなかった。
悠真ほどでなくともやはり孝明もかわいい女の子は好きだ。
孝明がアイリーのモニタリングをしてみたいと言い出したのは当時は自分でも分からなかったが、今思えば
最初は
「照れるなって。男はみんな女の子が好き。これは生物学的に逆らえない本能なのだよ、孝明君。」
「は・・・はは・・・。」
孝明は反論できずそのまま孝明の住むアパートへと向かう。
孝明と悠真は家に到着するとアイリーが玄関に来て出迎える。
「おかえり孝明。・・・その人は?」
アイリーに聞かれ、孝明は悠真を紹介する。
「ああ。大学の友達の山崎悠真だよ。前水族館へ一緒に行っただろ?その時僕らの事見かけたらしくって、お前に会ってみたいんだってさ。」
孝明がそう言うと悠真は手を差し伸べ挨拶をする。
「初めまして。山崎悠真だ。アイリーちゃん、アンドロイドなんだって?こんな間近で見ても全然そうは見えないなあ。ま、よろしくな。」
「うん。よろしく。」
そう言うとアイリーも手を差し出し悠真の手を握る。
彼女の手を握った悠真は彼女が本当に人間ではないのだと改めて実感する。
「男の人、女の子の手握るの好きって聞いた。でもごめんね。私、人間の女の子ような温かさも柔らかさもない。私あくまで災害とかで活用するのがメインで身体がもろいと困るから人間に近い皮膚に改良する気は無いって博士言ってた。」
アイリーの言葉に悠真が返す。
「い・・・いや気にすんなよ、はは・・・。別にそういうつもりで握手しようと思った訳じゃねえんだから。」
たしかにそうだろうと孝明は思った。
危険な場所に飛び込むこともあるだろうしそれで身体がもろかったら本来の目的も果たせずに終わるだろうと。
孝明を交通事故から助けた時もそうだ。
あれで普通の人間と同じ作りだったら今頃彼女は無事では済まなかったはずだ。
「でも孝明のやつ毎日君に帰ってきたら出迎えてもらえるし、最近のあいつの弁当だって君が作ってあげてるんだろ。まったく羨ましいぜ。贅沢の極みだよ。」
「はは・・・。おっしゃる通りで・・・。」
孝明は悠真の発言に照れながら答える。
自分でも一人暮らしの大変さを忘れてしまいそうなくらい助けてもらっていると思っている。
「なあ、悠真。今日の夕飯家で食べて行かないか?お前も食べてみたいだろ?アイリーの手料理。」
孝明がそう言うと悠真は嬉しそうに答える。
「いいのかよ?俺の分まで作ってもらったら大変じゃね?」
アイリーは問題ないという風に答える。
「大丈夫。1人分が2人分に増えてもそんなに手間増えない。私味分からないからレシピ通りにしか作れないけど、それでもよければ食べてって。」
「それでも嬉しいよ。じゃあお言葉に甘えさせてもらうぜ。」
「じゃあ、二人とも座って待ってて。今から作る。」
アイリーはそう言うとキッチンへ行き準備を始める。
「なんかデキのいい奥さんって感じだな。お前もしかして
「何言ってんだよ!そんな訳・・・。」
否定しようと思う孝明だったが、まんざらでもなかった。
正直もう最初のような関係は無理だと確信しておりもう別れたいとまで思うようになってきている。
逆にアイリーとはできればずっといたいと思っているし、彼女が本当に人間だったらよかったのにと最近思うことが多い。
「冗談だって。流石に人間とアンドロイドがくっつくのは無理があるよなあ。悪かったよ。」
悠真の言う通りなのだが、だが孝明は本当に人間同士の男女のような関係を持つことは無理なのだろうかと。
世の中には建造物と結婚したという事例もあるのだから形だけでも許されないだろうかと思ってしまう。
しかし現実問題、いくらお互い愛し合っていても子供ができることはない。
そして寿命もアイリーは修理を繰り返せばいくらでも生きることができるだろう。
だが人間はこれから寿命がより延びると言われていてもせいぜい100年ほどだ。
アイリーを一人残してこの世を去る運命は避けられない。
もちろん元々男と女とでは女性の方が長生きすることが多いので人同士でも女を一人残してしまうこともあるが、アイリーの場合ずっと長い時間孤独を味合わせる羽目になってしまう。
「おまたせ。今日は麻婆豆腐ってやつ作ってみた。辛すぎたらごめんね。」
アイリーはそう言いながら作った料理をテーブルの上に運ばれ、二人は提供された食事を召し上がり始める。
「いや、普通にうまいよ。アイリーちゃん、よくこんなに上手に作れるね。」
悠真はそういいながら美味しそうに食事を続ける。
「うん。孝明に美味しいご飯食べてもらいたくて、毎日料理の勉強してる。実際美味しくできてるかどうか食べてもらうまでは分からないけど。」
「まじかあ。ますます孝明のやつが羨ましいぜ。」
アイリーの言葉に悠真は本当に羨ましそうに答える。
かわいい女の子が好きな悠真からしたら毎日のように彼女に食事を作ってもらえると想像したら当然だろう。
「はは、よかったらまた来いよ。また作ってもらうからさ。」
二人は食事を平らげその後3人で軽い雑談を始める。
そして夜になり悠真は帰宅し今日の憩いのひと時は終わる。
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