第22話 不穏な空気
悠真が食事をしながらでも話がしたいとメールを送ってきたのだ。
「悠真、話ってなんだよ?」
孝明が聞くと悠真はジト目で孝明を見て聞き出す。
「なあ、孝明。あの超絶かわいい美少女は誰なんだ?」
孝明はそれを聞き驚いた。
「え・・・?誰のこと・・・?」
「前の日曜日、銀髪ロングの黒いドレス着た子と歩いてただろう。ありゃ、お前の兄妹や親戚とかじゃないだろ?どう見たって外国の子にしか見えねえし。一体誰なんだ?まさか・・・新しい恋人か?」
「ち・・・違うって!そんなんじゃないって!・・・いや、あの子は実は・・・。」
孝明は彼女と出会ったきっかけ、アンドロイドであること。
そのモニターとして一緒に暮らしている等色々と悠真に話をした。
誤魔化そうとも一瞬思ったが、友人にこれ以上隠し事は辛いし下手に嘘をつくと嘘を重ねる羽目になり余計騙しとおすのが難しくなると思い白状することにした。
「へえ、あんなかわいい子が人形ねえ。全然そうは見えなかったぜ。どっからどう見ても人間の女の子じゃん。」
「ごめんな。お前になら話してもいいかなあって思ってたんだけど、あんまり言いふらさないでほしいって言われてたから・・・。いきなりあんな人間にしか見えない子が造り物って言われても信じられないかもしんないけど・・・。」
「気にすんなって。お前にも事情があったんだろ。アンドロイドって話も信じるよ。信じられねえ話だけどお前そういう嘘は言わないもんな。」
二人はハハっと笑い、話を続ける。
「で、話ってそれか?」
孝明が尋ねるが悠真は首を横に振る。
「いや、それはついで。でももしかするとそれに関係あるかもしれないなあ。」
孝明はどういうことだろうと思っていると悠真は話を続ける。
「なあ。そのアイリーちゃんって子の事、茉莉花は知ってるのか?」
「うん。彼女がアンドロイドだってことも知ってるよ。」
「そうかあ・・・。いやな、
悠真は
彼女のことまで気にかけてくれるだんて改めて悠真はいいやつだと認識する。
「それで、どうだったの?」
「いや、何も言えなかったんだよ。」
「え?言えなかったというと?」
「とても話しかけられる様子じゃなかったんだよ。声かけたらあいつさ・・・。」
『うるさい!何の用よ!私今忙しいんだからどっか行け!!』
「・・・って言われてさ。あの時のあいつの顔めちゃくちゃ怖かった。まるで鬼でも憑依したかのようで・・・今にも俺の事殺しにかかってくるんじゃないかって思っちゃったよ。正直引いたぜ。」
孝明は驚きのあまりどう反応したらいいのか分からずにいた。
孝明は無言のままだったが、悠真は続ける。
「
『初めはすごい気さくでいい感じの子だと思ってた。でもだんだん我がままな性格が露呈してきて、前なんか私が大事にしてたCD勝手に借りて行ってしかも割って返してきたの。『ごめんねえ。鞄の中入れといたら割れちゃってさあ。でもまた買えばいいでしょ。』って言ってきたの。限定品でもう手に入らないのに・・・。もう縁切りたいけど、そんなこと言ったらあの子何するか分からなくて怖くて言い出せないの。』
「・・・って言ってたんだよ。多分、他の子も同じような事思ってるんじゃねえかなあ?やっぱり評判悪いみたいだよ、あいつ。」
孝明は他の子にも自分と同じような傍若無人な振る舞いをしているんじゃないかと思っていたが案の定だった。
自分の時もそうだった。最初は猫かぶっていい子そうに振る舞っていたのに段々と世界は自分を中心に回っていると思ってるかのごとく自己中心的な言動を繰り返していると。
そしてやはり別れたがってる子もたくさんいると。
「その・・・アイリーちゃんは人間じゃないのかもしれない。だけど見た目はあんなかわいい女の子だ。しかも喜怒哀楽が乏しいとはいえ、あんまり普通の人間と変わらないくらいコミュニケーションもちゃんと取れてるんだろ?だから、お前と楽しくしているところを見て面白く思ってない可能性もあるんじゃないかって話聞いて思ったんだよ。」
だとしたら一体いつからだろうか。
茉莉花と最後に会ったのはアイリーとの契約が終わって
それから茉莉花と連絡のやりとりはしたが、アイリーとまた過ごすことになったことは話していない。
もしかしてこの前水族館に行ってアイリーと一緒にいる姿を見られていたのだろうか?
そもそもあの日は他に用事があると言って茉莉花の誘いを断った日だ。
見られていたとしたら茉莉花の怒りは相当なものだろう。
孝明は色々考えたが、全て憶測の域を出ず不安がよぎるばかりであった。
悠真は孝明が不安そうな顔をしていたのでなだめようとする。
「つっても、可能性の話だしなあ。花泉の機嫌がたまたま悪かったのかもしれないし。ただお前らが原因じゃなかったとしても、とばっちり受けるかもしれないから気を付けた方がいいと思うぞ。」
孝明はおそらく悠真は気を使ってくれてるのだろうと思い素直にその言葉を受け止めることにした。
「うん、色々ありがとう。気を付けるよ。」
「いや、変に不安を煽っちまって悪かったな。そろそろ次の講義があるし、行こうぜ。」
二人は席を立ちその場を去る。
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