第32話☆ アメリカ代表探索者、そう俺はジャック!

 俺はジャック。

 アメリカナンバーワンの探索者であり、富豪だ。

 Aランクダンジョンを完全攻略すると、十億は軽く手に入る業界となっている。


 ただ、Aランクは数が少ない。

 主導権が欲しい奴らはうじゃうじゃおり、そいつらは金を積み重ねる。

 俺でもAランクダンジョンを攻略出来たのは数回だ。


 そんな俺、ジャックは当然金持ちであり、ユニークスキルと呼ばれる特別な力を持っている。

 それにダンジョンの融通も効く。

 なぜなら、俺がジャックだから!


 実際はアメリカを代表する探索者だからだ。

 国家の力を示すとも呼ばれる世界ランカーの三位、アメリカの代表。それがこの俺⋯⋯ジャック!


 日本は五人居るらしい。一人に絞れないとか。

 面白いよな。


 俺のような優れたユニークスキル持ちでも世界ランキング三位なのは理由がある、上二人が俺よりも強力なユニークスキルを持っているからだ。

 ま、あくまで予想だが。情報が出回ってない。


 いずれは超えてやるさ。


 そんな俺ジャックは女にモテる。

 何故かと言うと、俺がジャックだから!

 

 さて、そろそろ着く頃か。


 「ジャック様が到着しましたっと」


 アメリカ政府に呼び出されていた。

 俺が呼び出される時は大抵スキルに関してだ。


 中に入る。


 「なんだねこの俺を呼ぶとは」


 「よく来てくれたジャック」


 アメリカの政府でも俺には偉そうに出来ない。

 国はそれだけ探索者の価値を高く見積もっている。

 もしも神が矛を向けた時に対策出来るのが探索者だから。

 国家の力が今や探索者の力となっている。


 神が敵対したら、神の創り出したデータなどは消えると噂されているが、それはありえない。

 俺が過去のイベントで獲得した質問券を使って質問したからだ。

 神は自分達が敵対した時でも面白さを求める、ただの殲滅はつまらないらしい。

 だから戦う力を残すとの事。


 なんとも愉快!

 神ってのはそう言う奴らだ!

 信仰を捧げれば時に応え、金を積めば時々恵を与える。


 ま、神の概念が固定されたせいで、宗教が滅びかけているのだがな。


 「さて、この俺ジャック様を呼び出した理由は何かな?」


 「ふむ、まずはこれを見てくれ」


 「これは?」


 「日本だけで行われた国内イベントだ」


 「なに?」


 それは嘘だと思いたい。

 神が国内イベントを主催する時、外に情報が出ないように細工される。

 神の力を人間は越えられない。


 なのに日本では無いここにその情報がある。

 それはおかしい。


 「それは事実なのか?」


 「あぁ。情報王の情報だから信憑性は高い」


 「なるほど」


 情報王、政府が全力で詳細を探っているが出て来ない謎の人物。

 この俺でも正体は知らない。


 だが、情報収集の実力は確かだ。

 噂では権能を持っていると言われている。多分事実だ。

 なぜなら、国内イベントの情報を外国に流せているのだからな。

 一体どんな権能なんだ? それにどこで手に入れた?


 権能が得られるイベントなら、その詳細が分かっても良いと思うが。


 「ごほん!」


 「おっとこれは失礼。つい考え込んでしまった。いつもの癖でな。それで、その国内イベントがどうした?」


 「この探索者だ」


 出された映像には、大量のメイド服を着た女性が白い龍を襲っている映像だった。


 「これは?」


 「これは全て、モンスターだ」


 「ひゅー。それは素晴らしい。召喚系のスキルが使えるモンスターカードは珍しいからね」


 俺は当たり前の事を言った。

 だが、目の前の男の顔は曇っていた。

 つまり、これはただの召喚では無い。


 「⋯⋯これはなんだ?」


 「代理召喚⋯⋯と言うのらしい。本人がイベント中に言った内容では、戦っているメイド達は二級以上だ」


 「⋯⋯は? 四枚以上も確実に使っているのにか!」


 「ああ。しかもこのイベントは、本来は一枚しか使えない」


 「おいおいなんだよそれ。そんなのが国家対抗戦に出で来たら、日本の圧勝じゃないか」


 「ああ。色々と調べて、情報王にも色々と聞いた。だが、リアルの情報は一切出て来ない。モンカドの入手経路も不明。予想としてはスキルだ。あの人を使うのに、あそこまで安い報酬は初めてだ」


 「それだけ情報が少ないのか⋯⋯」


 ユニークスキルか。


 「なるほど。理解した。この俺だから分かる。その女をスカウトしたいのだろう。アメリカに」


 「その通りだ。金ならいくらでも出す。名誉も、要求は全て呑む。全力を持って連れてこい! 最悪はスキルだけでもコピーしろ」


 「おいおいむちゃ言うな。ユニークスキルをコピーするには凄く条件が難しいし、内容によってはコピー出来ない。しかも、出来たとしてもかなり性能が落ちる⋯⋯でも、やるだけの価値はあるんだろ? なんだって、この俺をアメリカの外に出すんだからな」


 俺は俺の価値を十分に理解している。

 だからこの生活にも満足している。


 「もしもこの依頼をクリア出来たら、俺に何を与える?」


 「そうだな⋯⋯」


 「金ならもう必要ないぜ。十分にある。ファミリーみんなが幸せに暮らせる程にな」


 「妹の安全」


 「政府直属の部隊を寄越してくれるのか?」


 「ああ」


 「乗ったぜ。ま、もしろクリア出来なくてもデメリットはねぇ。それに、俺自身が興味ある!」


 「頼むぞ」


 「任せろ。手ぶらでは帰って来ない。あぁそうだ。俺の親友を連れて行くが、構わないか?」


 「もちろんだ。元々そのつもりだ」


 「なるほど。久しぶりに自家用ジェットの出番だぜ」


 「お前が運転するなよ!」


 「⋯⋯わかってるって」


 ち、なんでバレた。

 金持ちでも免許を取るのは難しいぜ。

 スキルで誤魔化したいが、あいにくそのようなスキルがない。


 俺は妹の家を訪れた。

 俺が建てた家だ。


 「あれ? 兄貴どうしたの?」


 「ゼクトを借りに来た」


 俺の親友ゼクトは妹の旦那だ。


 「ジャック、何? ダンジョン?」


 「いや、場合によってはそうだが、今回は日本だ! 政府直々の依頼だぞ!」


 「ちょ、兄貴! 安全なんでしょうね?」


 「問題ない。スカウトだからな!」


 「ゼクト、良い?」


 「もちろんだよ。つーか、ジャック一人の方が怖い」


 なんでや!

 この俺はジャックだぞ!

 どこが怖いと言うのだ。


 「ゼクトが良いなら、反対はしないよ」


 「流石は我が妹!」


 「まぁ、助けられた身だしね」


 「その話はナッシング! ゼクト、ジェットを運転してくれ! 俺はダメだと言われた!」


 妹を救う為に探索者になったら、国を代表する探索者になった。

 流石はこの俺だ!


 日本到着!


 「さぁ、ジャック様が来たぞ! もてなせ、日本人共!」


 「ここに殆どの人はいねーよ。それよか、早くターゲットと接触しようぜ」


 「それがなゼクト。逃げられると思って言わなかったが、あまり情報がない!」


 「は?」


 「あるのは異常なモンスターカードと配信者な事だけだ! 日本政府も手を焼いているらしい!」


 「は?」


 「それに俺は堂々と手ぶらでは帰らないと宣言した!」


 「おいお前⋯⋯」


 「なので当分は日本で滞在だ! 安心しろ! 金ならある!」


 「嫌だ! 俺は自分と家族との時間を大切にしたいんだ!」


 「それは俺も同じだ! さぁ、ゆくぞ親友よ! 日陰とやらを見つけ出そう!」


 それから俺は日陰の目撃情報が出るまでネットをさまよった。

 住んでいる大まかな場所は割れている。

 攻略する場所が近いからだ。


 さらに、他の配信者であり日本を代表する一人とリア友説の浮上。

 その人は高校生。

 日陰も高校生の可能性は十分にある。


 攻略しているダンジョンから大まかな場所は割り出せている。

 イベントで転移した場所からも考えて絞込み、高校はいくつかに絞った。

 さらに剣術がかなりの高さなので、そこら辺も調べた。


 俺の予想としては『霧外道場』が怪しいと睨んでいる。

 だが、あそこが教えているのは剣道であり剣術じゃない。

 もしかしたら剣術を教えている人がいるかもしれない。


 おいおい調べていこう。

 まずは日陰の目撃情報があった場所に突撃して、本人と接触する。


 データ世界系列でしか目撃情報のない人間だ。

 現実世界で見つけ出そうなんて、そんなバカなマネはしないさ。


 「見つけたぞ日陰!」


 て、なんか絶望した顔で出ようとしてる!

 俺もすぐに出る。

 ダンジョンに入った場所は同じだから、同じタイミングで出れば接触出来る!

 寧ろ、近くで出るタイミングを見れたのはラッキーだ!


 出ると、そこには背筋が曲がり、凹んでいる太った男子だけが存在した。


 「くっそ。日陰はどこに行った!」


 何故か太った男子がビビった。

 こんなに流暢な日本語で叫ぶ外国人が居たら驚くのも無理ないか。


 つーか、俺の事を知らないのか? 探索者なのに?

 俺はアメリカを代表するジャックだぞ!


 「まぁ、良い。今回は逃げられたが、次は絶対に接触する。道場の方に行くか」


 逃した事を拠点に潜んでいるゼクトに報告した。

 帰りたいメールは無視だ。

 実は俺もマイハニーの声を聞きたいとか思ってる!

 電話しよっ!



【あとがき】

12時くらいにもう1話投稿しますので、是非お待ちください!

ジャックはこれでも優秀な方です

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