第30話 推しの久しぶりのライブってテンション上がるよね!
「父さん。今日から俺にもまた教えてくれ」
「⋯⋯」
父の返答を待つ。
「もちろんだ。厳しくいくからな」
「どんとこいだ!」
簡潔にまとめよう。体が動かねぇ。
今までのようなやり方では父に一太刀入れるどころか、近づける事もままならない。
愛梨との模擬戦もボロボロだ。
「自主練じゃ補えきれないのか⋯⋯この体に慣れるか」
「日向くん。ダイエットって選択肢は無いの?」
「ダイエットするよりも、この体に合わせる方が早そうだし、前のやり方だと愛梨の二番煎じだ。体重を生かした戦い方を編み出すよ」
「そう。日向くんがそう決めるなら私は何も言わないよ」
「ありがと」
少し嬉しそうな愛梨。
明日は筋肉痛かな。
部屋に戻り、俺は質問券を使う事にした。
一つしかないので、うだうだ悩むよりも、さっさと使ってさっぱりしたい。
「ふぅ。緊張するなぁ」
スマホの通知が鳴る。確認すると、リイアのSNSだった。
「なん、だと」
明日、雑談生配信をするらしいのだ。
金をとりあえず現実の方に移しておこう。
「久しぶりの雑談生配信だやったああああああああああああぁぁぁ!」
俺が大いに喜んでいると、ゆっくりとドアを開けて愛梨が入って来た。
その顔は静かに怒りを浮かべている様な⋯⋯そんな感じだ。
「愛梨めでたいぞ! 久々のリイアたんの雑談配信だぞ!」
「そうだねー(棒)良かったねー(棒)私との会話でそこまで喜ぶ事ないのにねー(棒)へー(棒)」
「おま、どうした?」
「ううん。なんでもないよ。ちょっとV辞めようかなって思っただけ」
「なんでだよ!」
と、嬉しい気持ちは少しだけ抑えて、神への質問券を使う事にしよう。
愛梨が俺の横に座って、スマホを覗き込んで来る。
風呂上がりなのか、そのような匂いがした。
「そっか、俺の番か」
「うん。だから呼びに来た」
「どうも。先にこっちを済ませるか」
俺は質問券を使用する。
目の前が変わり、浮遊感に包まれる。
目の前には白い球体が浮かんでいる。
『霧外日向、君は我々になんの質問をしたいんだい?』
会話形式か。
「俺には他の人とは違う二つのスキルがある。それを詳しく知りたい」
『スキルについて? そんなのは運だ。理由なんて気にせずに楽観的に受け止めて、喜んで使えば良いと思うけどね』
「それは無理だ。ガチャの方は世界のバランスを崩す。何か起こった時困る。だから知りたいんだ」
『そう。なら、良いよ』
白い球体は神なのだろうか?
少し予想外だ。
巨乳の露出度多めの服を着た女神か、貫禄があり優しいおじいさん的な神様を想像していた。
『まずは【データ転性】だ。これは君の変わりたいと言う気持ちが具現化した、真のユニークスキルだ。本来ならこれだけだった』
「え」
『まぁ、これだとユニークスキルってよりも呪いだけどね! データの長所でもある自分だけの姿が決められちゃうんだからさ! そのバランス調整も含まれていたのかな?』
「と、言いますと?」
『うーんとね、まずはそのガチャスキルの原因は我々なんだよね』
「へ?」
流石に予想外だぞ。
神のせいで、あのようなスキルが俺のモノになったのか?
『実はさ、神ってソシャゲとかのガチャで欲しいキャラを確定で出せるんだよ。神様だから』
うわぁ。
全世界のソシャゲユーザーが望むような力を持ってらっしゃる。
そもそもソシャゲ⋯⋯するんだろうな。
神はこの世界の娯楽を気に入っているのだから。
『それでさ。神の中で力を使わずに出すぞって、大会が開かれたんだよ。もちろん課金でね。その金は力ではなく、純粋な信仰や寄付、換金の際に発生する税から少し貰っている物だからね。力じゃないよ』
それを可能にしているのが神様パワーなのにツッコめば良いかな?
『まぁ、そんなのがあってね。みんな課金しまくって、引きまくったんだよ。各々の推しを狙ってさ』
「あー、なんか展開が読めた」
『それでさ、すぐに出る神も居れば全然出ない神も居るんだよ。そんなガチャの沼にハマった神が多数居るわけよ。そこから漏れ出るガチャに対する様々な感情、それが力となってデータに入り込んだ。結果的に君の持つガチャスキルになり、完成したタイミングで初めてダンジョンに入ったのが君だから、このスキルを手に入れんだよ』
俺の世界を揺るがすガチャスキルは神々の運試し大会によって手に入れられたらしい。
『多分、このスキルが無ければ君のユニークスキルはもっと違うと思うよ。姿形、それを自由自在に変えられるスキルだった』
「改造とは違うんですか?」
『手を刃物に出来るんだよ。後はゴムのように伸ばしたりも出来る。むしろ、このスキルの方が君には向いていたかもね』
「⋯⋯ガチャを使いすぎると、スキルは没収されますか?」
『我々はあまりそう言うのはしないけど、そうだねーやりすぎると少しは対処しないとね。例えば、ひたすらガチャで出した一級を日本だけにばらまくとか。流石にそれだと、世界のバランスが崩れちゃうからね。各国に世界ランカーが居るでしょ? それが日本一色になる』
「なるほど。そうなると、神的には娯楽の楽しみが無くなる⋯⋯と?」
『言い方が気になるけど、そうだね。正しいよ。データイベントも我々にとっては娯楽だ。それをつまらなくするような人は怒りを買ってしまうね。自慢する分なら問題ないよ』
「それはこっち側で色々と問題になりそうですね」
『こんな感じで良いかな? この二つのスキルについて気になったらいつでも聞いて良いよ。質問券はそう言う券だからね。君には自分の持つ二つのスキルについて質問出来る権利がある訳だ』
「え、それってAランクダンジョンの詳細って質問すれば、全てのAランクダンジョンの情報が手に入るって事ですか?」
『ん〜あまり答えたくはないけど、良いかな。そんな事はしないよ。限度はしっかりと存在する。君の場合は特に世界に影響ないからね』
「なるほど。お忙しい中、ありがとうございました」
『大丈夫。神って凄いから、少し働いたらすぐに暇になるから。今は国民的アニメの四週目を新しく来た神と鑑賞してるよ。じゃあね』
「最後にどうでも良さそうで凄い情報をあっさりとくれたな。必要ないけど」
新しく来たって事はまだ神は存在すると言う事だろう。
神の数はその神の気分次第で数が増えるのか。
神がどこに在住して、どのように過ごしているのか分からないけど、とにかく神は地球に馴染んでいるようだ。
翌日、俺はパソコンの前で待機していた。
俺の同士達も多量のコメントを流している。
『視聴さんの皆さん、こんばんわ。リイアだよ。今日はお久しぶりに雑談メインの配信をしていきまーす。主にイベントについて話したいかな?』
投げ銭が始まる。
俺もそのコメントをチラッと見るが、殆どが日陰との関係についてだった。
これは良くないと思い、最大金額のスパチャを持って、八神との関係を聞く事にする。
あちらもこれに食いついたと言わんばかりに、八神との話を始める。
『えっとね。最後に戦った白龍さん⋯⋯じゃなくて八神さん。彼とは二回ほど会った事があるんですよ。最初はAランクの攻略レイドなんですけど、その時点では白龍さんはいませんでしたね。そして、次が日本PVP大会なんですよね。その時には白龍さんは居ましたね』
大会だけどモンスターの使用はありのようだ。
モンスターゲーと呼ばれているのに⋯⋯。
『その時に勝ってしまって、八神さんにライバル認定されたんですよね。厄介ですよ本当に。なんで勝っちゃったんだろ⋯⋯』
ため息混じりに落胆するリイア。モンスターゲー(笑)と呼ばれているのに⋯⋯。
元気だして、のコメントを最大金額のスパチャで送る。
今なら金は十二分にあるぞ!
「うひょおおおおお!」
【あとがき】
30話行きました!ぱちぱち
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます