第13話 イベント開始直後から狙撃
今日はイベント開始日であり、俺の部屋で時間になるのを待っている。
その横には何故か愛梨が居る。
「なんで愛梨が⋯⋯」
「⋯⋯ダメ?」
「ダメとは言っとらん。ただ、不思議なだけだ」
「じゃあ、良いよね? 一緒に始めたいんだよ」
俺には分からない感覚だな。
個人で楽しむのに近くにいたら最初の場所ですぐに会ってしまうかもしれないのに。
時間となり、俺達の体がそれぞれ光の粒子に包まれる。イベントが始まるのだ。
光が激しくなり、目を閉じる。
開くと、場所が部屋からガラリと変わっている。
「俺が暮らしている街だな」
空が紅色に染まっている。
近くを見渡すと、緑く光っている所を発見したので、近づく。
「成程、これがお助けアイテムか」
トラップカード『確実に滑らせるバナナの皮』である。
俺は怒りのままに地面に投げ捨てた。
「なんだよこのネタアイテムは!」
一応アイテムなので拾っておく。
イベントは配信とかも出来ないので、日陰としてのキャラ作りはしなくて良いだろう。放送はされているらしいけど。戦闘中とかは気をつけよう。
神様は頑張るねぇ。
「インベントリ」
イベント限定スキル『インベントリ』である。お助けアイテムなどを入れておける。
このスキル、めっちゃ欲しいと思う。
買うとなると、100億と言う大金が必要である。
「ッ!」
俺は嫌な感じがしたので、インベントリにトラップカードをしまった瞬間にバックステップを踏んだ。
刹那、人を殺す閃光が目の前を通過する。
「狙撃っ!」
スナイパーライフル⋯⋯確かにあったなショップに。
めっちゃ高いのに買うんだ。俺は近くの廃車の陰に隠れる。
近くにあるのはビルなどだ。廃墟のようにはなってない。
「殺気が⋯⋯」
出たら殺されるのは分かる。
「良いね。序盤からギャンブルだよ」
俺は柄に手を伸ばす。
近くのビルを横目で見ながら。
「シッ!」
一気に加速してビルに突き進む。体が異常に軽い。
レベル差を埋めた結果、俺は本来のレベルよりも高い状態になったのだろう。
「ここだ!」
抜刀術の技術を活かして刀を振るい、弾丸を切り裂く。
最初の一撃で仕留められなかったアイツのミスだ。ついでに奴を殺す。
「最初のスポーンに恵まれてるな」
俺はビルの中に入って駆け上がる。
声が聞こえて来る。
「なんだ?」
「な、こいつ日陰じゃねぇか」
「オーガに苦戦している奴だ。殺れる!」
「モンカド使う前に殺す。一時休戦だ!」
連携力の高い六名の男は争っていたのに、俺を標的にする。
有名税って奴ですかね?
「み、見逃して欲しいなぁ?」
「可愛らしくやっても、アバターに興奮しねぇよ!」
「いやぁ、止めてよ」
流石に女の声だから止まるかと思ったが、全くその様子がない。
少しは手加減してよ、全く。
俺は集中して、『道』を見つけ出す。
久しぶりの対人戦だ。少しは勘が損なわれていると思ったが、そうでも無いらしいな。
俺は刀を抜いて攻撃を仕掛けた。
手前にいた一人の首が斬れ、残りの五名は訳の分からない様子で、背後に振り返って俺を見る。
「素人と経験者は違う。レベル差が無いなら、お前らのような奴に負けてしまう事は無いな」
戸惑いにより硬直している他の奴らを倒す。
抵抗されたが、攻撃は全て受け流して反撃を繰り返す。
建物内で敵は五名、しかも味方ではないので攻撃が命中する。
仲間意識が強いのか、俺にだけターゲットを絞っているせいで、上手く戦えていなかった。
「クソ、クソおおお!」
「アサルトライフルも、この空間だと本領発揮は出来ないようだね」
机を盾にして防ぎ、リロードの隙を突いて優先的に殺す。
人を殺した事は無いので、感覚的には分からないのだが、きっと肉や骨を斬る感覚はこんな感じなのだろう。
あっさりと六名を倒した。
結果として六ポイントを即獲得したので、俺は再び駆け上がる。
屋上に出る為のドアを蹴飛ばした。
「ッ!」
ギリギリで体を逸らしたが、弾丸が頬を掠める。
すぐに射線を断つ。
あのスナイパー、ずっと俺を狙っていたのか。
こっちからは見えない。
遠くが見えるスキルくらい購入しておくべきだった。
銃声が聞こえる。だが、俺の所には弾丸が来てない。
「違う獲物に切り替えた? 何しろ、チャンスだ!」
もしもフェイクだとしても、関係ない。
このチャンスは見逃せない。
屋上から違うビルの屋上へと移動する。
見ていた方向が光るので、足のスナップを利用して向きを切り替え、攻撃を避ける。
殺気も感じられる。攻撃は⋯⋯避けられる。
時々ある遮蔽物も利用して成る可く距離を近づける。
落ちたら終わりだ。流石に高い。
パルクールなんて経験した事は無い。
だけど、レベルが均一にされているお陰で、身体能力はすこぶる高い。
脳筋的になるけど、身体能力をフル活用したら問題なく移動は出来る。
「集中しろ」
相手が撃つタイミングの時間をしっかりと把握しろ。
そしたら自ずと回避するタイミングが分かる。
「ちくしょう。こんな体なのに、ちゃんと動けるのが無性に腹が立つ」
悔しいやら悲しいやら、細かく確認しているし男要素が無いのは保証出来る。
嫌な保証だ。俺はネカマじゃないってのに。
「⋯⋯後少し」
もう少し近づけれたら⋯⋯そう思った瞬間だった。
二本の線が俺の視界に入る。一本は躱せたが、もう一本が左足を貫きやがった。
「ちくしょう。少しの痛みは感じるのかよ」
嫌な仕様だ。
それでも俺は走るのを止めない。
攻撃が二つになったのなら、一本を躱して、一本を弾けば良い。
それだけで俺は無傷だ。
「捉えたぞ!」
道路を挟んだ反対側のビルの屋上にいるスナイパーの女を俺はしっかりと捉えた。
この距離と今の身体能力なら⋯⋯問題無し。
俺は刀を逆手持ちに切り替える。
こちらに気づいた相手も銃口をこちらに向ける。
スコープから覗く目はしっかりと俺を見ているが、引き金を引くよりも速く、俺は投げれる。
「貫け!」
俺は刀を投擲した。
見事にそれは相手の脳天を貫いて倒し、最期の一撃と言わんばかりの一発を脇腹に受けた。
「ふぅ。まだ十分も経ってないのに⋯⋯かなりハードだな」
しかも、戦闘音が聞こえて来る。
何万人と参加しているんだよ、このイベントによ。
「とりま回復を」
登録していた回復ポーションをインベントリから取り出して、傷口に塗る。
徐々に塞がっていく。不思議な所は、装備も一緒に直る事だ。
耐久値は回復しないので、ゼロになったら全部ぶっ壊れる事だろう。
「⋯⋯防具が壊れたら全裸になるのかな?」
そんなくだらない事を考えながら、俺はスナイパーのドロップアイテムを漁る事にした。
あいつからは三ポイント手に入ったので、二人は殺っていたのだろう。
回収する際にも戦闘が二回ほどあったが、問題なく切り抜けた。
「レベルが適応されたら、俺は序盤で死んでるな」
この感覚も身体能力もレベルが上がっているからだ。
バランス調整に感謝だね。
身体強化系のスキルやら魔法系のスキル使われたらどう、対処しよう。
「ハンドガンとトラップカードか」
スナイパーが落とした物を拾いあげる。
緑色のトラップカードは『確実に滑らせるバナナの皮』だった。
「お前もネタカードを手にしていたか⋯⋯なんかコレ使って活躍させたくなったな」
ハンドガンには弾が二発込められていたので、インベントリにしまう。
次の獲物を求めて俺はビルから降り立った。
刀を使う俺が高所に居ても仕方がない。
「ハンドガン⋯⋯サブウェポンか。やっぱり中距離用の武器は持っていた方が良いかもしれんな」
まぁ、クソ高いので当分は刀一筋で行くだろうけど。
愛梨は何してんのかな?
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