第2話 銃撃

 俺がもう少しで壊そうとした喧騒を、一発の破裂音が掻き消した。

今、通りでは屋台の軋む音が、猫の鳴く声が、誰かが生唾を飲み込む音すら大きく聞こえるほどの静寂が一帯を支配している。

誰かが、いや誰もがその場の空気に耐えられないと言うかのように後ずさった瞬間、

 もう一発、二発と、続けて音が鳴り響く。

 先程まで幸福と明るさに包まれていた通りに、

一気に混乱と恐怖の波が襲いかかり、

そこにいた人々の大半を飲み込んだ。

 固まって動けていない僕を、目の前からくる人たちがまるでないもののように扱い、走っていく。

 迫り来る波を僕は受け止めて、逆らい始めた。

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未だ明けず 見名 @Douna_Gen

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