第8話 小覇王孫策、17で建国

 袁術は孫策から貰った玉璽を眺めながら贅沢三昧な生活を送っていた。


 そんな時、紀霊将軍が袁術に進言した。


「孫策は17と若輩者ですが、侮ってはいけません。奴は必ず独立して玉璽を奪いに来るでしょう。袁術様、ご決断を!!」


 紀霊将軍は袁術を愚鈍な君主と思っていた。


 しかし、忠義の士故に袁術からの恩も多く、裏切ることができない犬でもある。


「何を言ってるんだ? たかだか17のガキに何ができる? 17で国でも作るのか? そんな奴は見たことがない。どうせ放っておけば勝手に討ち死にするさ。」


 袁術は紀霊将軍の言葉を聞かずに蜂蜜水を飲んでる有様だった。


「しかし、孫策は劉繇を後一歩のところまで追い詰めていますぞ!!」


 其れを聞いた袁術は大いに嫉妬して紀霊に申し付けた。


「何をやっておるか!! 貴様は無能なのか!! 一刻も早く孫策を殺してしまえ!!」


 紀霊は命令に従って部屋を出て行く。


「なんて傲慢な奴なんだ!!」


 紀霊将軍は袁術では駄目だとわかっていたが、そんなことよりも孫策のことが気がかりだった


「おい、蔣欽(しょうきん)、周泰(しゅうたい)を呼んでこい。」


 袁術は無能で愚鈍な上に偏狭だけでなく、傲慢強欲だが、人材だけはいた。


 愚か者の袁術故にその人材も活かすことができず、宝の持ち腐れである。


「蔣欽、周泰よ。孫策を背後から奇襲し殺せ!! 直ちにだ!!」


 二人が了承すれば颯爽と兵を連れて孫策の背後を狙うことにした。


 一方、孫策は陳武、凌操という二人の豪傑を手に入れた。


 特に陳武は18才にして体が7尺7寸(3m弱)あったという。


 周瑜が言った。


「逃された劉繇は籠城して援軍でも待っているのでしょうか? 背後の袁術も何を仕出かすかわからんやつです。」


 孫策は周瑜にこういう。


「なら、早期決着だな。お前ら!! 父が作ってくれた例の梯子を持って来い!!」


 そう言うと、董卓討伐軍の時に出番がもらえなかった落石対策の梯子を兵士たちに運ばせた。


 作りは単純故に軽くて持ち運ぶのにも便利だ。


「よし、こいつで一気に攻め落とすぞ!!」


 孫策が命令すると丁度、蔣欽、周泰が現れた。


「孫策!! その首貰ったり!! 劉繇!! 我らが加勢するぞ!!」


 これを聞いた劉繇は絶好の機会と思い城から全精力を出撃させた。


 流石の孫策軍も前と後ろから攻撃されては連携も取れず、大敗は必至、しかし、孫策は激を飛ばした。


「後ろを取られたら如何なる武術家も敗北を意味する。だが、それは背後に敵がいたときだけだ!!」


 そう言うと、蔣欽、周泰は次の号令を掛けた。


「我らは袁術を君主と思っておらず、孫策様こそ我が君主に相応しい男!! 皆の者、孫策様に加勢しろ!!


 蔣欽、周泰は孫堅が袁術に使われている時、孫策は人材を集めることに専念していた。


 蔣欽、周泰は孫策と袁術など、比べるまでもないと考えていた。


 詰まり、孫策は孫策で袁術の将軍を引き抜いていたのである。


「孫策め!! 謀ったな!!」


 敵を騙すなら味方からと言う。


 孫策の味方は動揺していたが、即座に体制を立て直し、今度は打って出てしまった劉繇軍が動揺した。


「よし、例の梯子で城壁を超えるぞ!!」


 孫策は落石対策用の梯子で劉繇の体勢が整う前に総攻撃を掛ける。


 落石対策として梯子には軽装だが、矢を防ぐ板と狭い足場が備えられていた。


 落石が飛んできても矢を防ぐ板が岩からも守ってくれる。


 無論、梯子は倒れるが、倒れても梯子には的確な場所に矢を防ぐ板が設けられている。


 それが足場にもなり、最終的には飛び降りて地面に逃れることも出来る。


「おのれ!! 孫策は孫氏である大軍師の末裔!! なんと小賢しいやつだ!!」


 劉繇は破れ、その後も孫策は許貢や王朗を破り、江東の地に国を建国、僅か17歳で国を持ってしまう。


 故に、皆は孫策のことを小覇王を呼ぶようになる。


「孫策様、江東を制覇し、この後は袁術を滅ぼすのでしょうか? それとも、劉表を?」


 孫策は孫堅を尊敬し敬愛している。


 そんな父親が早々にこの世を去ってしまった。


 孫堅なら天下統一も成し遂げれたのではないかと、天下統一した後、孫堅は献帝に天下を託したのではないかと、前者は孫呉の願いで後者は献帝の願い。


「敵討ちだと? 親父の死体は劉表から変換された。俺は袁術、袁紹、呂布が許せね!!」


 その言葉に皆は感銘を受けてしまう。


 それと同時に、私情に負けてしまう己が憎らしい。


「孫策様の言う通りでした!!」


 いつの時代も人は私情で動く愚か者のせいで人は戦火に巻き込まれる。


 争いが起きるのは上が無能だからである。


 善人が消され、私情を捨て、天下のために戦えるものが王に相応しい。


 私利私欲に流される人間は例え、公安になっても口先だけの無能である。


「天下に必要なのは孫堅様かと思っていたが、孫策様こそ必要なのやもしれん。」


 孫策伯符、その名声は瞬く間に広がっていった。


 彼を小覇王と呼ぶ声は曹操や劉備は勿論、袁術にも届いていた。


「おのれ!! 孫策め!! 勝手に国を造りおって!! この儂の恩も忘れおったか!! と言うか、孫堅暗殺部隊は何をしておるのか!!」


 17歳の子供相手にみっともなく袁術が激怒している。


 そんな中で紀霊が返答した。


「孫策暗殺部隊は二人共袁術様を裏切りました………」


 その言葉に袁術は本性剥き出し、野心ももともと抑えられるような奴でもなく玉璽を私物化し、再び皇帝を名乗った。


 小覇王にマウントを取りたいのだろう。


「天は我に玉璽を与えた!! よって、朕こそが皇帝である!!」


 この号令には皆が呆れてしまった。


 世の中、リーダーに相応しい人間は自分からリーダーと名乗るような愚か者ではない。


 人が求めるからこそのリーダーである。


 なので、民主主義の制度を取っている無能な国は自尊心だけのゴミ人間を選挙に立候補させる。


 そして、その中から必ずリーダーが誕生するという猿のような制度を設けている。


 それが日本の実態だ。


 そんな日本はさて置き、気が付けば皆が孫策に付き従うようになっていた。


 袁術の皇帝は皆が反対したために、一旦保留となる。


「不思議なものだな。孫策様にはそういう魅力があるのだろう。」


 程普が言った。


 それに続いて朱治が言う。


「孫策様が天下を治めれば、皆は迷いなくまっすぐ正道を歩むのでしょう………」


 この時、曹操も国を造っていたが、曹操は酷く後悔していた。


 曹操に孫策の背後を叩くよう、命じた者が居た。


「ふむ、お主の言う通り、袁術の部下が孫策に寝返ってしまい、一つの国ができてしまった。青二才だと思っていたが………」


 曹操が其の者の言葉に従わなかったことを後悔すれば、郭嘉が慌てて言う。


「だ、大丈夫です曹操様!! 孫策は必ず匹夫の手によって殺されるはずです!!」


 そう、あの有名な郭嘉ではあるが、女遊びをし、孫策を野放しにしたことで『呉』と言う国ができてしまった。


 国ができる前に手を打てば、天下三分とならず、袁紹を討伐した後で、天下統一を果たしていただろう。


 それを回り道する羽目になってしまう。


 郭嘉の言い訳に曹操は苛立った。


「黙れ!! 貴様の言うことを聞いていなければ孫策は勢力を拡大しなかった。周泰、蒋欽が裏切る前に、我軍が孫策の背後を叩くべきだったのだ!! 今後は自重するように!!」


 曹操は郭嘉を黙らせると曹操は再び孫策への奇襲を持ちかけた者へと向き直り謝罪する。


「今後、この曹操、お主の言葉に耳を傾けることを誓います。」


 さて、孫策を背後から奇襲する策を進言した者は誰だったのか、次回を乞うご期待。

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