関連

目を覚ましたとき、最初に気づいたのは違和感だった。 どうやら宙に浮いてるらしい。しかも部屋のど真ん中で。


足元を確認してみると、中学生くらいの男の子が寝ていた。顔は普通くらい。


自分の姿を確認してみる。

足のつま先、その手前に見える胴体、すべて半透明である。全身をくまなく見てみたが、どうやらそうらしい。半透明だから分かりずらいが、いわゆる天使のような服装をしていた。


本当に何が何だかわからないが、自分を落ち着かせるために、とりあえずこの場所を探索してみようと思う。そしてドアに手をかけた。

あれ?ドアノブに触れられない?

どう触ろうとしてもすり抜けてしまう。なら体当たりで行けるか。

本当に行けた。なにこれ、物理どうなってんの。


この建物を散策してみる。この感じ、家だ。

この部屋から出て突き当たり、そこを左に曲がる、人が2人寝ている。そして半透明な3人と出会った。

自分と同じようなものと出会えて嬉しかった。その勢いで喋りかけに行きたかった。が3人とも別々のことをしていた。2人は世間話をしており、もう1人は分厚い本を1人読み続けている。如何にも喋りかけにくい。

仕方なく、外へ出ようと玄関へ向かった。外へ行けば何かあるだろう。

そして玄関にアタックしたとき、何かよく分からない力で押し返された。

ハァ?意味がわからない。もう1回やってみる。

また押し返された。もっと強い力で押してみようとやってみようとした時だ。


「今はやめておけ。」

誰の声だ?と思って後ろをふり返ると、さっきの分厚い小難しそうな本を持った人だった。

「どういうことでしょうか?」

「だからやめておけと言っている。」

意味がわからない。次の言葉を探しているうちにそいつはまた元の部屋へ戻ってしまった。

しょうがない。自分も元いた場所へ戻るか…



知らぬ間に朝になっていた。いつの間にか気を失っていたらしい。

時刻は8:00。この中学生フォルムは私と同時に起きたようだ。これから学校に向かうのだろうか?

それにしても遅すぎる。よほど家が近いのか。

私が勝手な思い込みをしていると、少年はパソコンでチャットを始めた。

画面の先を要約するとこうだ。9時に駅で集合し、そのあと12時まで二人でカラオケに行く。彼の友達はその後予定があるらしく、駅でそのまま解散らしい。

少年は二言返信すると、それっきり会話することをなかった。会話を見た感じ、終わらせたかったようにも見受けられる。

この感じ、少年は友達とあまり仲が良くないのかもしれない。

友達は何者なのか、そもそも同年代なのか、気になりだしたらキリがないが。


時刻が8:20となったところで外へ出る準備を始めた。少年は財布とスマホ以外を持たず、急いで家を後にした。この時は一緒に家の外に出ることができた。

初めての外だったもので、ついつい景色に目を奪われてしまった。若干の曇り空ではあったものの、初めてという感覚が景色をより鮮明にしてくれた。

ここまでで気になったのが、少年は私が見えないらしい。一回気になって目の前で手を振ってみたのだが、全く気付かれなかったのだ。昨日の夜に見た三人もおそらく同じだろう。


電車から降りると、駅で友達が待っていた。その友達がまぁまぁのイケメンだった。顔の感じから、おそらくハーフなのだろう。そんな友達がなんでこんな根暗なやつと仲が良いのか私にはよくわからない。


すると、その友達の頭ら辺にいるやつが私にしゃべりかけてきた。

「あれ、前のやつやめちまったのか?」

私の頭にはてなマークが2、3個浮かぶ。

「前の人とは?どういうことですか?」

「説明一切受けてないの?」

「まったく聞いてませんけど...」

「まぁそういうこともあるか。」

まぁって...説明なしにここに飛ばされるのは問題ありありだよ。

「この話聞いた?途中で担当者変わるってやつ。」

「まったく知らないです。」

「担当者変わるときってさ、記憶を次の担当者に渡すんだよね。しらんけど、なんか起きたんじゃね。」

「変わるときってどういう時なんですか?」

「なんか担当者が諦めたくなったりしたら変わるらしいよ。あと普通にタメでしゃべっていいよ。」

「...敬語のままでもよろしいでしょうか?」

「別にいいけど。」

「わかりました。」

少年と友達は既にカラオケのほうに移動していた。


「そんでさ。おれさぁ、この仕事1ヶ月くらいやってるけど、最近ハマりだしたわ。」

「はい。」

「これすごいお金入るんだよね。やり終えたときの達成感すごいし。その代わりまじ大変よ。」

「はい。」

「はいじゃなくてさぁ、もっとそっちもしゃべってよね。もう。それでさ~...」

こいつ、しゃべっててすごい疲れる。かれこれ1時間は喋っているが、うまく機嫌を取るようにしないとめんどくさい。わざわざこっちが気を回さなきゃいけないのが本当にしんどい。


「この前なんか失敗しちゃってさ。まじ取り返すのめんどくさかったわ。」

失敗...?その言葉に疑問が浮かぶ。

「失敗って?なんですかそれ?」

「その人の担当者ってさ、一歩とか二歩とか先の未来を見れるんだよね。んでその人にどうにかその未来を選ばせるために色々やるって訳。」

「なら、全部教えちゃえばいいんじゃないですか?」

「そう思うじゃん?でも直接教える方法って俺ら持ってないんだよね」

「私たちが見えないのもそういうことですか?」

「そういうこと。だからうまく伝えなきゃいけないのよ。」

へぇ。と少年達がカラオケで歌っているところを見ながら、ほとんど聞き流していた。なんかよくわからないけど、とりあえずこの少年をどうにか良い方向に持っていかなければいけないらしい。


しかし、一つ引っかかることがあった。なぜ前の担当者は少年の担当をやめたのだろう...

もしかしてすべての未来が最悪だったとか?どうやってもうまくいかない未来しかなかったとか?

そればかりが頭をぐるぐると巡る。とりあえず、悲惨な未来にぶち当たらないことだけを祈る。男女関係のトラブル、みたいな未来がもしあったら絶対にやめたくなる。人間関係ほどめんどくさく、心の本質を貫く問題には絶対にぶち当たりたくない。




13時頃に帰ってきたときにはもうヘトヘトだった。それは少年も同じだった。

彼の友達も、半透明なやつと似たようなところがあって、おそらく気を遣うために疲れ切ったのだろう。少年は帰宅後、すぐさまベッドへとダイブした。

私は特にすることはないため、少年のスマホの画面を覗き込むくらいしかやることがなかった。



少年はある一つの絵に目が留まった。それはなんとも猟奇的な、吐き気を催すような絵であった。

私は最初、何かの見間違えかと思ったが、嫌な顔をせずそれを保存していたため、確信へと至った。

その絵を皮切りに、似たような絵がたくさん検索されていき、タブがどんどんたまっていく。それだけでは飽き足らず、実際の動画までをも調べ始めた。

ここまでくると、私は驚きを隠せなかった。なぜこのようなことをするのだ?

そして、見るだけでこっちまで痛みを感じるような動画を、まるで楽しむかの如く見ていく。

どうにかこれをやめさせたいが、私はそのやり方を知らない。一体どうすればいいのだろうか。こんなの見たくなんかない。

しまいには、その中の選りすぐりを保存して、パソコンに移していくのだった。


その一連の動作に、嫌な感覚が全身を駆け巡り、頂点へと達した時、私に一つの直感のようなものが告げられた。


続く。











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