?ありのまま?

@taiyakikun114514

「目を覚ませ。朝だ。」

なんだここ?

ベッドから起き上がって、ゆっくりと周りを見回してみる。どうやらどっかの研究所?みたいな感じ。なんでここにいるんだ?


「お前には仕事がある。いいから起き上がれ。」

なんとも気乗りしない。このままベッドで休んでいたい。


「早くしろ。じゃないと乗り遅れちまうぞ。」

何に乗り遅れるんだよ?全く意味がわからない。


気になることは聞いてみる。それが一番早い。

「すいません、ここどこなんですか?」

「お前が元々いた場所だ。覚えてないのか?」

「そもそもなんでここにいるのかもよく分からんのですけど。」

「ここで"ある研究"をしている。そこにお前は参加した。」

「全くよく分からんのですが。そもそもその研究とやらはなんなんですか?

「これ以上は守秘義務だ。乗り遅れるとまずいから早く行くぞ。」

「守秘義務ってなんなんですか?そもそもわt」

強引に手を引かれ、研究室を出た。そこは廊下が続いており、床が所々剥がれていた。壁の色はベージュに近く、年季が入っているように感じる。

左右にも同じような部屋がいくつかあり、そこでも何か研究をしているのだろうか。

4~5m歩き、研究員のような人がある研究室で立ち止まった。


手を引かれ中へ入ると、そこに20~30程のドアが置いてある。ドアはどこからどう見てもハリボテで、どこかへ開通しそうもない。

ほとんどのドアは閉まっており、そのペラさをより強調している。しかし、1箇所だけドアが開いている所があった。その中は真っ黒で、恐怖を超えた何かを感じる。ここへ入ったら永遠に落ち続けてしまうのではないかと感じる。


「このドアに入れ。」

これを見て入りたいと思う人は絶対いない。

「い、嫌です」

「いいから入れ。」

私の優柔不断さを見抜いたのか、無言で背中を押し、無理やりドアへ押し込んだ。

叫ぶ暇もなく、ドアの縁から真っ黒の空間へ足を踏み外していく。


その瞬間、崖から突き落とされたような、物凄い風圧と迫力を感じ、もはや"無"のような空間を"落下"していった。


1~2分ほどして、この感覚は慣れてきた。むしろそれが心地良くさえ思えてくる。妙に昂ったような変な気分。


それから暫くして、私は突然懐かしさを覚えた。

そして何かを思い出した。玄関を開ける音、開けた時聞こえてくる何かの声、それに返事をする自分、冷蔵庫の匂い。更には、友達らしき2人や、1人の女の子、担任の先生、部活の顧問。それらはピンぼけしていて、細部まで掴めない。


自分が冷静だからなのか性格なのか、疑問が出てきてしまった。なぜ、親しい友達などはすぐ出てくるのに、肝心な親が写っていないのだ?


そのような疑問を解消する間もなく、目の前に1つの白い点が見え、そこへ吸い込まれていく。落下していると思っていたが、実は吸い込まれていたのか??

白い点は大きくなり、自身を包み込む以上の大きさとなり、それは空間全体へと達した。

徐々に意識が遠のいていく…


続く。


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