第15話 最上くんは教えたい
球技大会のあとには一学期の期末試験が待っていた。
(なんで……勉強したのに……)
フミカはがっくりと肩を落とした。
昼休み──フミカは悪友のヒナとユズハと机を囲んで弁当を食べていた。
「みんなテストどうだったの?」フミカは訊く。
ヒナは「体育以外全滅」といい、ユズハは「日本史以外全滅」といった。
「親から強制的に夏期講習の申し込みをさせられたわよ。おかげで夏休みの半分は予備校通いになっちゃった」ヒナは愚痴った。
「わいもス」ユズハもつづいた。ちなみにユズハの一人称は「わい」だ。
「そっかあ。わたしも夏期講習行かなきゃダメかな」
期末試験中は休みになっていた部活動も再開され、ひさしぶりにフミカは目一杯体を動かした。
フミカは体を動かすことが好きだった。テニスで汗を流している間は、数学と物理の点数を忘れられる──
部活が終わって教室に行くとやっぱり
部活ない日は、フミカはヒナとユズハと帰ることが多かったから、最上と帰るのは二週間ぶりくらいだった。
久々に二人でならんで歩くと妙に意識してしまって、フミカはなにを話したらいいかわからなくなってしまった。最上も今日は無口だ。
(な、なにかしゃべらなくちゃ)
フミカは脳ミソから話題をしぼり出した。
「最上くん、テストはどうだった?」
「テスト? うん、まあまあだったかな」
「そっか。わたしは数学と物理がダメダメで……理数系が苦手なんだ」
「そうなんだ」
「だがら夏期講習を申し込もうか迷ってるの。ヒナとユズハも行くらしくて」
「……よかったら俺が教えようか? 一応、理数系は得意なほうなんだ」
「え」
「そうすれば、夏休みも蘆毛さんに会える理由がつくれるから」最上がうつむき加減でいった。
「……」
フミカは驚きのあまり目を見開いて最上の顔をみた。少し頬が赤いようにみえた。
フミカも視線を地面に落とす。自分の顔が熱くなっているのを感じた。
翌日、期末試験の結果が廊下に貼り出された。教科ごとに上位二十名の名前が発表された。
それをみたフミカはびっくり仰天した。すべての教科の五位以内に〈最上ガモン〉の名前があった。しかも数学と物理はトップだった。
「最上くん……」
フミカは口をあんぐりさせた。
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