第4話 最上くんは告白する①
某マンションの一室──玄関のドアがガチャガチャと鳴った。鍵がカタンと回り、ドアが開く。背中にリュックサックを背負い、右手に部活の荷物、左手に買い物袋をぶら下げた
「ただいま。ごめーん、遅くなったあ」とフミカはいいながら両手の荷物を床に置き、玄関に乱暴に脱ぎ捨てられていた青い運動靴をならべた。
フミカがリビングにいくと、弟のフトシがソファーに寝っ転がってゲームをしていた。
「姉ちゃん、腹減った」
「はいはい。すぐにつくるから」
フミカは制服の上にエプロンをつけると、
「どう?」フミカは弟に感想をもとめる。
「うまい。はじめてのメニューだね、コレ。だれかに習ったの?」
「ふふん。まあね」
フミカの日常は帰宅してからが忙しい。
夕食が終われば食器を洗い、洗濯機をまわす。お風呂にお湯をためて、ベランダに干してある洗濯物をとりこんで
そのあとやっとゆっくりとお風呂に入れる。
「はあああ」フミカは浴槽に入り、深いひと息をつく。
(お風呂出たら洗濯物を干して、すこし予習復習もしなきゃ。はあ、いそがし……あ。あと最上くんに夕飯の献立を教えてくれたお礼もいわなきゃ)
──最上くん。
フミカはいまでも不思議におもう。
(最上くんは、なんでわたしに告白してくれたんだろ──)
× × ×
あれは高校に入学して二ヶ月ほどが過ぎ、中間テストが終わったころのことだった。
昼休み。フミカは昼食後に教室で友人たちと談笑していた。そこにおなじクラスの最上がやってきてこういった。
「あの、蘆毛さん。今日の放課後すこし時間ありますか?」
「え?」突然の出来事にフミカは面くらった。最上とはこのときまで話したことがなかった。
「すこし話したいことがあって」最上はつづけた。
「……えーと」フミカが友人らに助けを求めると、彼女らはみんなニヤニヤしていた。
(こいつら……こいつら、楽しんでやがる。わたしが困っているのに救いの手も差し伸べず、楽しんでやがる)
フミカは悪友たちを睨みつけた。
ふと気づくと、さっきまで騒然としていた教室がしんと静まりかえっていた。まわりを見渡すと、なんと教室にいる全員がこちらをみていた。
注目されることが苦手なフミカはパニックに
「えっと……今日、部活あるから……」
「部活終わるまで教室で待ってます」
「わ、わかりました」
× × ×
当時を思い出したフミカは恥ずかしさのあまり浴槽の水面を乱打した。
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