密室に置かれた予告状14
さてどうしたものか。
紡と推理を仲直りさせると安請け合いをしたは良いものの、どうすれば良いものか思い悩んでいた。
葵木が考案した予告状を利用して、うまいこと推理が紡と仲直りするように仕向ける事には決めたのだが、どうしたらよいものか。
その為に、葵木がどんな意図を組んで部室内に物品を置いたのか一応確認はしてきた。
最初に置かれた物品であるジニアは友情の象徴。
毛糸だと思っていた物は
紡毛糸は羊毛を◯◯◯だものである。
古代から人類は、
の丸の部分には【紡いだ】の文字が入り、紡本人と絆を表した物であったらしい。
そして六枚のコイン。
「普通に考えたらこんなの気がつくはずがないよな」
これはグーリトブリテン、イギリスの硬貨である事は葵木の説明でわかっていた事なのだが、コインの裏の秘密にまでは気がつけなかった。
「小さいのが真ん中でデカイ七角形が一番下。デカイ銅色の丸が右上。その下に七角形の小さい方。銀色の大きい丸が左上────」
そして、その下に最後の一枚銅色の一枚をはめ込むと、ある紋様が浮かび上がる。
これはイギリスの国章である、エンブレムらしいのだが、こんなギミック思いついた人は天才だな。
添付されていた暗号文の三つ目。
『あの話しにはウラがある』の正しい意味は、紡が嘘をついてしまった事には裏がある。の暗喩であり、紡と推理。今は心は離れてしまっても共にあると言う意味もあったらしい。
「葵木のやつもよくこんなの思いついたよな。しかし────」
関心はしても、どうやって推理にこれを推理させるか、理解させるのかが難しい。
如何にして、本質を話さずに、推理に本質を理解させるか。
シンと静まり返った自室内で、壁に掛けたアナログ時計の秒針の進む音だけがクリアに響いている。
「うーん。難しい」
ただ刻々と時刻が過ぎていくだけ。
「はー」
あまり根を詰めても仕方ないよな。少し気分転換でもするか。
最近はあまり考えられていなかったが、俺にとっては特に重要な、母さんが残した課題について少し考えるとしよう。
自室の机の横に乱雑に置かれていたリュックの中から一枚のファイルを取り出し、机の上に広げる。
正方形で、対角線上に十字の折り線がついた折り紙の様な紙。
その表側には、『十字を切りて、整列させよ』とこれもまた暗号文の様な物が書かれていて、裏面には、多数の・と─が描かれて、折り線の三角形を境にして、・と─が書かれている部分と、書かれていない部分とで分かれている。
裏面だけを見ると、点と線が書いてある三角形部分と書かれていない三角形部分とが交互に来る。
表裏と、交互に見ても相変わらずよくわからない。
本当にこれは暗号文なんだろうか?
母さんの意味のないイタズラだったのではないかとも思えてくるが、母さんの事だ。きっとそんな事はないのだろう。
そもそも十字を切りて、とはどういう意味なのか。
対角線上に折られたこの線の事ではないのだろうか?
そして、整列させよとはどういう意味だ?
整列させるの一般的な意味は並び替えるって事だよな。
課題を机の上に置くと、さっきまでイジっていたコインが目に入った。
これは裏面を正しく並べ替えた結果、エンブレムが浮かび上がったんだったか。
裏を正しい向きで合わせて並び替える。こんなの本当によく思いついたもんだよな。制作者に敬意を示さずにいられない。
「正しい向き……?まてよ!」
課題を手に取り、裏面を注意深く凝視してみる。
「やっぱりこれ。並び替えれば繋がるんじゃないか」
紙を三角で区切って、裏面を正しく並び替えれば、線が一定方向に並ぶような気がする。
しかし、課題の原本を切ったりはしたくない。
慌ててパソコンを立ち上げて課題の裏面を取り込み、プリントアウトをした。
そして対角線上に切り取り、・と─が繋がるように置き換えると、またしても暗号の様な物が浮かび上がった。
『-- ・・・- --・-- ---・ --・・- ・・
-- ・・・- -・・- ・-・ --・・- ・・
---・ --・-・ ・-・-- ---- ・- ・---・ --』
・と─が意味ありげに並ぶ。────がまたしても意味はわからない。
この並び替えが正しいのかはわからない。もしかしたら逆さまに見るのかも分からないし、横から見るのかもしれない。
かもしれないづくし。だが、これも一つの可能性。
課題は既にパソコンに取り込んだのだから、いつでも複製はできる。
並び替えた課題の複製をテープで固定して、どうか読み取ることはできないかと、可能性を探る。
こうして、今日も夜はふけていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます