密室に置かれた予告状12
「まず、これは僕が始めた事ではないんだ」
「どういう事だ?」
「ある人物に相談されたんだ。相談されたのは、予告状を部室に置く事ではないけどね」
「そう勿体ぶるなよ。誰に相談された?そして、何を頼まれたんだ?」
葵木は一度息を深く吐き出してから、表情を弛緩させてから口を開く。
「橋渡先輩だよ」
橋渡と言われ、浮かぶ顔は二つある。真理部員でかる橋渡綾、そしてその妹である橋渡紡。
「どっちのだ?」
「どっちのって、そうだね。そのどちらとも言えなくもないし、両方だとも言えるね」
葵木はよくわからない事を言い出した。言葉の最初と最後で矛盾してしまっている事に本人は気がついているのだろうか?
「理解に苦しむ事を言うのはやめてくれ。もっとわかりやすく単刀直入に頼む」
紡が難しい事はわからないと言っていたが、少しさの気持ちがわかったような気がした。
「あはは。ごめんね。順を追って話す事にするよ。それで良い?」
「そうしてくれ」
「実はここ最近、橋渡綾先輩から僕は相談を受けていた」
「ほう」
相談相手は綾だったか。しかし、綾の相談でどう紡が絡んで来るのだろうか。
「その相談内容なんだけどね、雨宮先輩と、橋渡紡先輩についての相談だったんだよ」
「推理先輩と紡先輩のね」
話がよく見えて来ないが、話の腰を折っても仕方が無いので続きを促す。
「相談内容は雨宮先輩と橋渡紡先輩の仲直りをさせたいって事でさ。それで僕は予告状を仕掛けたんだ」
「そうなると……予告状に書かれていた無くした物を取り戻したいってのは紡の心情を葵木が代筆したって事になるのか?」
「おー、鋭いね御名答だよ」
パチパチと拍手をしてくれる葵木だが、俺は紡と知り合い、彼女の心情は知っているつもりだ。だから推理をした訳でもなんでもない。
彼女は推理の様子が気になり、いつも真理部の様子を伺いに来ていた。
二人の間に何があったのかは知らないが、紡的には仲直りはしたいのだろう。
推理がどうしたいのかはまだ推し量れないが。
「推理先輩の気持ちも考えたのか?」
「ああ。そこなんだけどね。綾先輩が言うには、かなり気にしているようだよ。あっ、橋渡先輩じゃどっちか分かりづらいから綾先輩と紡先輩で分けさせてもらうね」
葵木に習って俺も綾と紡と呼称するとしよう。
「気にしているっていうのは、どういう意味で、だ?」
いい意味であっても、悪い意味であっても意識をしているのなら気にしているで意味は合っている。正しく情報を聞き出す必要がある。
「それはもちろん、良い意味でだよ。雨宮先輩と綾先輩、紡先輩は小さい頃からずっと一緒に過ごして来たらしいんだ。あの二人は小さい頃からよく喧嘩をして、仲直りしてを繰り返して来たんだと」
「それだったら放っておけばいいんじゃないか?」
昔から喧嘩をして仲直りをしてを繰り返して来たのなら、外部からの助力は必要ないように思える。
幼馴染みというのがどういうものなのか俺にはよくわからないが、そういうものなのではないかと勝手に理解している。
「それが、今回のは今までの喧嘩とは少し違っていたみたいでね」
「どう違うんだ?」
「紡先輩が雨宮先輩の事を停学に追い込もうとしたらしいんだよ」
「なんだよそれ。二人は本当に仲がいいのか?」
かなりおかしな話である。仲直りをするしないの話なのかそれは?
外野がどうのこうの言う話ではないような気がしてきた。
「詳しい事は綾先輩にもお互いが口を割らなかったらしいんだよね。でも、お互いがお互いを気にし合っているのは間違いないと綾先輩は言っていたんだ」
どちらか片方の話も聞かずに、意思も尊重せずに肩入れするのはいかがな物なのだろうか?綾は二人の事をよく知っているとはいえ、姉妹であってもあくまで他人、人の心の中まで見ることはできないはずだ。
「だったら、詳しい事を聞きに行ってみるか?」
「誰にだい?」
「もう片方の当事者にだよ」
紡はおそらく今も、階段から真理部の様子を探っているはずだ。
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