UMAの本懐3
空き地には多数の老若男女が集まっていた。
ツチノコを絶対に見つけると張り切る小学生集団。
休日のイベントにしようと訪れた家族連れ。
賞金を手に入れようと息巻く俺達と同年代の集まり。
仲間内との話の種のために参加したと思われる、賑やかしのおじいさんおばあさん。
ツチノコがいない事を証明しに来た俺達。
目的はそれぞれ違うと思われるが一堂が介している。
「いろんな人達が参加しているんだね」
葵木は珍しいものを見るように、目を皿のようにして辺りを眺めていた。
「そうだな」
葵木の眺める人達の中に推理と綾は含まれていない。
綾の祖父に連れられて、空き地の奥に設置されている舞台の裏へ連れて行かれたのだ。
いったい何をしようとしているのやら。
「はいはいはいはいー!本日はご参加頂きましてありがとうございます!」
唐突に空き地内に女性の声でアナウンスが流れた。どうもどこかで聞いたことがあるような声だが……
「間もなく開会式を始めますので、ステージの方に注目してくださいっ!」
いやまさかな。
なぜか葵木はそのアナウンスを聞いてウンウンと頷いている。
こいつなんか知っているのか?
「なあ___」
葵木に声をかけようとした瞬間だった。
バシューッ!
ステージ横から白煙があがる。
まるで、テレビの音楽番組なんかでバンドグループが登場する時の演出のような。
「はーい。みなさん、こちらにご注目!」
もうもうと立ちあがる白煙が少しづつ晴れていく。
「今日はツチノコ探索に参加してくれてどうもありがとうー!それにしても、ツチノコ探索って何よね?もっとひねった名前つけて上げれば良いのに。そうだ!」
ってあれって___
推理!?
ステージ場に現れたのは少しテンション高めのいつの間にかジャージ姿に着替えている推理。それと……ツチノコ?
推理の横にはツチノコの気ぐるみを着た人物の姿がある。
ツチノコの腹?に当たる部分から顔が出ている。
そちらも知っている顔だった。
綾だ。オドオドとして、どうしたら良いのか本人もよくわかっていない様子のようだが、間違いなく綾だ。
「おー、マスコットのツッチーも、賛成のようなのでこのイベントの名前も大、大、大募集しちゃいまーす!」
なんか身勝手な事を言い出した。推理はこのイベントにツチノコがいない事を証明しに来たはずなのに、なぜかツチノコを見つけ出す事を目的としているイベントに名付けをしようとしているのだ。
「あの着ぐるみ重かったんだよね。役に立っているみたいで良かったよ」
横でボソリと葵木が言った。
「まさか葵木が持ってた大荷物って」
「そうだよ。あの着ぐるみさ。昨日の晩、雨宮先輩に頼まれたんだ。あれで小遣いが貰えるんだってさ」
「ふーん」
適当に相槌を打ってステージへと視線を戻す。
「いい名前が思いついた人が居たら、この裏側の本部まで教えに来てねー。ツッチーからも一言」
推理が唐突に綾へマイクを向ける。
「えっ?へっ?あう……」
打ち合わせをしていなかったのか、綾はしどろもどろの返答をした。
「はーい。ツッチーもお願いねーだって」
推理はかなり無理のある翻訳をした後、ステージ上から辺りをいちべつし、大きく深呼吸をした。
そして___
「第三回ツチノコ捜索隊。ここに開会します!」
声高らかに開会を宣言したのである。
観衆もまばらではあるがパチパチと拍手を送る。
もちろん俺と葵木も。
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