第14話 アルフレッドという男
「アルフレッドについて、か?」
「そう、マイルズさんから見てどんな人?」
翌朝、執務室に向かう道中警護に来てくれたマイルズに探りを入れる。
「そうだな、真っ直ぐ過ぎて融通が効かないところはあるが、裏表がなく、騎士らしい性格だ。」
「私の従兄弟に当たると聞いたんですが、どういうお生まれなの?」
「ああ、アイツはエーデルワイス公爵家の5男坊なんだ。5男なんで行く当てはないし、子供の頃から星騎士団で盾持ちをして、努力して今の地位についたのさ。」
無意識にすごい褒めるな、と思った。
◼︎◼︎◼︎
「おはようございます。」
執務室に入ると、噂の中心であるアルフレッドが待っていた。
「アルデルーナの件、聞きました。ケルピーの群れ相手に健闘されたとか。」
「心配かけてごめんなさい。」
「いえ、マイルズが一緒なら大丈夫だと信じておりました。」
おお、こちらも信望が厚い。
「では、俺はここで失礼。今日の護衛担当は星騎士団になる。」
「ありがとうマイルズさん。ゆっくり休んでください。」
ふっ、と微笑んだマイルズは、自然な流れで私の髪に指を絡め、そしてすぐに引っ込めた。
「じゃあなアルフレッド。このジャ……元気な女王様は目を離すと何しでかすか分からんぞ。」
いまジャジャ馬って言おうとした?
「しかと引き受けた。お前はとにかく休め。疲れた時の悪い癖が出ているぞ。」
ああ、そうだな。と私の髪に触れた自分の手を見て、マイルズは自嘲のような笑みを浮かべると、ひらひらと手を振り去って行った。
「おはようございます陛下。」
しっかり眠れたのか、初めて会った時より幾分か顔色のいいレックスが入れ違いで執務室に入ってきた。
「早速ですが、臨時代行示達書にサインをお願いします。」
「分かりました。」
私の体型には大きすぎる机に座り、出された書類にサインをする。
星騎士団はアルフレッド、月騎士団はマイルズ、行政関係はレックスが臨時で最高責任者になるようだ。
「おしまいです。」
「え!?まだ3枚しかサインしてないんですけど。」
まさか今日のお仕事終了?
「他の役職は選定中となります。午後までには全て揃える予定です。」
「そうなんですね。わかりました。」
「陛下が午前の予定をお断りされたということで、時間も空いてしまいましたね。」
そうか、お見合いする予定だったんだっけ。
お流れになったみたいでよかった。
相手の人には悪いけど。
「じゃあ、せっかくだしお城ツアーでもしようかな。中のことなにも知らないですし。」
歩くことで考えが整理されるかもしれない。
今後どうするか、どうしたいか、それをどう周りに伝えるか、誰に伝えるか。今は選択肢が少なすぎる。
とにかく情報がほしい。
「それもそうですね。」
レックスはアルフレッドを見上げる。
「陛下をご案内してあげなさい。」
「はっ!」
ビシっと胸に拳を当てる。
ここの世界での敬礼みたいなものなのかな。
あまりに力強い腕の動きに、風が吹いたかと思った。
「では陛下、自分についてきてください。」
「うん、お願いします。」
そう言って私たちは執務室を後にした。
◼︎◼︎◼︎
「うまくいきまして?」
レックスだけが残された執務室に、リザが顔を出した。
「はい、とりあえず2人きりにはなりましたよ。」
はー、とレックスがため息をつく。
「あぁ、せっかくですから、もっと良いドレスを着ていただきたかったのに。陛下は本当に奥ゆかしいですわ。」
「いきなり庶民から女王になったんだ。急に華美な格好させるのもどうかと思うが。」
マイルズも頭をかきながら執務室に再び戻ってくる。
「それでは見合いのお相手に失礼ですわ。」
「いいんだよ相手はアルフレッドだろ?質素な方があいつは好みだ。たぶん。」
少しイラつきながらマイルズは腕を組む。
「いい加減にしなさい。」
レックスが2人を止める。
「アルフレッドは家柄も良く、人望も厚い。心身ともに健康で、立身出世の欲も無い。歳も大きく離れておらず、愚直に陛下を支えるに適している。」
臨時代行示達書をマイルズに手渡し、レックスが指を折る。
「問題は潔癖すぎるきらいがあること。あとは本人たち次第というわけです。」
はぁ、と三者三様のため息が静かな執務室に響いた。
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