第7話 双璧(正反対の騎士2人)

「星騎士団副団長アルフレッド・エーデルワイスです。」


「月騎士団副団長マイルズ・クランシーです。」


黒色の布地に金糸で星の刺繍が施された軍服を着たアルフレッドと、銀糸で三日月の刺繍が施された軍服を着たマイルズが私の目の前で膝まづいている。


本当に王様になったのだなと居心地悪く感じた。


「あの、どうか顔をあげてください。双璧と名高いお2人に頭を下げてもらえるほどのものではないですから。」


そう、一般市民の私でも知っている。

若くて優秀で強くておまけに顔がいい、と評判の副団長たちがいま目の前にいる。

もはや芸能人に会ったような感覚に近い。


「いいえ、自分は先ほどの即位宣言、心から感動いたしました。このお方のために尽くせばこの国は安泰だと、そう確信した次第です。」


アルフレッドが髪と同じ黒い瞳をまっすぐに向けて、力強く言い放つ。


「まぁ、こいつはこういう奴なんで、信じてなんでも任せてください。」


マイルズはやれやれと言った感じで立ち上がる。

麦穂色の髪が綺麗にオールバックでまとめられている。


「ありがとうございます。詳細はレックスさんから聞いていますか?」


「あぁ、慰問とマーフォート族の交渉だろう?我ら月騎士団が貴女さまの護衛としてついて行きましょう。」


「マイルズ、やはり自分達が……」


「レックス様がお決めになったんだ。いまさらとやかく言うな。」


マイルズの言葉にむむむ、と口をへの字にしてアルフレッドが押し黙る。


「この2人はいつもこのような感じなので、お気になさらず。」


レックスがこっそり私に耳打ちをしてくれた。


「そ、それではお2人ともよろしくお願いしますね。」


「はっ!」


「はいはい」


なんとなくそれぞれの騎士団のカラーが見えた気がした。


アルフレッドが残念そうに執務室を去ると、レックスはマイルズに書類を手渡した。


「では、先行してアルデルーナ城跡地と海岸に兵を配置しておいてください。」


「かしこまりました。」


おおっと私とレックスで態度が違う。


これは舐められているのか、気負わないようフランクに接してくれているのかどっちなのだろう。


「あの、マイルズ、さん。」


その動揺が呼び方に出てしまった。


「なんだい?」


「先行隊の方にお願いです。この手紙を孤児院に届けてください。なるべく早く。イエナって子なら字が読めるので。」


「ふむ、なにか大切な用かい?」


マイルズが封筒に書かれた住所と名前に目を通す。


「すみません。うまくいくかわからないので今は何もいえないんです。」


「……というと?」


レックスが身を乗り出す。


私は努めて笑顔を作り、ミディアムボブになった髪を弄びながら口を開く。


「まぁ、アルデルーナは私の庭ってことです。」

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