第4話 決意(犯人のばーか!)

日がのぼった。


私はトラヴィスにお願いして再び別荘に赴いた。


火は消し止められ、真っ黒な瓦礫の山が広がっている。


兵士たちや街の若い衆が必死になって救助活動を行っているが、生存者は未だ見つからないようだ。


「現在、124名ほどのご遺体を発見いたしました。まだホールまでの捜索は進んでおらず……」


「そうですか。なるべく早く。でも安全にお願いします。」


レックスは若い兵士からの報告を聞いて何かをメモしていた。


すすけた匂いと、消火に使われた水気の混じった空気。


「サーヤ……ぁぁあサーヤ!!」


現実に対面した人々の嘆き。

震えるくらい心が痛い。


この瓦礫の山のどこかに、私の本当の家族が埋まっているのだろうか。


「失礼いたします。」


レックスの声がして振り返る。

後ろからトラヴィスも付いてきた。


「アイリス陛下が昨夜見たものや、街のものから聴取した内容。それから……」


「ぼくが調査した結果をまとめると、今回の騒動は人為的に引き起こされたものだと考えられるね。」


「誰かが、わざとってこと?」


ずっとそんな予感はしていた。

でも信じたくなくて、自然災害の可能性もゼロではないと自分自身に言い聞かせていたというのに。


「うん、ここには強い魔力の波動が残ってる。解析はこれからだけど。」


「そう、なんだ。解析よろしくお願いします。」


誰かが、あの大規模な事件を起こした。

いったい誰が。なんのために。


「……許せない」


「アイリスくん?」


「ぜったい許さない。」


「陛下?」


「こんなすごいことやってのけるだけの実力があるなら良いことに使え!ばーかばーか!」


私は出来なかった。


やりたいことも、見たいものも沢山あったけど、身体が付いてこなかった。


無理を言って親を困らせる度胸もなかった。


だからこの世界に生まれ落ちたのは前世で我慢を重ねた分のボーナスステージだと思った。


この素敵な世界を楽しみ尽くそうと思って、たくさん準備してきたというのに、なんでこんなかたちでまた阻まれなきゃいけないの?


なんで、普通に生きていた人たちの人生が、こんな理不尽に途絶えなきゃならないの?


「やってやろうじゃん。」


「なにを、ですか?」


「犯人を見つけて、国を立て直して、私の後継者も見つける!」


そしてとっとと隠居して当初の目標だった冒険者になってやるんだ。

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