第3話 問題山積(王族どころか重役も全滅?)
「それで、これから私はどうなってしまうのでしょうか?」
大混乱のホールからいったん連れ出され、私とトラヴィスは執務室へと移動した。
時計はいつの間にか0時を回っていた。
「さぁ?」
「さぁ!?」
「ぼくは宮廷魔導師だよ?政治のとこなんかちんぷんかんぷんさ。王家が潰れたら魔法の研究ができなくなる。それじゃあ困るからきみの保護をしたまでさ。」
「そ、そうなんですか……」
あの時の必死な訴えは、自分自身のためだったのか。
がくりと肩が落ちそうになる。
「失礼します。」
数回のノックの後、くたびれた感じの細身の中年男性が入ってきた。
「宰相補佐官のレックスです。以後お見知りおき下さい。」
「あ、こちらこそよろしくお願いします。」
深々と頭を下げてくれたので、こちらも下げ返す。
「早速ですがアイリス陛下。」
レックスが一枚の紙を差し出してきた。
「今日の正午、国内外に向けて即位宣言をしていただきます。これはその大まかな計画案です。」
「それは……仕事が早いですね。」
数時間前にあの大爆発が起こったばかりだというのに。
「朝になれば被害規模とおおよその犠牲者が把握できるでしょう。この異常事態、速やかに国民に説明をしなければ社会不安が増してしまう。」
「そ、そうですね。たしかに」
レックスの説明にピリピリと緊張感が執務室を満たしてゆく。
彼の言う通りだ。
大事なことほど早く正確に伝えなければ。
変な噂やデマに遅れを取ると、経済や国防に大きな打撃があるのは生前の世界でも同じことだ。
「レックス様はとても仕事でがきるけど、効率主義で仕事しかできないから補佐官どまりなんだ。」
「トラヴィスに言われたくありません。」
大人2人を横目に私は計画案に目を通す。
卒業式なんて目じゃないほどの人が来るだろう。
身分的に相応しくないと言って逃げた卒業生代表挨拶なんてかわいく見えてくるほど責任重大だ。
「レックスさん。」
ひと呼吸おいて私はレックスを見上げた。
「はい、如何しましたか?」
「私はこういう作法がわかりません。何を話せばよいかの要点と、段取りはあなたにお任せします。」
「……よろしいので?」
「はい。シルバー陛下が補佐官に相応しいと信じたあなたを、私も信じます。」
深いクマの刻まれたレックスの目が一瞬見開き、そしてわずかに口元が緩んだように見えた。
「あ、要望としては極力質素な感じでお願いしたいです。」
「承知いたしました。」
レックスのまとう空気が少し柔らかくなった気がした。
「では、そのように進めさせていただきます。」
「お願いします。そういえばレックスさんは補佐官なんですよね?宰相さんにもご挨拶することはできますか?」
「いえ、宰相は別荘におりましたため今は連絡がつきません。だから私がでできた次第です。」
私は思わず呻き声を漏らしてしまった。
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