ルキアッポスの言葉 (真) 1.1――3.6

   1


1 より深き榛色の瞳を持つ者、

ぶどう酒が好きで気まぐれな

情に脆い女神の分け御霊、

ルキアッポスの言葉。




2 キアッポスは後にこう言っている。

その人は救世主たり得たかもしれないが、

夢覚ましであることを自ら選んだ、と。


3 の気まぐれを前にして、人が労苦してみたところで何になるのか。

4 の人は王子様未満の星の下に生まれ、生きた。

5 り返される筋書きを運命と呼ぶのなら、その人はまさしく最後まで己の運命を半ば憎み、愛した。

6 事にも時があるのなら、役者に許されるのはつくづく、その束の間の時を喜び、味わい、楽しむことなのであろう、とルキアッポスは言った。

すべては過ぎゆく、と。




   2


1 かしその束の間の幸せも続かないとなれば、心は休まるところを知らない。


2 淵にとどまって切に願う。

大事な者の顔を思い浮かべては天に祈る。


3 気にしているだろうか。

怪我などしていないだろうか。

無事でいるだろうか。

まだちゃんとこの世界にいて、生きているだろうか。

幸せでいるだろうか。

もしかしたらもう、会えないのだろうか。


4 を仰いで束の間、その輝きに目が眩む。

あなたは白いヴェールを纏って虹色に煌めく。

虹色に色づいた雲の端でことさら鮮やかに輝いた緑色に、心奪われたわたしは目が覚める。


5 なたはたしかに其処にいる。


6 くらの花は咲き、秋の空は高く、水はとうとうと流れる。


7 たしもいつかは朽ちていく。


8 とえこの目が見えなくなっても、耳が聞こえなくなっても、手足が動かなくなっても、わたしの心はいつもあなたを映すでしょう。


9 たしの愛は、あなたを照らすでしょうか。

わたしの愛は、あなたをこの世に存在せしめるでしょうか。


10うか教えてください、わたしの愛する人

あなたはどこで眠り

月夜には、どこで身体を休ませるのでしょう。

遊ぶ子どもの声が響く朝に

  顔を覆って目覚めなくてもすむように。




   3


1 この世に生きとし生けるもの

 すべての役者に幸いあれ」


 賢者のように、この言葉を理解出来るものは誰か。わたしは痛みを知るすべての人に問う。

 メタシアターを愛する、天井桟敷のすべての人々に問う。


 2 の人はこうも言っていた。


「僕一人が真実を知っているだけでは、

 誰か一人を幸せにするだけでは、

 僕が幸せでいてほしいと願うその人の、

 重荷を取り去ることはできないのだ」と。


「い3 まこの星は物語を必要としているんだ。世界中の人々が信じられるような、リアルで夢のある、愛の物語を――」


 その物語を演じるのが僕であったら良かったのにと、最後に笑いながら呟いたその人の顔は、どこか少しだけ、悔しそうであった。



 4 が友よ、心せよ。

 5 の命つづく限り、わたしはあなたを愛そう。

 6 の目で、いつもあなたを見よう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る