ルキアッポスの言葉 (真) 1.1――3.6
1
ぶどう酒が好きで気まぐれな
情に脆い女神の分け御霊、
ルキアッポスの言葉。
その人は救世主たり得たかもしれないが、
夢覚ましであることを自ら選んだ、と。
すべては過ぎゆく、と。
2
大事な者の顔を思い浮かべては天に祈る。
怪我などしていないだろうか。
無事でいるだろうか。
まだちゃんとこの世界にいて、生きているだろうか。
幸せでいるだろうか。
もしかしたらもう、会えないのだろうか。
あなたは白いヴェールを纏って虹色に煌めく。
虹色に色づいた雲の端でことさら鮮やかに輝いた緑色に、心奪われたわたしは目が覚める。
わたしの愛は、あなたをこの世に存在せしめるでしょうか。
あなたはどこで眠り
月夜には、どこで身体を休ませるのでしょう。
遊ぶ子どもの声が響く朝に
顔を覆って目覚めなくてもすむように。
3
すべての役者に幸いあれ」
賢者のように、この言葉を理解出来るものは誰か。わたしは痛みを知るすべての人に問う。
メタシアターを愛する、天井桟敷のすべての人々に問う。
「僕一人が真実を知っているだけでは、
誰か一人を幸せにするだけでは、
僕が幸せでいてほしいと願うその人の、
重荷を取り去ることはできないのだ」と。
その物語を演じるのが僕であったら良かったのにと、最後に笑いながら呟いたその人の顔は、どこか少しだけ、悔しそうであった。
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