*ファイナル△ヘリウム⌓フラッシュ*
五彩の花冠が頭上で激しく揺れるほど息を切らしながら、マヌーは第3の広場へとつづくはてしない階段をのぼっていた。
「はぁ……。ったく、誰だよこんな長い階段つくったやつ」
急に口が悪くなったのは気のせいだろうか。どこぞのカエル*がうっかり少年へと飛躍的変化を遂げたばかりに階段が想定外の長さになってしまったなどという事情を知る由もないマヌーは、黄色いメガホンを握りしめながら野次を飛ばすと、階段の先をひと睨みした。一体どこまでつづいているのか――?
不意に鉄の香りが過ったかと思うと、脳裏には同じく階段の先をひと睨みしている苦しそうな少年の姿。どこか怪我でもしてるのだろうか――?
見覚えのあるその少年――マヌーの大事な友だちチアキは、視界を埋めつくす白い歯車に思わず歯ぎしりをすると、ふらふらと石段に座り込んでしまった。
『あと……ちょっとなのに……』
傾いだ頭上から花冠がゆっくりと転がり落ちるその刹那、チアキの脳裏に懐かしい琥珀の瞳が過って、マヌーは我に返った。
「……」
もしかしたら彼はもう既にこの世界には――。
そう心の内で呟きかけて、マヌーは思わず立ち止まった。まだ出会っていない未来なのか、すでに見逃した過去なのか、それとも天の気まぐれか。あまりにも映像が鮮明すぎて判断がつかなかったからだ。
マヌーはそのまましばらく俯いていたが、不意に黄色いメガホンを握りしめると、天までつづくかと思われるはてしない階段を今一度、ひと睨みした。
「……まだ、終わりじゃない……」
マヌーは頭上の花冠を引っ掴むや、いまいちど石段を力強く蹴った。
花冠は夢を纏って五彩に煌めくと、いまいちど力強く鮮やかに、いにしえの星の輝きを思わせて最後に赤く煌めいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。