男女比1:99の異世界は貞操逆転していた。SSスキル持ちの僕を冒険者や王女、騎士が奪い合おうとして困っているんですけど!?~優しさを振りまき約束されたハーレムを作り上げていく~
第142話 ユーリテスさんだけスキルを切ります
第142話 ユーリテスさんだけスキルを切ります
「これが剣聖の全力だっ!」
剣を何度も振るい、その度に光の刃が伸びて海を割る。海中に隠れていたシーサーペントの鱗なんて紙のように斬り裂かれ、細切れになってしまった。
「あははははっ! 最高! 全員、私にひれ伏せっ!」
血に酔ってしまったのかユーリテスさんは笑っている。
生まれてから変わることのないスキルが、あり得ないほどの強化されたのだから気持ちは分かるけど、周囲が見えてないのは困ってしまう。海に隠れていたデカい亀やサメなんかも斬っていて、誰の目で見ても暴走しているとわかった。
自然とルアンナさんたちは僕を守るために集まってきた。
今はまだ魔物に向かっているからいいけど、僕たちの方に刃が向くかもしれない。
それだけは避けなきゃ。
「ユーリテスさんだけスキルを切ります」
宣言すると誰も反対しなかったので守りたいと思う対象から外す。
効果はすぐにて出た。海を割るほど強力な光の刃が消えたのだ。さらに力が抜けたかのように膝をついてしまう。息は乱れているようで呼吸の間隔は短い。スキルを使いすぎたんだろう。
「あの力が……なく……なった…………」
喪失感を覚えているのか、うつろな目で僕を見た。
背筋がぞっとする。
すぐにルアンナさんが背中に隠してくれたので恐怖からは解放されたけど、目を閉じても顔が思い浮かぶほど脳裏に刻み込まれてしまった。
何が起こってもいいようにスキルブースターの対象を増やす。具体的にはルアンナさん、ベルさんを追加した。
「ナイフ借りるよ」
ビキニ姿で素手のルアンナさんがナイフを奪い取った。剣に関連するスキルを持っているから実力をある程度は発揮できるはず。僕も守られてばかりじゃ嫌なので、バングルを使って対抗するつもりだ。
前の様子が気になったので背中からこっそり覗いてみる。
上半身を揺らしながら近づいてくるユーリテスさんがいた。エルフのトリーシャさんが駆け寄って止めようとしたけど、背負い投げされてビーチに叩きつけられてしまった。
もう戦うしかないと覚悟を決める。
「団長ーーーーーっ!」
叫びながら飛んでいる女性の姿が見えた。
途中で腰から伸びる黒い羽を折りたたむと猛スピードで落下、ユーリテスさんを抱きしめながら転がる。
何が何だかわからず、僕たちはただ見ているしかできない。
「いきなりの武力行使はマズイですって! 王女陛下の勅命を思い出してください!」
「あれをもう一度経験できるなら、そんなのどうでもいいんだよ!」
僕のスキルブースターを危険な薬物みたいな表現をされてしまった。
「ダメですって! 私まで首が飛ぶんですから!」
「逆に女王を斬り捨ててやれ! 革命だ! 革命っ!」
「無理だから!」
「できる!」
「できないっ!」
ものすごく低次元なケンカをしている姿は、大国の人もこの世界の住人なんだなぁと感じさせる。
ある意味、懐かしくてほっとする光景だ。
「副団長権限で、一時的にユーリテスを拘束する! 取り押さえろ!」
甲板で様子を見ていたブルド大国の騎士たちが船から飛び降り、ユーリテスさんに殺到する。流石に数の暴力には勝てない……え?
「この程度で私が負けるか!」
なんと集まってきた騎士を持ち上げては投げてしまう。スキルブースターのアシストなしなのに圧倒的な力を見せつけていた。
さすが鬼にまつわる種族。すごい。
「ドワーフを連れてこい! 隊長のバカ力に対抗するんだ!」
背の低い女性が数人前に出てくると突進する。正面から受けてたら不利だと思ったようで、ユーリテスさんは横に飛んでやり過ごすと走り出す。あえて他の騎士たちの中に入ることで、ドワーフがついて来られないようにしたんだ。敵集団の中に入っても押しつぶされることはなく、むしろ適当な足を掴んで女性をふりまし、武器のように扱っている。
地球の人間なら骨の関節が外れて大変なことになっていそうだけど、この世界の人たちは意外と頑丈だ。
振り回され、投げ飛ばされても致命傷は負っていない。すべてミシェルさんのスキルで回復させられる範囲に収まっている。
「隙を見て私が取り押さえるから、スキルブースターは切らないでね」
「はい」
他人に任せても騒動は収まらないと考えたルアンナさんは、腰を落としていつでも動ける準備をした。手にナイフを持ったまま。
しばらく様子を見ていると、暴れ回っているユーリテスさんの周囲から人がいなくなった。
取り押さえられないとわかって、騎士たちが距離を取ったのだ。取り囲まれたままだけど数メートルはぽっかりとした空間がある。
「行ってくる」
走り、跳躍したルアンナさんはユーリテスさんの前で着地した。人の中に埋もれて見えなくなってしまったけど、剣戟が聞こえてきたので戦闘が始まったことはわかる。
「見えない。どうなってます!?」
「ナイフと剣で戦っているね。ルアンナが有利だよ」
つま先で立っても見えない。
ブルド大国の騎士たちに混ざって見学するわけにはいかないし、どうしようと思っていたらレベッタさんの手が両脇にするりと入った。体が持ち上げられて肩に乗せられる。
「これで見えるでしょ?」
「ありがとうございます!」
お礼を言ってから前を見ると、ユーリテスさん剣をナイフでたたき折っている場面が視界に入った。さらに足をかけて転倒させると胸を踏んで切っ先を首元にピタリとつける。
もう一度、スキルブースターをかけて欲しいという理由だけで暴れていたユーリテスさんだけど、この状態ではさすがに動けない。悔しそうな顔をしたまま睨みつけている。
戦闘が始まって一分も立ってないのに勝負は付いたようだった。
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