第98話 みなさん、素敵です

 男性特区から出てスカーテ王女の屋敷の敷地内に入った。玄関前には動物や植物をベースとした紋章を付けた馬車がいくつもある。


 外から見ても高級そうだ。明らかに平民が普段使うようなものではない。貴族が集まっているのだ。


 馬車が止まるとドアが開く。


「よく来てくれた」


 薄い青色のドレスを着たルアンナさんが立っていた。胸元は開いていて小粒なサファイヤいくつも集まったネックレスがあり、自然と目が吸い込まれそうになる。鍛えているから腰回りはしゅっと細くなっているけど、体つきはしっかりとしているのでたくましさも感じる。


 ただ残念なことに涎が出てるんだよなぁ。


 なんか僕を見る目も怪しく光っているように感じるし、彼女の理性が持ってくれるのか不安に思ってしまう。


「ご招待ありがとうございます」


 階段から降りると周囲にいる人たちの視線が集まった。


 魔法道具で変装していないため男が来たってバレてしまっている。


「目立ってますけど大丈夫ですか?」


「もちろん。今日はイオディプス君のお披露目会だからね」


 どうやら隠すことは止めたみたいだ。他国にも僕の存在が知られてしまったので方針をかえたのかな?


 手を出されたので軽く上にのせると、周囲の女性たちに自慢するかのようにエスコートしてくれる。


 完全なサプライズではなく、ちょろっと顔を見せて先に噂を広げる作戦なのだろうか。


 二階に上がって何度か使ったことがある応接室に通された。


「ここでしばらくお待ちください。会場へ入っていただくタイミングになったら、スカーテ王女が迎えにきます」


「わかりました」


 お別れかなと思ったら抱きしめられてしまった。下着を着けてないみたいで胸の柔らかさとルアンナさんの体温や匂いがダイレクトに伝わってくる。これに抗える男なんていないだろう。すくなくとも僕は無理だ。腕を背中に回してしまった。


 耳に彼女の唇が近づく。息がかかってくすぐったくも心地よく感じちゃう。


「貴方の望むものはすべて差し出します。ですから、子作りの候補に私も入れてくださいね」


「!!」

 

 すごく重たいことを言われてしまった。ルアンナさんにはすごくお世話になったけど、候補には入ってなかった。これはメンバーを再考する必要がありそうだ。


「答えは後日でも良いですか?」


「もちろん。私のことを少しでも気にかけてくれている。それだけで満足ですよ」


 お尻をわしづかみにされつつ、頬にキスをされてしまった。

 

 セクハラという概念がないのでヤれるときにヤっておけ精神なんだろう。

 

「それじゃ、また会いましょう」


 体が離れるとルアンナさんは応接室から出て行ってしまった。


 気を遣ってくれたのか室内に侍女らしき姿は見えない……けど、どこか視線を感じるんだよなぁ。なんかそわそわしてしまう。


 初めてのパーティーで緊張しているのかもしれない。


 気を紛らわす道具がないかなと探すと、ワインボトルが目に入った。グラスもある。


 景気づけの一杯なんて言葉を聞いたことがある。未だに意味はよくわかってないけど、勢いを付けるために飲むのかな。今の状況にぴったりだ。


 飲み過ぎて二日用にはなりたくないので、グラスの半分ぐらいまでワインを注ぐ。


 ちょっと多いかもしれないけど大丈夫だろう。


 グラスを掲げて照明の光を当てる。赤くキラキラと輝いていて綺麗だ。勢いが欲しいので口に付けると一気に飲み干す。


 ほどよい苦みを感じるけど嫌じゃなかった。


「ぷはぁ~」


 グラスをテーブルに置いてソファにすわると頭がぼーっとしてきたので、天上を見ながら何もせずに過ごす。


 時間がどのぐらい経過したのかは、わからない。もしかしたらちょっと寝ていたのかも。


 気がついたら応接室の前が騒がしくなっていた。


 スカーテ王女が来るのかな?


 立ち上がって出迎えの準備をするのと同時にドアが開く。


「やっほー! イオ君、寂しくしてなかった!?」


 入ってきたのはドレスに着替えたレベッタさんたちだ。みんな髪色に合わせたドレスを着ていて、宝石の付いたネックレスやイヤリングを指摘飾っている。


 レベッタさん、メヌさん、ヘイリーさんは長めのスカートにスリットが入っていて生足が見えた。


 アグラエルさんはスカート丈が短くて足を常に露出しており、尻尾があるせいでお尻の方は防御力がさらに落ちている。少しかがめば下着が覗けそうだ。いや、やらないけどね! しかも翼を出すために背中は開いているし、ボリュームのある胸を見せつけるかのように全面の布面積も少ない。


 なんというか半裸、そう表現しても良さそうな見た目だ。


「ドレス姿すごく似合ってますよ。みなさん、素敵です」


 感想を言った途端、四人が笑顔になった。


 お披露目が成功して喜んでくれたようだ。


「普通の男性は絶対にそんなこと言わないのに……もう、イオ君最高! 大好き!」


 我慢の限界が超えたみたいで、レベッタさんは跳躍して僕に抱きついてきた。支えきれないためソファに押し倒されてしまう。


「私たちは結ばれる運命なんだし、もう良いよね。いただきまー……」


「ダメだろ」


 パシッと頭を叩いたのはアグラエルさんだ。いつも通り、暴走を止めて守ってくれる。今の見た目は痴女だけど頼もしい女性だった。



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