第97話 え、今日なの!?

 イザベル王女とヘンリエッタさんの蛮行を不問にする代わりにダイチをナイテア王国で処分する権利を手に入れたらしく、王都へ輸送されていった。


 スカーテ王女が言うには、男性を痛めつけることが好きな女性のオモチャにさせてから、国家反逆罪として処刑させるらしい。これも僕がお願いしたことなので予定通りの結果だ。


 もちろん、王族が単純な好意だけで要望を受け入れることはない。


 この前の約束――三年以内に子作りをする――を守らなければいけないのだ。


 お相手はまだ決めてないけど、レベッタさんパーティとスカーテ王女は確定だろうなぁ。まだ猶予があるので急ぐ必要はないけど、今後の身の振り方についてはしっかりと考えて行動する必要がある。じゃないと皆に迷惑をかけてしまうからね。


 そんなことを自宅のソファで考えていたら足音が聞こえてきた。

 

「イオ君ーーーーーっ!」


 叫んできたレベッタさんに抱きつかれる。もう慣れてしまったので驚きはしない。


「機嫌良さそうですね。何かありました?」


「スカーテ王女がパーティーを開くんだって! 私たちも招待されているよ!」


 手紙をひらひらさせている。バラの紋章が見えたので王家から来たのは間違いなさそうだ。


「僕たち何かしましたっけ?」


「したじゃん! 極悪男性犯罪者の捕獲! あれの作戦成功を祝うらしいよ!」


 確かに皆がんばったけどパーティーを開催するほどだろうか。


 やるべきことをやっただけなんだから、お金を使って祝うほどじゃない。そう思ってしまうのは、僕が貧乏な家庭に生まれてしまったからかな? それとも別の思惑アが有るのか……。


「参加するよね?」


「うん。します」


 なんせスカーテ王女とは子作りをする予定がある。もっと相手のことを知っておきたいから、話せる機会があるなら積極的に参加するべきだ。


 それに王族が開催するパーティーというのも少し気になっているのも事実。


 天上にシャンデリアがぶら下がって、豪華な食事がテーブルいっぱいに広がり、ワイングラスを片手に持って談笑する。そんな世界を一度は体験してみたい。


「やったー! じゃあすぐに出発しないと!」


「え、今日なんですか!?」


「うん!」


 普通はもっと前に打診が来るもんじゃないの!?


 あれ? 僕がおかしいのかな?


「ちゃんとイオ君用のタキシードは準備しているから心配しなくて良いよ! カッコイイ姿を見せね!」


 あ、もしかしてこれ、レベッタさんたちが言わなかっただけで、スカーテ王女はちゃんと準備期間を用意してくれてたのかも。なんとなくそんな気がする。


「そういうことはもっと早く言ってくださいよ~」


「てへっ」


 下をペロッと出しながらウィンクされてしまった。


 あざとい。けど文句を言う気が失せてしまったので効果はばっちりと出ている。なんだか憎めないんだよなぁ。


「スカーテ王女のパーティーに遅刻したくありません。すぐに着替えましょうか」


「案内するね!」


 どこに? と言う前に手を引っ張られてしまう。


 階段を上がって僕の部屋を通り過ぎ、空き部屋のドアを開く。中には他のメンバーが全員いた。


 アグラエルさんが黒く光沢のあるタキシードの上着、メヌさんがズボン、ヘイリーさんが真っ白なシャツを手に持っている。何をしたいのかすぐに分かった。みんなで着替えさせようとしているのだ。


 謎の圧力を感じて一方後ろに下がろうとしたら肩に手が乗った。


 振り返る。


 粘着質な目をしたレベッタさんがいた。


「いいよね」


 何が? と聞かなくてもわかる。着せ替え人形になれと言っているのだ。


 ゆっくりと皆が近づいてくる。取り囲むようにしているので逃げ道はない。

 

「もちろんですよ」


 肯定した途端、レベッタさんの手が素早く動いて気づいたら上半身が裸になっていた。ヘイリーさんが僕の耳を舐めながらシャツを着させてくれる。抵抗はしない。なすがままだ。


 すべてのボタンを締め終わると、ズボンが引きずり下ろされた。足を上げると取り上げられ、メヌさんにタキシード用のズボンをはかしてもらう。太ももやお尻を必要以上に触られたけど、やるだろーなーと思っていたから驚きはしなかった。


 予想通り過ぎて拍子抜けすると思っていたら、最後に股間をがしっと握られてしまう。


「大きい。子作り楽しみだね」


 息子が縮み上がるぐらいのすごいプレッシャーだ。


 見たことはないけど婚活女子のような必死さを感じる。


「そうのうち、ですからね」


「待ってるから」


 息子をやや強めに握りしめられてから、メヌさんの手が離れた。


 最後まで待っていたアグラエルさんが顔を背けながら近づいてくる。男の姿をしているから恥ずかしがっているのだろう。


 やりにくそうなので、僕からも近づいて袖に腕を通していく。上着を着て気づいたんだけどぴったりだ。知らない間にサイズを測られていたみたいだ。


「わ、私も子作りに参加する権利はある……よな?」

 

「もちろんですよ」


 仲間はずれは良くない。求めてくれるのであれば応えるつもりである。


 ただ今は、僕に覚悟がないので子供を作りたいとは思わないけどね。まあ、来年ぐらいまでには何とかなるでしょ。そう思って気負いすぎず日々を過ごそうと考えていた。


「イオ君。カッコイイねーーー! 大好き!」


 後ろからレベッタさんに抱きしめられてしまった。


 そのまま持ち運ばれて外に出るとバラの紋章をつけた馬車が家の前に止まっていた。御者台には見知らぬ女性とルアンナさんがいる。周囲には女性騎士が数十人いて警戒態勢はばっちりだ。


 皆と一緒に乗り込むと馬車が走り出す。


 これからスカーテ王女の屋敷に行くんだろう。まったく僕の都合なんて考えてないスケジュールだなぁ。




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