きゃっち・ぼーる
高柳孝吉
きゃっち・ぼーる
「おい、あのガキどものキャッチボール、なんとかしろ、うちの窓ガラス何度割られた事か」
「よし、いっちょ俺が怒鳴りつけてくれる」
べらんめえ口調のこのオヤジを怒らすと怖い。オヤジは子供達の方へどしどし歩いて行った。そうとも知らず子供達はわいわい嬌声を上げながらキャッチボールを続けている。
「こらあ!ガキども、こんな所でキャッチボールなんかするな!!」
子供の一人は青ざめて、
「やべー、カミナリオヤジが来たぜ!」
「逃げろー!」
しかし、その内の一組はキャッチボールをやめない。オヤジは怒鳴った。
「こら!」
「なんだよ、キャッチボールしちゃいけないのかよ!」
「そうじゃねえ、ボールの投げ方がなってねえんだ!」
子供はずっこけた。
「おい、グローブ貸してみろ」
子供は戸惑いながらグローブを渡す。
「ちっちぇグローブだなあ。いいか、構えはこういう感じで、ひじはこうだ」
投げた玉は、結構なスピードで見事にもう一方の子供が構えたグローブにすっぽり吸い込まれた。
「すげー、おじちゃん!」
「おじちゃん、ナイスコントロール!」
その光景を傍から見ていた近隣のおっちゃん達は、ツカツカと歩み寄って
「おい、なにやってんだ、早くそのガキどもを追い出せ」
と言うと、雷オヤジは渋面をして叱りつけた。
「ああ、わかったよ、しょうがねえなあ。ーーお前ら、早くあっち行け!!」
怒鳴られたのは、無論、おっちゃん達だ。
きゃっち・ぼーる 高柳孝吉 @1968125takeshi
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