第7話 神様とブッコロー
ブッコローは、体が大きく体が重たい。一応ミミズクではあるが、あまり飛ぶには向いていない体型のフクロウだ。
羽も短く天国行きの扉をあけるのも疲れてしまうので出来れば配達に行きたくないと思っているが、ブッコローは神様の専属の伝書フクロウであるためやらざるおえない。
伝書フクロウとして立派に勤め上げれば、子供2羽の人生が豊かなものとなる事が確約されていて、逆に親が何かしでかすとその罪は子供にも降りかかるのがこの世の仕組みだ。
その為ブッコローは、馬券さえ当たれば配達だけはとにかく頑張っている。
手紙の届け先である彼は、天国に行くチャンスである死後7日間だけ開かれている扉の中に入った人間だ。その開かれた扉の中に入らないかで成仏できるかが決まる。
彼は素直な人だったんだろう。
きちんと成仏していて、死後も神様に位のよい地域に振り分けられ、人間界で言うタワーマンションに暮らしている。
地獄に落ちる人間は、あの森で失踪している。
「ピンポーン」と人間界と変わらぬインターホンの音が鳴り響く。
『どちらさまですか?』と聞こえてきたのでブッコローだと伝える。
玄関の扉が開き、「ブッコローってあのブッコローですか?」と廊下を走ったのだろう。息を切らしながらブッコローに問いかけた。
「伝書フクロウのブッコローです。あなたの恋人からの手紙を預かってまいりました。」
「彼女から?」
「はい。先月ご依頼にお店にいらっしゃいました。あなたへ手紙を届けて欲しいと」
「本当にオレンジ色のフクロウがいるんですね。噂は聞いた事があるんです。死んでからも想いを伝えてくれるらしいって」
「想いを伝えられるチャンスがある人間は限られています。生前の行いが良かったこと、死後素直に成仏すること、そして人間界で生きている人間から手紙を送ってもらえること。こちらの世界から返事以外送ることは出来ませんので。あなたは、死んでからも想いを伝えたいと彼女から思われた。だからそのチャンスが回ってきたんですよ。」
「ありがとうございます…」彼は少し涙ぐみながら手紙を受け取った。
「とても綺麗な色ですね」
手紙に書かれている文字の色を見ながら彼はつぶやく。
「それはOfunaGlassで作られた職人さん手作りのガラスペンで書かれています。インクはファイバーカステルのターコイズ。ドイツ製のインクです。」
とても綺麗ですね。と手紙の文字を見つめる彼の姿を見て、その顔を彼女にも見せてあげたいとブッコローは思う。そして彼にはオカザキヤの招待状も手渡す。
返事を出したくなったら、来て下さい。ブッコローは帰宅する。
彼は手渡された手紙を、ゆっくり月明かりの下で読み始めていた。
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