第4話 満月の正体

「どうして、満月の日だけなんですか?」

そう聞かれた郁さんは何と答えたらいいのか困っていた。理由は従業員のせいだと言いづらかったからだ。


ブッコローは競馬を好んでおり、箸にも棒にも引っかからないほど予想するのが下手で全然当てられないにも関わらず仕事をサボっては競馬場に行っている。

その上、有り金全て突っ込んでしまう生粋のギャンブラーだ。

当たらないのに何故ギャンブルを続けているのかと言うと、ブッコローには子供がおりその子供の誕生日の馬券を買い、それがたまたま大金に化けたので競馬にハマってしまったのだ。

岡崎さんには「あの鳥にはお金を貸したらいけない、絶対」と忠告された事があるし、間仁田さんには「関わらない方がいい」と言われた事があるので、重症のようだ。


実力で当てていない事に気づかないのは当人だけなので、可哀想な気もするが、一度競馬をやめさせようとした所、1日も働かなくなってしまった。

娘の誕生日馬券や誕生日の数字を並び替えた馬券だけは、当たる事があるのでその時だけはとてもよく働いてくれるので、一ヶ月分まとめて配達してもらっている。


魔女こと岡崎さんは、とにかく道具にこだわる。そして新作に弱く、発売日には文房具店に自ら足を運び、ガラスペンやインクを経費で買ってくる。それだけでは足りず全メーカー、全種類の文具を仕入れるよう間仁田さんを問い詰めては困らせている。


文字を書くのもゆっくりのんびりで時間がかかる。なので一ヶ月でこなせる仕事はごく僅か。だがその時間をかけた分とても丁寧な仕上がりでお客様からの評判はとてもいい。


間仁田さんは、仕入れを担当しているが数字にはルーズで確認が必要だ。他にも馬券が当たらないとイライラするブッコローの世話係でもある。

機嫌がとても悪くなると憂さ晴らしで片っ端から食器を割り続けるブッコローだが、オカザキ秋のごはん祭りでシールを集めてもらえるお皿や器は何故か割れない。

何度投げつけても割れない。

壁になげてもシンクになげつけてもそのままの状態をたもっていて、むしろ割れないことにさらにイライラしてしまうブッコロー用に羽根で落としただけで割れる食器も仕入れ、その片付けもしている。あと無茶振りで絵を描けと言われて描いたり、なので忙しい。


私にも仕事がありそんなこんなで毎日営業していたらとてもじゃないけど仕事がこなせない。満月の日といえば、なんとなくそれっぽいからとは口が裂けてもお客様には言えなかったので、

「オレンジのフクロウは、月明かりを目印に羽ばたく習性があるんです。それに合わせてお店も営業しています」とだけお伝えした。

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