(5)

「まさか、この人が、お昼ご飯の時に話してた……」

「え……えっと……そうなんですけど……」

 あれ?

 この人が、警察から例の「呪いのステッキ」を持ち出した人だとしたら……。

 無い。

 持ってない。

 肝心の……呪われた「魔法のステッキ」が……。

「や……やめて……助けて……何すんだぁぁぁぁッ⁉」

 その時、あきらかに変な音と共に悲鳴。

 えっ?

 今度は……通路の吹き抜けから……。

 と……鳥?

 茶色の鳥人間?

 腕が翼に……顔が鳥になった人間(多分)が……鉤爪になった足で三〇代か四〇代のおじさんを掴んで……。

 そして、顔の嘴には……。

 ものすごぉ〜く安っぽいデザインの……見覚えのある……プラスチック製のステッキが……。

 た……多分……警察から持ち出したおじさんが手から落したのを拾ったんだろうけど……ど……どう云う事?

 こんな……呪いって……ん?

 何か……この鳥人間の「気」は変だ。

 魔法が使える人特有の「パターン」は無い。

 でも……普通の人の「パターン」とも違う。

 何かに取り憑かれてる「パターン」とも違う。

「変身能力者? それとも、妖怪古代種族系?」

「わ……わかんないけど……下手にやっつけたら……」

 そうだ……多分、この鳥人間をやっつける手は、いくらでも有る。

 でも、下手にやっつけたら……足の鉤爪で掴まれてる人も下に落下して……。

「こんな事になるんじゃないかと思って……買ってて良かった……」

 その声の主は……。

「すいません……胴体を強く絞め付けられた人の治療が出来るスタッフが居たら、呼んで下さい」

 その人は……白衣を着たショッピング・モールのスタッフらしい人に声をかけながら……このショッピング・モールに入ってるアウトドアショップのロゴが入った紙袋を破る。

 中から出てきたのは……登山用のザイルらしい太く丈夫そうな紐と、軍手。

「は……はぁ……え……と……どう云うゆ〜事……あの、胴絞めって柔道なんかでも危険過ぎて反則の筈……えっ?」

 その時……その人は軍手を手にはめると、プリムローズさんに、紐を投げ付け……そして、紐の片方の端を手に持ち……。

「ちょ……ちょっと待って……」

「んがっ?」

 吹き抜けに飛び込んだその人は……鳥人間とぶつかり……。

「がががががががが……」

「うわああ……助け……」

 紐は鳥人間の胴体にに巻き付いていた。

「1日に2度もやるとはな……」

「誰か……て……手伝って……重い重い重い……」

「たすけて……たすけて……たすけて……」

 その人は、空いている片手で、鳥人間に捕まってた人の片手を握っていた。

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