(6)

「こいつらは、呪いの品らしいモノを下に落したようです。発見しても、絶対に触らないで下さい。一般のお客さんも近付けないで下さい。警察を呼ぶ場合は、対『魔法』能力を持つ警官の出動を要請して下さい」

 高校生だけど、既に「魔法使い」中心の「レスキュー隊」の訓練を受け始めてるらしいプリムローズさんは、てきぱきとショッピング・モールのスタッフに説明する。

「は……はぁ……で、その『呪いの品』の外見は……?」

「え……えっと……ピンク色で、外見は『魔法少女のステッキ』風。だけど、かなり安っぽいデザインで、プラスッチク製です」

「わかりました……下の階の警備員に連絡しておきます」

「あと……バスタオルか何か持って来て下さい」

 謎の女性は……人間の男性の姿に戻った鳥人間の股間を指差した。

 登山用のザイルで……喉と頚動脈を絞められて、気を失なった途端に、四〇〜五〇代のおじさんの姿になっていた。

「こ……この人……誰なんですか?」

「この顔には見覚えが有る。少し前に地域ローカルニュースになってただろ。障害致死容疑がかけられてた中小企業の社長だ。能力は妖怪古代種族系の変身能力の中でも『トンビ天狗』。パワハラで社員を何人か死なせた屑野郎だ」

 謎の女性は、そう説明した。

「な……なるほど……。でも……こんな能力が有れば、そりゃ……警察にも……」

「逮捕されたよ。でも、逃げ出した」

「へっ? でも……特異能力者用の留置所や刑務所って……」

「まず、逮捕された時点では……単に社員を高い所から突き落してただけだと思われてた。でも、念の為、精神鑑定をしたら……ある精神症状持ちの可能性が出て来た」

「へっ?」

「ところが、それが中途半端にニュースになった際に、人権派弁護士に唆された凶悪犯が心神喪失による無罪を狙ってると騷ぎ出したネトウヨ系の阿呆どもが居てな。後になって思えば、最初に騒ぎ出したのは、この屑野郎が雇った連中かも知れんが……。……しかも、そのネトウヨ系の阿呆どもの中に市議会議員や県議会議員まで居たんで、警察も無視出来なくなった」

「ちょ……ちょっと待って下さい。それと、この鳥人間が、警察から逃げ出せたのと……何の関係が……?」

「だから、警察も、こいつに特異能力持ちしか罹らない精神症状なんて無い、ってフリをせざるを得なくなって、一般人用の留置所に入れた。そうなりゃ、逃げる手はいくらでも有る」

「ちょ……ちょっと待って」

 話に割り込んで来たのはプリムローズさん

「どうした?」

「『特異能力』って、魔法・超能力系に、科学的に説明出来るモノに、今んとこは、どっちでも説明出来ないモノとか、色々と有るんだよね?」

「そうだが……?」

「あのさ……特異能力者って言っても、オタク用語ネットジャーゴンで言う『能力の源パワーソース』が人によって全然違うのに、特異能力者以外は罹らない精神疾患ビョ〜キって有るの? どう云う原因で罹る、どんな精神疾患ビョ〜キ?」

「そりゃ、決ってるだろ……使だ」

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