『桜』は『黒』について知る
ぱちっ。。。ぱちっ。。。
どこからか焚火の火がはぜる小気味良い音が
聞こえる。
続いて鼻孔をくすぐる何とも言えない香り。
(なんだろう。すごい美味しそうな匂いだ。
そういえば助けてくれた人が蛇のかば焼きがどうとか言ってた気がする。。。)
。。。がばっ!「蛇のかば焼き!?」
「あ、起きられましたか?お腹空いてます?
よければたくさんあるので一緒にどうです?」
「え?え??それ、え???というか私???」
「まだ混乱してますね。よければこちらにどうぞ。
少し火にあたって落ち着きましょう。」
「あ、ご丁寧にありがとうございます。」
そう応えてオウカは目の前の青年?
たしか名前はクロエといったはず。
の横に移動し腰掛ける。
「あの、助けていただいてありがとうございます。
あらためて私はオウカと言います。
クロエさん?ですよね?色々とお聞きしたいことが あるんですがあなたはいったい。。。」
「これはまたご丁寧にどうもです。
はい。僕の名前はクロエと言います。
彩りを求めてこの世界を旅しているおそらく
世界で最後の『黒』の人になります。」
「あの、その『黒』の人っていうのは。。。
無知で申し訳ないのですが私の知る限りこの世界に 存在する『色』として黒色はわかるのですが
それを魂に持つ生き物がいるなんて今初めて
知りました。それにクロエさんは大蛇を倒した時と 私の傷を癒してくださった時、髪と目が違う色に
なっていましたよね?」
「あーやっぱりそういう反応になりますよね。
まず『黒』についてなんですが、今から何千年も
前にこの世界には原初の『色』として五色が
存在しました。」
「五色ですか?三色ではなく??」
「はい。『赤』『青』『黄』の現代では三貴色など
呼ばれている三色と、『白』『黒』を合わせた
五色です。」
「『白』ですか?『白』は三貴色から生まれた他の
色と同じで後に生まれた色と聞いていますが」
「それは誤りです。はるか太古、世界が五色の大陸
に分かれていた時代に『赤』『青』『黄』が欲を
出し、手を組み『白』と『黒』の大陸を手中に
収めようとしたんです。そしてその時に抵抗
しましたが戦いに敗れた『白』は散り散りになり
他の三色に取り込まれました。
その事実が広まると外聞がよろしくないと考えた
当時の三色たちが事実を捻じ曲げ、あたかも自分達 こそが始まりの色であると広めたのでしょう。」
「そ、そんなことが。。。あれ?でも『白』は
戦いに敗れて大陸を奪われたんですよね?
だとすると『黒』はどうなったんでしょう?
『白』と同じく負けちゃったんでしょうか。。。」
「いえ、実は『黒』の大陸というのは厳密には
存在しないものだったんです。」
「え?存在しない??それってどういう。。。」
「今は便宜上『黒』の大陸と言いましたが五つ目の
大陸は『無色』の大陸としてありました。」
「『無色』の大陸??」
「えぇ。神様が最初に作った大陸は元はとても大きな 1つの大陸だったんです。その後に多様性を求めた 神様が大陸を5つに分け、それぞれの大陸に『色
を与えたんですが、その時に当時の大陸のまま
『色』を持たない生き物を残したのが『無色』の
大陸でした。」
「な、なんだか自分が幼い頃から教えられた世界の
成り立ちとかなり違っていてもう理解が追い付か
なくなってきました。。。」
「ははは。この話を聞けば誰でもそうなりますよ。
まぁ信じていただけるかは別としてこのまま話を
続けますね。」
「すみません。お願いします。」
「はい。で、この『無色』の大陸なんですが
初めは『色』を持たない生き物たちしかいません
でしたが、そこに他の大陸から色んな生き物が
渡ってきました。『無色』は『無色』ゆえに
それがどんな『色』の生き物だろうと受け入れ
ともに暮らしていました。」
「争わずに皆が暮らせる素敵な大陸だったんですね」
「そうなんですよ。で、ここで質問です。
オウカさんのような三色以外の色がどのように
生まれたかはご存じですか?」
「え、それは三貴色が混じって他の色が生まれて
さらにその色同士が混じって他の色が生まれて
そうして世界には様々な『色』が生まれたと
聞きました。」
「正解です。例えばオウカさんの『桜』ですが
これは『赤』と『白』が混じってできた色だと
言われてます。その他にも『赤』と『青』で
『紫』や、『青』と『黄』で『緑』といった
感じですね。」
「私の『色』は『赤』と『白』が混じったもの
だったんですね。初めて知りました。」
「今となっては自身の『色』のルーツを知ろうと
する人はほとんどいませんからね。
さて、ここで問題です。『色』と『色』が
混じりあえば新たな『色』が生まれる。
では、様々な色が全て混じればどのような『色』
が生まれるでしょうか?」
「え。。。どんな『色』なんだろう。。。
とても綺麗な虹のような『色』でしょうか?」
「不正解です。ある意味惜しくもあるんですが。
正解は全ての色が混じると『黒』になるんです。
すべてを吸い込んでしまいそうな深い『黒』に。」
「え!?綺麗な色を全部混ぜると黒く
なっちゃうんですか!?」
「そうなんです。そしてここから本題なんですが
かつて神様は醜い三色の争いを見て悲しみ
そしてそのような争いが今後ないようにと
天変地異を起こし5つの大陸をふたたび1つに
纏めようとしました。
その結果、今の世界が出来上がったのですが
その過程は凄まじい物で、世界がふたたび1つに
なるまでに続いた一週間の天変地位は当時の世界に に生きていた生き物の数をわずか一割に減らして
しまうようなものでした。」
「史実にて伝えられる『神の嘆きの一週間』ですね」
「そうです。その生き残った一割ですが、それぞれ
の『色』が自身の力を使う必死に生き延びた結果
かろうじて生き残れた数になります。」
「そしてその天変地異の際、『無色』の大陸にて
暮らす生き物は考えました。
自分達の力ではとてもこの災厄を生き残ることは
できない。ならばこの大陸に生きるすべての力を
託し、一つの命を残そうと。」
「そして『無色』の大陸に住まう全ての『色』の力が 集められ混ざりあい凝縮され、その結果できたのが 僕、最後の『黒』の人になります。」
「今まで教えられてきた『色』の歴史にそんな真実が 隠されていたなんて。。。」
。
。。
。。。
「ん?ちょっとまってください。
それって何千年も前のお話ですよね?
で、クロエさんが最後の『黒』の人で。。。
クロエさんっていったい何歳なんですか。。。?」
「さぁ?生まれてから千年を超えたあたりからは
そういうの気にしなくなっちゃったのであまり
よくわからないです。」
「ええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!??????」
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