アイスクリーム(ホラー)
良太はカップのアイスを食べようと、蓋を開け中蓋をぺリリと剥がした。
するとそこにはアイスではなく、人が居た。見たのは一瞬だが、同い年くらいの20歳前後の黒い髪の長い、色白の女の子だった。萌黄色のワンピースを着て良太を見ると驚いた顔をし、その後ホッとしたような歓喜するような顔になった。
次の瞬間、良太は真っ暗な中にいた。手で回りを探ると、紙の壁が手を伸ばした先すぐにある。誰かいないかと叫んだが、自分以外に誰も居ないようだった。
周囲をさらに手探りすると、紙の壁は良太を取り囲むように丸くなっている。天井もまた手を伸ばすとすぐに届く距離にあり、ビニールのような感触だった。
ここはカップアイスのカップの中だ、と良太は悟った。あの女の子を目撃した事で、次は自分がカップの中に入る事になったのだ。そして誰かがこのカップを手に取り、蓋を開けない限り自分は元の世界に戻れないのだ。
それまでずっと、この暗い密室で一人でいなければならない。カップアイスだから冷凍庫に入っているはずだが幸い寒さは感じないが気が狂いそうだ、正気を保っていられるうちに誰かが手に取ってくれないと…
彼は何日も天井から光が射すのを待ち続けたが、もう何日経ったか分からなくなるまで時間はかからなかった。
良太の体は生きていたが、屍も同然になっていた。うつ伏せに倒れ込み、顔を横に向けているがその目には何も映っていない。
彼は急に奇声をあげると勢い良く起き上がり、口から大量の血が流れだした。舌を噛み切ったのだ。
ばったり倒れると朦朧とした目に、光が射した。
良太はあの日、カップアイスを開けた自室に居る。口からは相変わらず血がどくどくと流れており、意識は遠のいていく。
どうやら死ねば外に出られるらしい。それともこれは死の間際に見る幻覚だろうか?良太には分からなかったが、もうどうでも良かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます