初陣2
目の寸前までコンタクトレンズが迫ると、途端に、手にも目にも力はいりました。プルプルと指が震えだし、しかし、それをうまく制御して、私はコンタクトレンズをついに、押し当てました。
……頬に。
標的から大きくそれて、コンタクトレンズは頬骨の上あたりに直撃しました。眼球からは程遠い位置です。
これは衝撃です。針の穴に一糸を通すよりも、はるかに簡単であるはずなのに……。
「何かの間違いだろう」
私は、そう自分に言い聞かせて、再チャレンジを行いました。が、結果は同じ。
そこで、私は気が付きました。
コンタクトレンズの装着に必要な能力は、「手先の器用さ」ではなく、「ビビらないこと」だったのです。
何を隠そう、私はビビっていました。それはもう、富士Qのド・ドドンパ並みにビビっていました。(乗ったことがないので想像ですが)
それで、ついつい目を瞑ってしまうのです。だから、狙いが定まらない。至極当然の結果です。
では、目を瞑らなければよいと思うかもしれませんが、これが難しい。感覚としては、顔面に向かって飛んできた打球から目を背けるなといっているのと同じです。生物学的には骨髄反射なわけで、脳によって制御することできません。
三度目のチャレンジも、合えなく敗北に終わります。
唯一、対抗しうる策としてあったのが、瞼を強く抑えて、物理的に閉じれなくするというもの。しかし、これはこれで難易度が高い。それだけに集中できればいいですが、コンタクトを目にもっていくという慎重な作業と並列で行わなければならないので、中々うまくいきませんでした。
つまるところ、私の初陣は完膚なきまでの敗北で終焉を迎えました。
気持ちとしては、全国優勝を目指す高校球児たちが、地区予選の二回線当たりで敗れたようなものです。
「え?マジかよ?こんなところで躓くのかよ?」
そんな具合でした。
コンタクトレンズ奮闘記 坂町 東 @azumasaka
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