第61話経済問題~大臣side~

 

「陛下、シーラ帝国を頼りましょう」


「帝国に頼る? あの忌々しい女がいる所へ頭を下げろというのか!!」


 ああ、やはりそこを突いてくる。

 だが、これしか方法がないという事も分かっていただけないだろうか。帝国はブリリアント様を次期皇后の座に据えたいと考えているようだ。

 帝国からすれば喉から手が出るほど欲しい逸材。それがシャイン公爵家だった。


「シャイン公爵は陛下の実の叔父上。ブリリアント様は従妹です!これを活用しない手はありませんぞ!!」


 私のこの言葉を聞いた時、陛下はまるで子供のように駄々をこねられた。


「あんな女に頭を下げろと言うのか!!冗談ではない!!!」


「今はプライドより実を取るべきときでしょう!!!」


「ぐっ……」


「それとも陛下には他に策がおありでしょうか? あるならば教えて頂きたいのですが?」


 流石の陛下もこの問い掛けには答えられなかった。そして遂に重い腰を上げてくれたのだ。

 私は胸を撫で下ろしたよ。これで何とかなる。そう思った。

 陛下は私の指示に従って動いてくれた。その行動力だけは本当に大したものだと思う。だが、それ以外は酷いものだった。

 なんとか帝国への訪問が許された。

 後は、陛下自ら赴いて貰うだけだ。


 シーラ帝国の皇帝陛下は姪であるブリリアント様が当時婚約者であった陛下に蔑ろにされていた事を知っていた筈だ。その事でユリウス陛下にいい感情を抱いていないのは容易に想像出来る。無理難題を吹っかけて来る可能性は高かった。

 だからこそ陛下は自ら出向く必要があったのだ。そこで謝罪し、帝国の助力を取り付ける必要があった。それこそが唯一の希望だったのだ。

 陛下は渋ったが最後には首を縦に振ってくださった。

 私の提案を聞いてくれるだけの度量はまだ残っていたようだ。


 何も直接謝る必要はない。

 表向き、円満に婚約は白紙になっているのだ。

 それにブリリアント様が帝国の皇太子殿下との婚儀を控えているという噂もある。過去を蒸し返す必要もない。ただ陛下が「当時の事を深く反省している」といった態度が必要だった。それだけでも与える印象は違うというものだ。陛下は渋々ではあるが了承してくれた。


 それから数日後、陛下と護衛の騎士達は帝国に旅立っていった。

 無事に帰国してくれればいいのだが、陛下の性格を考えると不安は尽きない。護衛や他の外交官達にもよくよく注意しておいたからな。もし、陛下が誤った行動などをしたら止めるように言ってある。

 不敬罪に問われないかと心配していたが、そんな事を言っている場合ではない。何か言われたら「大臣達の総意だ」と答えるように言い聞かせた。


 要は、我々が責任を持つと言う事だ。



 

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