第62話外交問題~ユリウス国王side~
帝国の夜会は無駄に豪勢だ。
我が国の夜会など比べ物にならぬくらい贅をつくした趣向が施されている。莫大な費用を掛けているに違いない。呆れる話だ。
僕ならこんな浪費をする余裕があるならもっと国の為に金を使うがな。
それにしても妙に視線を感じる。
貴族共が雑談をしているが、さりげなく僕の方を気にしている様子だった。
一体何だというんだ?
ただ単に他国の使者が来たのが珍しいだけなのか? いや、それだけではないだろう。明らかに値踏みするような目つきなのだ。
僕は周囲を警戒する為に連れてきた騎士達の方を見る。彼らは静かに首を横に振るだけだった。彼らも気付いているようだ。これにはムッとした。
「陛下、あまり顔に出さないようにしてください」
外交官の一人が耳打ちしてきた。
「解っている」
この日のために訓練してきたのだ。
どうも僕は感情を隠すのが苦手のようだ。大臣達に指摘されるまで気付かなかった。「外交で相手に舐められたら終わりですよ!」と言われたので仕方なく訓練を受けたが、なかなか難しい。まだまだ修行が必要だと教師に言われた。
国王に即位してからというものの思い通りにならない日々の連続だった。
今までは友好的だった国々が、僕が王になるや否や我が国を見下すようになった。
まるで我が国に価値がなくなったかのような態度。
王国を訪れる者は年々減り続けている。新しい政策を取り入れたものの、思うように結果は出ていない。
嘗て、僕と共に留学した友人達はいつの間にか傍から消えた。
今ではどこで何をしているのか全く知らない。
噂では田舎の僻地に飛ばされたとか、窓際部署にいるだとかいう噂が流れたが真実は不明だ。彼等には期待していただけに残念でならない。学生時代は優秀であったが、今は落ちぶれた姿を晒していることだろう。実に哀れで滑稽なことだ。
まあ、今となってはもうどうでもいいが。
今回の訪問だってそうだ。僕はシーラ帝国との友好を築きに来た。だから態々、ここまでやって来たのだ。
だが、実際はどうだろうか?
皇帝に挨拶に行ったら睨みつけられた挙句、鼻で笑われたのだ。腹に据えかねた。思わず怒鳴ろうとしたが隣にいた外交官に必死の形相で止められた。
なぜ止めたのだ! そう叫びたかったが抑えた。
ここは相手の機嫌を損ねてはいけない。それが解っていたからだ。
だが、心の中での怒りを抑えることは出来なかった。
そして夜会の時間が近付くにつれ、段々と気分が悪くなってきた。
「お疲れですか?陛下?」
護衛騎士が聞いてきた。この男は意外と冷静な判断ができる。しかも感情を隠すのが上手かった。
「ああ、そうかもしれないな……」
僕は小さく答えた。
実際、疲労感があった。
ここ数日、寝不足が続いていた。眠れぬ夜を過ごしている。
それもこれも奴のせいだ。
あの女、僕の元婚約者ブリリアントのせいで……。
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