第60話経済問題~大臣side~
これ以上は焼け石に水だ。
流石はブリリアント様といったところだろう。
かの公爵令嬢は、商売の才能もある。
帝国に移住してからは、その才能をより発揮していた。
彼女が王妃になっていたら我が国は間違いなく栄えたであろう。
同じような政策を打ち出すにしても、国王陛下よりもずっと現実的な発想と実行力があったからな。悔やんでも悔やみきれない。私も陛下の事をとやかくいえないのだ。所詮は女の身だと侮っていた部分があった。公爵令嬢が諸外国に与える影響力は我々が思っていたよりもずっと強かったのだ。彼女は我々の想像をはるかに超える先を見据えていた。その慧眼を我々は過小評価していた。彼女の才覚と行動力が今になって我々を苦しめるなど想像もしなかった。
陛下も薄々ブリリアント様の影響だと気付いていた。
現実を知るいい機会だと思ったのはこの時だ。
何時までも夢物語では国が保たない。いずれ現実を見て頂く必要があった。その為にも一度国の内外をしっかりと知る必要がある。そう思ったのだ。
それは正しかった。
しかし、ある意味で間違いだった。
挫折を知らない陛下が耐えられる筈がなかった。
現実を直視した陛下の心はポッキリと折れてしまわれた。それを支える為に重臣達は全力を尽くさなければならなかった。それが臣下としての務めであった。
「大臣、金が足りないのなら王家の資産を吐き出そう」
「何を仰います!?」
「それが一番いいではないか!」
「王家の資産で賄い切れるとお思いですか!!」
「当座はそれで持つだろう?」
陛下のいう事は正しい。しかし間違ってもいる。
この御方には国を動かすという自覚がない。いや、理解出来ていない。だから無謀とも思える発言をする。しかもそれを当然のように口にするのだ。
私は心底ゾッとした。
陛下がそんな事を口にされた日には王国は瞬く間に立ち行かなくなる。
確かに暫くの間なら持つだろう。だが、見通しの立たない予算など直ぐに使い切ってしまう。その時に残るのは、莫大な負債を抱えた王国だけである。それは破滅を意味するのだ。王国の終焉といってもいい。陛下はその事が分からないのか?
「それと……他国の王族との婚姻を急いでくれ。この国を支援してくれる国ならどこでも構わない。どんな王女が嫁いでこようとも我慢しよう」
私は言葉が出なかった。余りの発言に眩惑すら覚えた。一体何を言っているんだ!
他国の王女がこの国に嫁いで来てくれると本気で思っているのだろうか!?
無理だ!
政略の旨味がない。
それどころか属国扱いされかねない!!
他国に支援を要請するという発想は良い。と言うよりも、それ以外に方法がない状態だった。
問題はこの国を支援してくれる奇特な国があるかと問われると……難しい。
一つあるにはあるが……。
陛下が果たして納得するかどうか……。
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