第58話婚姻問題~ユリウス国王side~

 高位貴族の令嬢はどれも同じだ。

 人としての感情が欠落している。


 喜怒哀楽が乏しい。

 いや、違うな。あえて感情を表に出さない。

 物事を歪曲に捉える。

 取ってつけた言い回しが癪に障った。

 意地の悪いところが、あの女を思い起こさせる。


 性根の腐った公爵家の娘。


 大臣達はあの女に似通った令嬢ばかりを花嫁候補に据えようとする。

 僕がどれだけ嫌悪感を抑え込んでいるのか分かっているのか!?思い出すだけで腹立たしい!!



 忌々しい!!


 あの女はまるで伝染病のようだ。

 この国から居なくなってもなお、国中に蔓延っているのだ。

 そして……、その病原菌に感染してしまう者が後を絶たない。

 父上は何故、あのような小娘を僕の婚約者として選んだんだ!!

 考えれば考えるほど怒りで我を忘れそうになる。


 落ち着け!

 あの小娘はもういないんだ。そう自分に言い聞かせて必死に怒りを抑える。

 深呼吸をして気持ちを切り替える。


 そうだ……。

 僕は国王なのだ。

 あんな小娘がいなくともやっていけるはずなんだ。

 それなのに……。

 

 やはりあの女のことが頭から離れない。

 

「陛下」


 宰相が声をかけてきた。

 

「どうした?」

 

「ご報告したい件がございます」

 

「なんだ、話せ」

 

「はい。実は――――」


 その内容は到底認められるものではなかった。


「馬鹿な……」

 

「本当です」

 

「しかし、そのようなことになれば我が国は……」

 

「はい。間違いなく経済破綻を起こします」

 

「……」


 頭が痛くなってきた。

 頭痛薬を飲むと少し気分が良くなった気がする。


「誰だ?」

 

「陛下?」

 

「誰の仕業だ……」


 答えは返ってこなかった。

 それが答えだった。


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