第33話五年前~ブリリアントside~
私達は常識の範囲内で教育に当たらせていました。
だいたい、菓子を持参したと言いますが、アレはシュゼット側妃の手作りだとお聞きしています。王族の口を付けるものは全て事前に毒見されるのは基本。その規則を破る行いをする方が悪いに決まっているではありませんか。仲良くなりたいと言うのなら、茶会の時に楽しそうに振る舞えばいいだけのこと。会話の輪に入って和気あいあいとすれば宜しいのに、何時までも世を儚んだ悲劇のヒロインのような顔でいるのですもの。付き合い切れません。
『菓子を焼いている暇がおありなら、歴史の本でも読んだら如何ですか?』
そう口に出した私は悪くありません。
本当に、私達の貴重な時間を使っているのですから、もう少し真面目に取り組んで欲しかったですわ。
もしかして、それを「虐め」と捉えているのですか?
シュゼット側妃と何度か会ううちに彼女の本質というものが見えてきました。
彼女は何時もどんな時でも「悲劇のヒロイン」なのです。
周りの人間が助けてあげなくては……と思わせる雰囲気を出して周囲が察してくれるのを待っているだけなのです。そして周りはその雰囲気を感じ取り、勝手にシュゼット側妃の為に行動を起こすのでしょう。彼女が自分から行動を起こす事はありません。ただ黙って悲し気な顔でいるだけです。だから、彼女の望む行動を行わない私達が悪いとでも言うのでしょうか?
それは、ただ単に怠慢だとしか言えませんわ。シュゼット側妃は一度も何もしようとしなかったのですから……。
「私達は何もしておりません。全てはシュゼット側妃の行動の結果ですわ」
「嘘をつくな!母上は何も言ってはいなかったぞ?」
「では、どうしてこのようなことになったのか御自分で考えられたことはありますか?今まで公務に就かれていなかったシュゼット側妃が異常なのです。それでも、王太子の生母ということで公の場に立たなければなりません。一介の王子の母とは立場が違いますからね。もっとも、シュゼット側妃が『王太子の生母』の地位を返上していればまた話は違ったかもしれませんが……そうでない以上は嫌でも公の場で『王太子の生母の責任』を果たしていただかなければなりません。まあ、結果がアレでしたが、内輪の夜会で良かったと思わなければなりませんね」
「なんだと!?」
ユリウス王子は顔を真っ赤にして怒り出しました。事実を述べただけですのに、何故怒るのでしょう。どうも、母君の事になると盲目的といいますか、客観的にみられないといいますか……マザコンだからでしょうか?
「殿下は、側妃としての責務を放棄しているシュゼット様が失態を犯して大した咎めもなく、これから先も王宮に住み続けられる理由を御存知ないのですか?」
「なんのことだ!?」
「王妃殿下の口添えがあったので王宮に留まる事ができているんですよ」
「なに!? 王妃が母上を幽閉したのか!!」
「何故そのような解釈になるのですか。違いますわ。陛下はシュゼット側妃から『妃の称号』と『王太子の生母の地位』を返上させて修道院に隠遁させるつもりだったのです。それを、王妃殿下が『王太子はいまだ幼く、実母の存在が必要だ』と訴えてくださったからこそ今の状態になっているんです。勿論、私や他の妃方も王妃殿下の言葉に一理あると考え賛同致しました。感謝されこそ恨まれる覚えはございません」
「やはりそうか!貴様たちのせいだったのか!!」
更に怒り出したユリウス王子はそのまま去って行きました。
今度はどのように歪曲したのでしょう? 謎ですわ。
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