第7話

 ナツメ・ユキジは異能を持つ闘技者である。身長は186cm、体重は79kg、バストはスイカと揶揄されるほどの大きさを持ち、全体的に筋肉質であり巨女と言われる部類にある。



 彼女の自慢は自分の肉体と『炸裂反撃リアクティブ・カウンター』と呼ばれる異能である。



炸裂反撃リアクティブ・カウンター』とは何か?異能の中でも防御に関しては上位に入り込む強力な異能と呼ばれ、体に敵性衝撃が加わると瞬時に硬化し尚且つ衝撃箇所が爆発して相手に攻撃できるというものである。



 汎用性は非常に高く、攻撃に対しての防御力も高ければ敵を殴ることであえて爆発させて攻撃することも可能。それだけでなく味方にも短時間とはいえ自身の能力を付与することも可能であり彼女がいるだけでとんでもなく強固な敵として立ちふさがってくるのだ。



 そのような異能があったためにプロになるまでは負けなしで業界からはかなり期待されていた。対戦相手も下馬評ではそこまで実力があるわけでもなく彼女が勝つと言われていた。



 だが結果は今のところ全戦全敗、多少の慢心はあったものの真面目に戦っていたはずなのに明らかに自身の異能である『炸裂反撃リアクティブ・カウンター』と呼ばれる異能よりも能力が劣る相手に負けたのだ。



 しかし、それは彼女のせいではない。対戦相手が突然のパワーアップでステージの半分を吹き飛ばす『炸裂反撃リアクティブ・カウンター』の許容量を超えた攻撃を放ったり、外野からの声援で決して倒れない化け物と化したりする『奇跡』が起こるのだ。



 下位ランキングとは言え相手が次々に覚醒と言っても過言ではない状況を引き起こす異常性には気づいており、逆に強者に挑めば彼女が覚醒するのではないかと考えられて上位ランキングの戦士と対戦することもあった。



 結果、ただでさえ強い上位ランキングの戦士が特に苦戦もしていないのに異能が突然強化して惨敗。



 これには関係者の誰もが真顔になった。異能が二つあるわけが無いはずなのに彼女と戦えば強くなれると理解してしまった戦士たちはいっせいに彼女に対戦を挑もうとした。



 たとえ彼女と戦うことで急激に強くなれるとしてもそうは問屋が卸さない。パワーランスが崩壊しかねないためランキング運営は彼女の対戦を制限、異常性の原因が解明されるまで民衆から極力忘れ去られない程度に試合は組まれた。



 ここで、ナツメ・ユキジがどうして闘技者になったかを一言で説明しよう。



『モテたい』



 異能と巨体のせいでどうも近寄りがたいが故に男との縁がなく、下手したら婚期も逃す可能性があると小学生のころから危機感を持っていた。



 簡単にモテる方法は単純に人気になること、それが彼女が考えうる最良のものである。



 ここで考えてみてほしい。負け続きで試合制限も食らってしまった彼女はメディアに出にくくなる。ほかの目に晒されないということは人気だって上がりにくくなる。



「これを逃がしたらあかん……………うー、でも厳しいんは分かってるんや!」



『病院』からの連絡に彼女は全てを賭けている。最近壊滅した誘拐組織から保護した男性を養うための候補として連絡を受け、即座に『病院』へ向かっている。



 ようやくつかんだ男の浮いた話だ、絶対に逃すことはできない!



「八ッ!顔が怖くなっとらんか?ちょっとでも笑顔の練習をしとかんと……………」



 闘技者としての顔は物凄く悪役みたいな笑みになってしまうことがあるのは自覚していた。



 手鏡を見つつ笑顔の練習をする姿は微笑ましいものがある。それでも彼女は真剣なので笑わないように。



 車で三十分、『病院』についてから心の準備に二十分かかってようやくお見合いスペースと呼ばれる場所へと案内された。



 ちなみに、お見合いスペースには既婚の異能者が護衛として待機している。異能の種類は拘束系で統一されており、相手が暴走した瞬間に即座に制止させるというという役割を担っている。



 護衛たちに監視されながらもいつも以上に体を緊張させ扉に手をかける。



 もう既に相手の男性はいるとのこと。男性の情報は車の中で何十回も確認した。



 顔含めて全身に傷が残るほどの虐待を受けつつも自力で誘拐組織から脱出。その間に何らかのトラブルで記憶の欠損がみられているが女性に対しての恐怖心は不明、故に丁寧に接しなければならない。



 そして、ついにナツメ・ユキジは扉を開けた。



「君が……………ナツメ・ユキジさんだね?」


「そういうあなたがレイさん……………きゅう」


「なぜ倒れるのです!?」



 傷だらけの顔スカー・フェイスの異名を持つ闘技者はいるが目の前にいる男ことレイの顔が傷がある故に輝かしく、何よりも男性経験がないために輝きに耐えられず失神してしまった。



 いかなる物理に対する装甲を持っているとしても、視界からくるイケメン光線(個人差があります)には耐えることはできなかった。

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