第3話
「えーと、君の名前を教えてくれるかな」
「…………レイ」
「年齢は?」
「忘れた。気にしたこともなかった」
「ふむふむ、家族はいるのかな?と言ってもどこかに連絡してほしいと言ってないところを見るとひとり身で間違いないね」
「……………」
「君は発見された時重症で1ヶ月間昏睡状態になってたわけだけど、最後の記憶はいつかな?」
「……………崖から落ちた。理由は知らん」
「ショックで一時的に記憶を失っているのかそれとも……………いや、何でもない。じゃあ次の質問なんだけど」
男の医師に出された質問に淡々と答え、まるでカウンセリングのように心理状況を知ろうとしている様子だった。
やはりおかしい、一週間でやっと上半身を起き上がらせ滞りなくしゃべることができるようになったが数人が交代して監視する程度でまるで脅威にすら思われてもいない。
外を見ると海沿いではあったが別に田舎というほどでもない、どちらかと言えば夏のシーズンになると海水浴目的の観光客が大量に押し寄せてきそうなまでの発展具合だった。
病室にテレビも備え付けであるが、これまで上手くしゃべることと体を動かすことができなかったせいでまだ見ていない。
今日でようやくある程度の体の自由が利くようになったかた情報は集めなくてはいけない。
「ところで、体の傷はどこでついたんだい?思い出すのが辛いなら無理に言わなくていいよ」
「……………まあ、ちょっと無茶をしてた時期がありまして」
「無茶かぁ。分かるよ、私も
君はよく頑張ったんだね、と彼は最後に付け足すように言った。
よく頑張った?頑張った、か。死に物狂いでどんな状況でも殺すべき者を殺していった、そこに褒められることなんて一切ない。
人を殺している時点でほめられる要素はない、たとえどれだけ傷つこうが当たり前とやるしかなかった。
そうしなければ
誰が知りえるのか、俺に最悪の未来予知ができるということを。
誰に理解されるだろうか、特定の人物を殺さなければ惨状が起きると。
誰が知ることができるのか、『世界』そのものに悪を成せと全て仕組まれていたことに。
結局、都合のいい舞台役者でしかなかったのだ。一人を確実に殺しても報酬は誰かの敵意と憎悪しかなく、しくじれば未曾有の被害がでるという昨今で話題のブラック会社ですらドン引きするレベルだった。
「とりあえず、質問はこれくらいかな。最後に聞きたいことはあるかな」
「……………いや、特には」
「そうか。じゃあ、後はゆっくりテレビを見てるといいよ。雑誌とかはないけど、他に何か欲しいものがあったら呼んで欲しい」
……………不自然だった。あからさまに俺の過去について触れてこない。
目の前に居る医師も戦闘に長けているわけでもなく、俺に対して警戒心すらなかった。
医師が出ていき再び一人になった。
もう何もしたくないとは思ったが、とりあえずテレビをつける。
昼前だからニュースの一つや二つくらいやってるはず……………
『ーは続いてのニュースです。先月引退を表明した
何やら芸能人のニュースをやっているようだ。
全く知らない芸能人のが現役復帰したということだが、その女性らしい芸能人のことは知らなかった。
ニュースでやるくらいだからかなり有名なのだろう。元々、殺すターゲットになる芸能人以外に興味はなかったし、しばらく眠っていたから入れ替えもあるだろう、全員を知らなくても無理はない。
『いやー、びっくりですね。あの「流れ星」が再び舞い戻るなんて』
『私達のヒーローですからね。下位ランクからのスタートというわけですが、すぐさま蹴散らして上位ランクへ上り詰めるでしょうね』
…………下位ランク?蹴散らす?
テレビに映っている女性アナウンサーと女性司会が淡々の芸能人や最近起きた事件について話しているが、全て終わったことに関する話題が何一つ出ない。
いくらなんでも不自然すぎる。あの決戦にはヘリで報道してそうな奴らもいたし、そんなに時間も経っていないはずなのに報道すらされてない?
時間は経っていたとはいえもう報道されなくなったということは脅威が一つなくなったということで平和になった証拠だろう。
『はい、ではつまらないニュースはここまでにして恒例のコーナーに行きましょう!「超異能バトルフロンティア」~!』
………………………………………………………………ナニソレ?
『今回もランキングは変動しませんでしたが新人がいい戦いっぷりを見せつけてくれましたね』
『そうですね、相手を豪快に流す戦いを見せつけ「洪水」の異名をもぎ取ったリンウッド・カタナが快進撃を続けています。下位ランキングは始まったばっかりなのでまだわかりません』
『あとナツメ・ユジキも注目すべきでしょう。毎回惜しいところで負けていますからね。今のところ全敗ということで「奇跡の逆転負けファイター」と呼ばれるようになりましたからね』
『あれは本当に惜しい素材なんですけど、どうしてかネタキャラの枠を超えられないんですよね~』
『でわでわ、戦士たちの輝かしいダイジェストをお送りします!』
一切聞いたことがない話題に対してあっけにとられている間に画面は切り替わる。
そこに映るのはかつてローマとかで栄えていた闘技場を科学の力でサイバー風にアレンジした建物の中、そこで当然のようにあたり一面を水浸しにして相手が放ったであろう電気をあえてショートさせ自慢げに立つ少女がいた。
大きな火の玉を放ち、放たれた側はまるで土の壁を生み出したかのようにして防ぎ、土片を弾丸のように射出して
「………………………………………………………………は?」
思わず口から変な声が出た。やはり何かおかしい、俺の知識と致命的に何かがかみ合わない!
超能力を持つ人間は少ないとはいえ居た(一応、俺も含まれるのだが)。しかし公衆の前で力をふるうのは本当にまれな話であり、もし超能力を派手に使って犯罪を起こした場合は政府が全力で科学的何かのテロとして処理していた。
超能力の種類にもよるが、予知能力や運命操作能力のように目立たないものはただの犯罪者or英雄としてテレビに出たりはする場合もあるが………………
圧倒的に足りない。できることならインターネットを利用したいところだが、今はテレビや備え付けられているであろう雑誌で情報を集めるしかない。
そして、最後に一つ疑問に思ったことがある。
なぜテレビには
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