第2話
…………………………………………音がする
………………………………………機械の規則正しい音だ
……………………………………これは、心電図の音だ
…………………………………つまり、ここは病院もしくは研究室
………………………………じゃあ、俺は生きている?
……………………………体は動かないが、目は開けられそうだ
…………………………目を開けた
………………………清潔そうな天井が見える
……………………首はほんの少し動かせた
…………………天幕に備え付けのテーブルがある
………………やはり、ここは病院だった
……………つまり、生き残ってしまった
…………けれども体が動かない以上、代償は安くはなかっただろう
………誰かが来た、定期的に俺の様子を見に来たのだろう
……この時、やっと目が覚めたばかりで視界がぼやけているが、男が来たとだけはなんとなく分かった。
…どれだけ昏睡状態だったのかは分からないが、目を開けている俺に驚き飛び出ていった。
無理もないだろう、危険人物が目覚めたのだ。応援を呼ぶのは当たり前だ。
始まるのは尋問、もはや簡単には死ぬことはできないだろう。
やっと終わると思ったのにこのざまとは。
ざわざわと外が騒がしくなってきた。人がたくさん集まってきた証拠だろう。
「…………失礼する。聞こえていたらの話だけどね」
ドアのノックが聞こえた。以外にも耳の機能は衰えていないようだ。
「ふむ、どうやら視界は万全ではないが完全に覚醒しているみたいだ。聴力はどうかね。聞こえるなら三連続で瞬きをしてくれると助かるよ。瞬きは急がなくていいからね」
顔まではよく見えないが、医師であるということは理解できた。足音から医師と二人の人間が入ってきていることも知ったが顔は見えなかった。そして言葉は聞こえたため三連続で瞬きをした。
「驚いた、声はまだ出せないようだが上手くいけば自立も早くなるだろう。もちろん、君に意欲があるならね」
意欲……………今の俺に生きる価値があるかどうか。いや、奴らにとっては俺は大罪人、無理にでも生かして晒上げるくらいはしなければいけないはず。
待てよ、なぜこの医師は自立と言った?
顔は既に全国で知られているはずだ。電気どころか電波すら届いていないド田舎くらいでないと知らないはずがない。
「緊張しないで。ここに君を害する
しまった、考えていることが顔に現れていた。
「色々聞きたいことはあるけど、今はまだしゃべれないね?回復する必要もあるし、しばらく様子見で声を出せるまで待ってみよう」
また後で来るよ、と医師は言ってほかの二人と部屋から出ていった。
出ていったのはいいが、うすぼんやりと部屋の外あたりに気配を感じた。
どれだけ眠っていたかは分からないが、全体的に衰弱しているのは確かだった。
動けない限り逃げることもできない、ただただ寝たきりでじっとするしかなかった。
ただ監視付きとはいえ、不思議と一人で静かにいられることに安堵していた。
何を今更なのだろうか。
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