お払い箱ぎりぎりな私でも引き取ってくれますか?

@Funa1

心許ない始まりの一手

道端で倒れている人を見かけたら、守護霊がいると思え。


私がこの町でよく聞かされた言い伝え。


下宿してから初めて聞いた際は意外と驚かなかった。


すでにその一人を知っている。まだ知り合って間もない小さな少女だった。


初対面は茂みと道路の真ん中。巡回中とプリントされた腕章をつけ、両手を胸の前で交差させた状態で寝転がっていたところを偶然発見した。

髪はブライトブルー色のマッシュルームヘア。格好は灰色に統一されており、パーカーにロングパンツを着用している。


行きつけの帰り際なのだろうか。一声かけようとした。しかし姿勢よく仰向けになっているのを確認するとそれも野暮な気がした。


呼吸をしている様子はない。死相も感じられない。

死生観が揺るがされるようだった。


立ち止まらなかった自身を悔やんだりはしないが、やはりどこかしらの部位にちょっかいをかけたくなる。

このまま引き下がるのはむず痒い。

そこで目を付けたのが、少女の足元が微小ながら震えている箇所。


人差し指でちょこんとつついてみる。

反応なし。

今度は優しくなでてみる。

震えがひいた。なんだかあやしてあげれたようで安堵してしまう。


「よ~し。よ~し。心配しなくてもちゃんと付き添ってるんだからね~」


姉っ気がすごい。まだ目も合わせてないのにこの親近感。このギャップは後で埋め合わせしなくては仕方がない。


「おい、巡回中の字面が読めぬのか?」


「え、あ・・・・」


少女はいつのまにか半身を起こしていた。


「ふん、これだから新入りは・・・」


「わたし、ひっこしてきたばかりで、すみません」


「出身がどこであれ、居住するなら伝統の一つや二つ守ってもらえない?」


「伝統・・・ですか」


「そういえば、あんた制服はどうしたのよ?」


「今日学校じゃないので」


「そうじゃなくて・・・・ひょっとして新入りの職員じゃない!?」









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