第49話
それは二人が神であった頃の話。白蓮は
天界に住む二人の間には
天界では誰もが、心穏やかで平安な時を過ごしていた。神々のする事と言えば、優雅に花を愛でる、
そんなある日、
「愚か者。お前が焼き払ったのは我の民ぞ」
焼き払われた民は、一言主を信仰する者たちだった。それに一言主は怒り、姿を現したのだった。これが彼の言う、
この話は、以前、涼悠に話して聞かせていたが、一言主の事は白蓮にとって、重要ではなかったため、省いていたのだった。しかし、一言主に「貸しは、返してもらった」と言われ、それを涼悠に話して聞かせることにしたのだった。
「そうか。そんなことがあったんだな? なんで、一言主の事を話してくれなかったんだ?」
涼悠が聞くと、
「その必要はないと思ったから」
と白蓮が答えた。
「薄情な奴だなぁ。今度、一言主に会ったら、お前もお礼を言えよ」
涼悠が言うと、
「分かった」
と白蓮は素直に答えた。
「ところで、あとどれくらいで渋川に着くんだ?」
話もいったん終わり、だいぶ進んだのではないかと思った涼悠が聞いた。
「あと二刻ほどだ」
と白蓮が答えると、
「まだそんなにあるのか~」
涼悠はそう言って、寝転がった。そんな彼を見て、白蓮は微笑み、そっと髪を撫でた。
「なあ、白蓮。俺たちはどうやって出会って
涼悠はただ、純粋に知りたかった。初めて会った時、二人はどんなことを想っただろう? 夫婦になるまで、どのようにして仲を深めていったのか? それを、白蓮がどのように語ってくれるだろう。そんなことを考えながら、彼が話し始めるのを待った。
「私とお前が出会ったのは天の川の畔」
そう言って、白蓮は語り出した。
ある日、
「ありがとう」
「うん」
「私の為に、あなたは濡れてしまったわね」
「美しい……」
普段、寡黙な
「私のことを言っているの? そうだとしたら嬉しい」
「私はあなたに心を奪われてしまいました。どうか、私の妻になって欲しい」
「では、そうしましょう。今から私はあなたの妻です」
と
白蓮がそこまで話すと、
「白蓮、お前、大胆だな。出会ってすぐに求婚するなんて」
と涼悠が笑って言った。
「うん」
白蓮は寝転がっている涼悠に微笑み、彼の髪にそっと触れた。
「お前、俺に出会った時から好きだったんだな」
涼悠はにやりと笑って、揶揄う様に言った。
「うん」
白蓮は素直に認めて頷いた。
「俺も出会ったばかりのお前の求婚を受けたんだから、お前のことが好きだったんだろうな」
涼悠のこの言葉に、
「うん」
白蓮は嬉しそうに頷いた。
「なあ、白蓮。俺たちは前世で夫婦だったんだから、今も夫婦ってことでいいんだよな?」
涼悠が聞くと、
「うん」
白蓮は頷いて答えた。
「俺は男だけど妻? 妻だけど男?」
涼悠は夫婦という概念に囚われ過ぎて、頭の中を思考がグルグルと回った。
「考える必要はない」
白蓮はそう言って優しく微笑み、涼悠の頬に触れた。涼悠はそれがくすぐったくて嬉しくて、身体に痺れが走り、熱を帯びた眼差しを白蓮に向けた。そんな彼の表情が堪らなくて、白蓮の身体が疼き、欲情が抑えられずに、涼悠の身体に自分の身体を重ね、その頬に口づけをした。
「お前は可愛い」
白蓮の甘い言葉に、涼悠はまた身体に痺れを感じた。二人は唇を重ね、お互いの口腔に舌を差し入れ絡め合う。徐々に服は脱ぎ棄てられ、肌を合わせ愛おしくてたまらないとばかりに、お互いの身体を愛撫する。気が済むまで情交を楽しむと、何事もなかったかのように、
「なあ、白蓮。そろそろ着く頃じゃないか?」
と涼悠が聞いた。
「そうだな」
白蓮も冷静に答えた。二人はまだ服も身に着けていない。そんな時に、外の従者が、
「渋川へ着きました」
と報告した。
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