第24話
根の国で
「
いくら待ち続けても、
「己! 許さぬ!」
「
白蛇となった
白蛇となった
それはある夜、広い敷地にある大きく立派な屋敷での事。空には青く輝く満月が浮かび、その淡い光の下にも関わらず、陽に照らされたかのように華やかな少女が佇んでいた。白蛇は一目でその少女が己の妻であることを確信した。カサカサと音を立てて、暗い茂みから姿を現すと少女は言った。
「待っていましたよ」
白蛇は少女へ近寄り、
「迎えに来た。しかし、神格を失い力が使えない」
と嘆いた。
「構いません。わたしも今は人の子。あなたがいればそれでいいのです」
少女はそう言って、手を差し伸べると、白蛇はその白く細い指の先にそっと口づけをした。
「白くて美しい姿。あなたを
少女が言うと白蛇は、
「では、あなたを何と呼んだらいいだろう?」
と尋ねた。
「わたしの名は
少女は答えた。
茂みから出た白蛇は、その身体を晒すと、青白い月の光に照らされて白く輝き、幻想的で得も言われぬほど美しい。
「わたしの手に乗って、一緒に屋敷へ戻りましょう」
「私は蛇。あなたと屋敷へは行けません」
と悲し気に言った。
「それでは、人の姿になってはどう?」
「私にはその力が足りません」
「月の光があなたに力を与えています。今なら人の姿にもなれるでしょう」
「さあ、一緒に行きましょう」
「わたしにはすでに夫が
と答え、常に傍らにはあの白い蛇の
「わたしは天へ昇ります」
と言い、そのまま帰ることはなかった。
天界へ昇った
「
と声をかける神もいたが、まだ面白いことがないかと、退屈な神々は期待をしていた。
「わたしは夫を取り返しに行きます」
「それは難儀な」
と驚きの表情を見せながらも、ウキウキとしているようだった。
「
相も変わらず醜い姿の
「夫を返して頂きたいのです」
と素直に思いを伝えるその謙虚さと、穢れもなく清らかな
「ならばそのために、お前は醜い蛙にでもなるがいい」
と
「それで、夫をお返し頂けるのならそのように」
と
「ならば、蛙となれ!」
と言葉を投げつけると、
「
蛙となった
十年の月日を費やし、たどり着いたのは人々の暮らす都だった。そこで蛙となった
「何と美しき雅な蛙だろう」
十年の月日を経て、その蛙は七色に輝き、まるで宝石のように美しくなっていたのだった。
「これを
七色の蛙を拾ったのは、時の左大臣で雅な上流貴族だった。籠に囚われた蛙は御門に献上され、眺め物とされた。
ある時、
「わたしは夫のある身です。どうか、ここから出して頂きたい」
言葉を話す蛙に驚きはしたが、珍しい七色の蛙を手放したくはなかった。
「ならば、お前の夫もここへ連れて来よう。お前と同じ七色の身体をしているのか?」
と尋ねると、
「夫は人として
と
「ならば、その願いは叶えられぬ」
と答えて、二度と口を利くことを許さなかった。
その後も、
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