轟翔の復讐の完遂
「そんなの知らないっす」
「いえ、その答えがおかしいんです。普通取り憑かれてる間の記憶があるか無いかの二通りなんです。私が刑事さんに取り憑いてても刑事さんの意識がある状態か又は意識を失っている状態かです」
「あぁ意識を失っていたっすよ」
「ありえませんね。なら貴方の口からなんか知らないうちに歩いてることがあったんっすよって言葉が出てこないとおかしいんですよ。貴方は進んで身体を明け渡していた。その時の記憶はあったんです」
「記憶なんてないっすよ」
「あくまでとぼけるということですね。では主人に聞きましょうか?アナタ、取り憑いてる時彼の意識はどうなってたの?」
「アッタ、オクソコデ、ソモソモキョウメイシテイタカライシソツウガデキテイタヨシエトオンナケイジトオナジヨウニ」
「おい、裏切るのかよ。テメェの復讐も手伝う代わりに俺の復讐も手伝うって話だったろうが」
「オマエノフクシュウハカンスイシテイル。ソレヲイウナラカンスイシテイルニモカカワラズカラダヲアケワタサナイオマエモオレトノヤクソクヲヤブッテイルソレニオマエモニクキハシリヤノヒトリ」
「ふざけんなよチクショウ。姉さんを1人にして身体を空け渡せるわけねぇだろうがこの怨霊がよ。とっとと成仏しやがれってんだ」
「キサマ」
「アナタ、待って、復讐を完遂しているということは他の殺人にも手を貸したの?」
「アァ、ハジメニムスコノホウヲスパットクビヲモチサリアサガエリシタチチオヤノホウハ、ゴランニナッタトオリダ」
まさか鶴田啓吾も殺されていただなんて、怖くなって行方を絡ましたものだとばかり考えていた。鶴田啓一の方は、あの動画で見せられた通り殺されたんだろう。
「ペラペラじゃベリやがって、こんな奴を信じたのが間違いだったぜ」
「オレヲサンザンリヨウシタキサマニイワレルスジアイナドナイ」
「へっ、でもよ。刑事さんこの場合俺ってどんな罪に問われんの?だってよ。手を下したのはそこにいる怪異様なんだぜ」
「そうですねぇ。恐らく起訴したとしても精神異常者扱いとなり心神喪失の不起訴になるでしょうね」
「へへへ。その点では怪異様に感謝だよな。手を汚さずに3人を地獄に送ってくれたんだからよ」
「キサマァァァァ、ソレガハジメカラネライダッタノカァァァァ」
「当たり前だろ。普通の人間が損得関係なく身体貸すわけねぇだろ。馬鹿かよ。それに俺は走田を殺すために一度だけ賭けレースに参加しただけで走り屋でもねぇしな。お前に呪い殺される条件にも当てはまらないんだよ」
「待って、その条件が呪いの発動条件なら、どうして鶴田啓一と鶴田啓吾を呪い殺せたの?」
「わかんねぇよなぁ。簡単だよ鶴田啓一の車で鶴田啓吾が俺の両親を轢き殺したからだよ」
「でも、それは走り屋では無いんじゃないかしら?意味がわからない。どういうこと?」
「アノオヤコハカケレースノシュサイシャダッタノダ。オレノクビトリノノロイハハシリヤニカンケイスルモノニエイキョウヲアタエルコトガデキル」
「成程」
ということは一度でも参加した目の前の男は気づいてないみたいだが呪いの発動対象になっている。生かされてるのは共鳴できた器だからだ。だから執拗に朝霧武雄は身体を空け渡せと言っているのだ。
「さてと、もう犯人はその怪異って事だからよ。俺は帰らせてもらうぜ」
「待ちなさい」
「あぁん。俺は関係ねぇ。むしろここの誰にも関係ねぇんだよ。俺は捕まっても怪異が勝手にやったことだって訳のわからないことを口走るだけだ」
この状況は非常にまずい。確かに目の前の男を犯人として起訴したとしても心神喪失による不起訴にしかならない。
「キサマ、アネガイシキヲトリモドセルトシタラドウスル?」
「はっ、できんのかよ?」
「アァ、カノウダ」
「やってくれ頼む」
「ソウダナ。ジョウケンニオマエノカラダヲモライウケル。オレモリスクヲオウノダ。キサマモソレソウオウノタイカヲシハラウベキダロウ」
「くそっそんなことしたら姉さんに会えねぇじゃねえか。わかった一目あったら空け渡すと誓うよ」
「キャッカスル。イマスグダ。デキナイノナラコノハナシハナシダ。コノバカラトットトタチサルガイイ。キサマトノケイヤクモコレマデダ」
「待ってくれ、姉さんと話したら必ず空け渡す。一度会うぐらい良いだろう」
「ダメダ。キサマヲシンヨウデキン。サキニヤクソクヲヤブッタノハキサマダカラナ」
「チクショー卑怯だぞ。姉さんの魂を人質に取りやがって」
轟翔はかなり悩んでいる。でもこれは朝霧武雄の罠だ。
「ドウスルノダ。オレハドチラデモカマワンゾ。キサマガアネヲステルトイウノナラソレデモ。ニドトメヲサマサントオモウガナ」
「くっわかった。姉さんの意識を取り戻してくれ」
轟翔が手を大きく広げ首なしライダーを受け入れる姿勢を取る。それを見て、朝霧武雄がニヤリと笑う。
「ククク。ハジメカラコウシテオケバヨカッタ。ソノカラダモライウケルゾ」
「ダメー」
美和の言葉も虚しく朝霧武雄が轟翔の身体を完全に乗っ取る。そして、ヨシエさんを降霊させた美和に近づいてくる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます