怪異ルート 名推理ならぬ迷推理!?

プルルルプルルル、美和の携帯が鳴る。

「もしもし」

「刑事さん、柴だ。スターに関係者を集めた。話を聞きたいってことで何人か走田の事件には関係ないやつも集まっちまったが今から来て貰えるか?」

「了解です」

「じゃあ後ほど」

「えぇ」

ガチャ、ツーツーツー。さぁ、首なしライダー顔を洗って待っていなさい。美和は久根商店街にあるスターという店に向かう。カランカラン。

「いらっしゃいませ」

柴の元気な声と集められた不安そうな面々を前に美和は告げる。

「走田一を殺した首なしライダーはこの中に居ます」

ざわめくファウストの面々。轟照美に起こった真実を知りたくて来た。楓と山波宇宙とHeavenのママであるアケミ。

美和は、意気揚々と首なしライダーを指名する。

「首なしライダーは貴方ですね車羊くるまひつじ。いえ轟翔と言った方が良いかしら」

「えっ。俺は首も付いてるし、生きてる人間っすよ。意味がわかんねぇっす」

「お認めにならない。良いでしょう。貴方の中に首なしライダーが取り憑いていると言った方が良いのかしら」

「いやいやいや、全く意味わかんねぇっす」

「まだ認めないの?仕方がないわね。神境に宿りし神よ。このものの真実の姿を映したまえ」

いつも美和が首からぶら下げている神境がピカーンと光り輝き、その光に当てられた轟翔から首なしライダーが引き摺り出される。困惑する轟翔。

「チッモウスコシデココニアツマリシニクキハシリヤドモモチュウサツデキタトイウニクチオシキハヘビノミコノチカラカ」

「やっと出てきてくれたわね。首なしライダーこと朝霧武雄」

「ワガツマトコヲコロシキニクキハシリヤドモノイノチヲスベテムニカエスマデワガイカリハキエルコトハナイ。ヘビノミコヨジャマダテハサセヌ」

「どうやら完全に悪霊になりかけているようね。ちょっと話が聞けるようにしましょうか。出雲流いずもりゅう秘術ひじゅつ魂魄来来こんぱくらいらい

周りの他の人は目の前で起こっていることが現実なのか全く受け入れられず口をアングリと開けている。

「クッ、クルシイ。ヨシエ、タスケテ」

吉江さんの魂を宿した美和が語りかける。

「アナタ、私はここに居ますよ」

「オオ、ヨシエ、ヤットヤットアエタ」

「アナタがこれまで何をしていたか話していただけますか?」

「アア、クネトウゲヲバイクデイソイデイタオトコカラハシリヤノニオイヲカンジタオレハソノウシロニイタオトコニトリツキソノオトコヲアオリテントウサセイノチヲウバッタ。ソノオトコヲテラノキノネモトニウメタ」

神崎大和を殺したのは、走田一に取り憑いた朝霧武雄だったわけだ。

「アナタ、辛かったのね。次はどうしたの?」

「シバラクオレハソノオトコノナカニソンザイシテイタガフカイオンネントシュウネンをイダクオトコニキョウカンシノリカエタ。ソシテソノオトコノタメニカケレースデマエニオレガリヨウシテイタオトコヲコロシテクビヲモチサッタ」

「おい、待ってくれよ。俺は全く身に覚えねぇっすよ」

そりゃそうだろう朝霧武雄の証言が正しいなら轟翔の身体を借りて、走田一を殺したってことなんだから。こういう怪異と共鳴できるもののことを私はこう呼んでいる怪異憑かいいつきと。この場合、取り憑かれてる本人には自覚がない。ハッキリ言って厄介ね。

「主人が話している途中なので、暫く黙って頂けますか轟翔さん」

「でも、このままじゃ身に覚えのないことで俺が犯人にされるっす」

「わかりましたから、黙っていてくださいな」

「わかったっすよ」

轟翔は、しばしば納得して下がった。

「私のためにアナタに手を汚させてしまったのですね」

「トウゼンダロ。キュウキュウシャノシンロヲボウガイシタニクキハシリヤドモヲゼンメツサセルマデワガイカリハオサマラヌ」

やばい、怨念が強くなってきている。言葉を間違えたかもしれない。

「アナタ、抑えてください。私はまだ聞きたいことがあるのです。アナタがどうしていたかを知りたいのは当然でしょう」

「アァ、ソウダナ。ツギハソウダ。クビナシライダーヲサグルオンナケイジガガッコウニアラワレカクシンニセマラレルトオソレタオレハシンヤニソイツノイエニカズカズノシンレイゲンショウヲオコシオドシツケタ。シッキンシテキゼツスルノヲミトドケタオレハ。ナカノハイチヲモトニモドシタチサッタ」

私の家に現れた首なしライダーも朝霧武雄だったわけだ。だが、わからない。先程は轟翔だった。意識の切り替えがすぐにできるのなら轟翔は本当に朝霧武雄の存在を知らなかったのか?いやありえない。追求してみよう。

「轟翔さんだったかしら、貴方は主人が取り憑いている事に全く気付かなかったのかしら?」

「全く身に覚えないっすよ」

「では、意識がなくなっていた時のことはどう説明するのかしら?」

「はっ、何言ってんすか?」

「だってそうでしょ。全く身に覚えが無いのなら主人が取り憑いていた時、貴方自身どうしていたんですか?」

美和の疑問に轟翔の反論が始まる。

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