完全決着

「ハハハ。良い。良いぞ。さぁヨシエ。お前もこっちに来い。お互い別の身体で愛し合おう」

「アナタ、残念だけど今のアナタと一緒にはなれないわ。刑事さん身体返しますね」

「待て、ヨシエーー。俺はお前のためにお前のためにー何故だ何故だ何故だ何故わかってくれない俺はこんなにもお前を愛しているというのにもう一度降霊させろ蛇の巫女」

「残念ですが拒絶した霊をもう一度降霊させることはできません」

「ふざけるなぁーーーーーーーーもう良い。ここには走り屋のファウストの新旧が勢揃いしている。先ずは貴様らから呪い殺してくれるわ」

突然首を抑えて苦しみ出すファウストのメンバーと柴さんと山波さん。

「はーっはっはっ。お前がもう一度ヨシエを降霊させなければこのまま首を刈り取ってくれるわ」

「ここまでのようね」

「け、い、じ、さ、ん、あ、き、ら、め、ん、じ、ゃ、ね、ぇ」

苦しいはずなのに山波さんが諦めようとしていた美和に叱咤激励している。

「でも、他に方法が」

『蛇の巫女美和よ。我が力を解放せよ。さすればこの状況を打開してやろうぞ』

「ハクジャ様、起きたのですね。わかりました」

美和は意識を深ーく深ーく落として眠りにつく。美和の髪がみるみる白くなる。

「えっ美和、髪の毛が真っ白に」

驚く楓。

「久々だな表の世界に出るのは、どれ小手調べと参ろうか首なしライダーよ。いや悪霊と言おうか」

「口調も変わってる。まるで別人みたい」

「楓とやら、少し黙っておれ。結界を張るゆえな」

ハクジャが印を結ぶとファウストのメンバーと柴さん、山波さんが首締めから解放されたみたいでハァハァと皆肩で息をしていた。

「キサマーーーーーーーーー。ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「本物の怪異である首なしライダーと同化した者と愛見えることができようとは。この身の幸運に打ちひしがれておるわ。どれかかってこい。神の依代である神憑かみつきの美和に手を出したこと後悔するが良い」

何故私が神憑と呼ばれているか。それは私がいつもぶら下げている神鏡に秘密がある。この神鏡は我が家に代々伝わる代物で、子供の時に忍び込んだ社殿で、神鏡から聞こえる声に導かれた。初めて見た我が神社の神様ハクジャ様に神の依代である神憑の家系であることを教えられた。ハクジャ様と共に悪い者と戦うために私は契約した。まぁ契約しても怖いものは怖いままだったけどね。

「その身体を空け渡せ蛇神よ」

「そのような要求呑めるわかなかろう。その身を消すのは辛いがそこまで侵食されればもはや戻れぬ。残念だが消滅させてもらうぞ」

「俺はヨシエともう一度人生を歩むのだ。その身体を空け渡せ蛇神ーーーーーーーーーーー」

「もう良い。飽きた。永遠に眠れ首なしライダー」

ハクジャ様が首なしライダーを喰らう。

「オノレオノレオノレクチオシキハカミツキノヘビノミコヨ」

分裂した2つの魂。1つは朝霧武雄、もう1つは轟翔だろう。

「魂を救うのは、蛇の巫女の仕事よな。身体返すぞ美和」

ふっと目を覚ますと髪の毛が真っ黒に戻る。

「本当強引よねハクジャ様は。高天原にーーーーーーーー」

私は犯した罪と穢れを祓う大祓詞を唱えて、魂を天へと導いた。

「今日起こったことは現実?」

「訳がわからないわ。翔君が消えた」

「あの首の苦しみはもう2度と味わいたくねぇな」

「全く同感だ」

一通り皆が安心していると楓の携帯電話が鳴る。スピーカーにして電話をとる。

「もしもし」

「久根総合病院の橘です。轟照美さんが先程目を覚ましました」

「えっ、それは本当ですか?」

「はい、話もできる状態で私たちもびっくりしています」

「すぐに行きます」

「はい、お待ちしています」

ガチャ、ツーツーツー。

「テルミちゃんが、うっうっ。あの首なしライダーが約束を守ったということかしら?」

「えぇ、怪異は怪異憑から身体を貰う代わりに願いを叶えるとされてます。轟翔の顛末を伝えるのは辛いですが照美さんは知らなければなりません」

「親友である私が伝えます」

「わかりました。では皆さんで支えてあげてください。私は後処理がありますのでここで」

轟照美の病室に向かう皆を見送り、後処理を行い、怪奇特別捜査課を作った副総監に電話をかける。

「もしもし、出雲美和です」

「御苦労だったな。報告を頼む」

「首なしライダーの怪異と同化した朝霧武雄が怪異憑であった轟翔を捕食し、現世に現れたので、やむおえずハクジャ様に喰らってもらいました。首なしライダーは消滅。朝霧武雄と轟翔の魂は、大祓詞を唱えて天に送りました」

「怪異が強くなっているという噂は本当であったようだな。被害の拡大を防いでくれたこと感謝する。こちらから一課には被疑者死亡で送検と伝えておく。ゆっくり休んでくれたまえ。蛇の巫女様」

「はい。よろしくお願いします。流石に今回は疲れ果てました」

「本当に御苦労であった」

ガチャツーツーツー。家に帰るとそのままベッドに倒れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る