首無しの死体
美和は、電話を切った後寝ぼけていたこともあり携帯をベッドの下に落としてしまう。あれっ何でベッドに磁石がそれにベッドが動かないように固定していたストッパーが上がってる。誰かが侵入した?いや私が寝ぼけてあげちゃったんだよねきっと。支度を済ませ、電車に乗り加賀美警察署に向かう途中行きつけの珈琲屋に寄る。
「マスター、いつものをテイクアウトで」
「美和ちゃん、いらっしゃい。テイクアウトなんて珍しいね」
「いつもより1時間も早く押しかけたのにマスターが居て助かったぁ〜」
「流石に営業時間外だけどねぇ」
「ごめんなさい」
「良いんだよ。ちょうど仕込みをしていたところでね。はい卵サンドとブレンドコーヒーのセット」
「ありがとう、急いでるからお釣りは取っといて」
「いつもありがとね。行ってらっしゃい」
「行ってきまーす」
加賀美警察署に着くと会議室の一つに通される。
「君が息子の対応をした警官かね?」
「鶴田啓一さん?」
「お前のせいで、息子は息子は」
「落ち着いてください」
「病んで部屋から出てこない」
「えっ?」
「お前の対応が悪かったせいだ」
「どういうことですか?」
「殺してやる」
警察署で警官相手に殺人予告?しかも話が全く噛み合っていない気がする。次の瞬間急に苦しみ出す鶴田啓一。そして後ろに現れる首が無い何か。
「言われた通りに言ったのに何故?」
「轟自動車の創設者の交通事故はお前の指示だな?」
「何を言っている?」
「言われたことだけに答えろ」
「ぐっうぅううう。わかった言う」
「話せ」
「息子の独断だ。何も知らない」
「そんなわけが無いだろう!」
「ぐっうううぅ。ホントだホントなんだ。勝手に車を運転して事故を起こしたんだあの馬鹿は」
「でも利用したよな。違うのか?」
「利用した。それは認める」
「それだけじゃねぇだろ!照美を。翔を利用して手籠にしようとしたよな?」
「そんなことしていない」
「嘘をつくな!」
「ぐっううううう。それもあの馬鹿息子が走田とか言うやつに渡しやがった。全く関与していない」
「そうか。よくわかった。だが権力者は死なねぇとわかんねぇみたいだな」
「何を?」
プシュッという音と共に鶴田啓一の首が無く。そこに身体だけが転がる。
「出雲美和、最期の警告だ。まだ追うつもりなら。次は容赦しない」
ボイスチェンジャーで変えた不規則な言葉が不気味さを物語っていた。扉が開き入ってくる佐々木一課長と不動。
「美和くん。鶴田啓一が電話で抗議してきたよ。全くなんてことしてくれたんだ」
「出雲、一課長を怒らせるとはな。ってその横に倒れている首なしの死体は、まさか手を上げろ!」
「貴方たち揃いも揃って馬鹿なのよく見なさいな?」
後ろから唐突に聞こえる女性の声にみんな近くに行き触ろうとするが触れられない。
「わかったかしら。精巧に作られたプロジェクトマッピングよ。でも一課の人間がこんな簡単に騙されて、大丈夫なのかしら?」
「ぐっ申し訳ありません。柊管理官」
「謝る相手が違うと思うのだけれど」
「すみません。出雲警視」
「いえ、私も目の前の光景に腰を抜かしてしまったので」
「まぁ無理もないわね。恐らく鶴田啓一は死んでいるわ」
「えっ?」
「それも今ね。捜査員を鶴田啓一の自宅に向かわせなさい」
「了解しました」
「死体の状況次第では怪奇事件として怪奇特別捜査課への早期の引き渡しを命じます」
「はい」
「出雲警視は、今の間に朝御飯を食べてきなさい。といってもとても食べる気分にはなれないかしら?」
「いえ、大丈夫です」
「そう。無理はしないようにね」
柊管理官、40歳には見えない妖艶さを纏っている女性管理官。本部から呼ばれて来たのだろう。スタスタと去っていく。その動き方も艶っぽい。美和は、柊管理官をそう観察し食堂に向かう。端っこの方に座り、行きに買ったマスターお手製の卵サンドとブレンドコーヒーのセットを食べる。食べ終わると携帯がなり、鶴田啓一の首なし死体を発見。その首がどこにも見当たらない。部屋が密室である。息子の鶴田啓吾が見つからない。不可解なことが多い。走田一の事件と同一犯による犯行として、怪奇特別捜査課に引き継ぎたいとのことなので、美和は「捜査資料を怪奇課へお願いします」と電話を切る。
そして、柴に話を聞くべく久根商店街にあるスターに向かう。カランカラン。
「すまねぇな。まだ準備中だ」
「出雲です」
「刑事さんか。何か聞きたいことでも」
「えぇ」
「チームファウストのメンバーで、走田一が死んだ時怪しい動きをしていた人は居なかったかしら?」
「怪しい動き?いや、そんな奴は居なかったはずだが。はっ1人いた」
「誰、その日初参加した奴なんだけどよ。誰の紹介かもわからねぇ。名前は確か車って名乗ってた」
「車?轟の文字に似ている。まさか」
「轟って照美のことか?」
「貴方も照美さんのことを知っているのね」
「あぁ、弟の学費のために学校を辞めてからは会っていないが」
「その弟が車よ」
「何だって」
美和は神崎大和の件と轟照美の件を話した。
「そうか大和は、走田に殺されたのか。クソッそんなことも知らずに俺は大和の幻影をずっと追いかけてたのかよ。それに俺が話した走田の自慢話が照美のことだったなんて。俺は何も知らなかった」
そう言葉を出し切ると涙を溢す。
「すまねぇ大和。お前のファウストを俺は守れなかった」
これで確信した。全ての事件の犯人は1人しかいない。
「柴さん、ファウストのメンバーを全員集められますか?」
「可能だ」
「全員を集めてください。事件の解決と行きましょう」
「わかった。そういうことならこの店を使ってくれて構わない」
「ありがとうございます」
「俺も大和に何があったのか?照美に何があったのか?その全てを知りたい」
「えぇ、必ず全て明らかにします。一旦署に戻りますので、集まったら御連絡ください」
「あぁ」
美和は加賀美警察署の怪奇特別捜査課に戻り、鶴田啓一の現場写真を見る。プシュッという音が確かに聞こえたのに血のない遺体。消えた鶴田啓吾。そして一つの考えに思い至る。
「そうか、そういうことか!お前の犯行の全て、全部明らかにさせてもらうわよ。首なしライダー」
美和の推理ショーが幕を開ける。
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