神崎大和失踪事件の解決
山波宇宙は落ち着くと美和に聞く。
「大和は誰に殺されたんだ?」
「証拠はありませんので、現時点で断言はできません」
「そうかい。あっ大和のバイクは見つかったか?」
「いえ」
「アイツのバイクには、カメラが付いてんだ。それになら事故にあった時の状況が詳しくわかると思って、俺も久根峠を探し回ったんだがよ。未だに見つかってねぇ。あの日から毎日周辺の処理場も回ってバイクを確認させてもらったりしてるがアイツのバイクはねぇ。恐らくどっかに不法投棄されてるのは間違いねぇんだ」
「こちらでも捜索を進めるように伝えます」
その時携帯が鳴り響く。
「もしもし」
「出雲警視ですか?」
「はい」
「良かった〜久根署の守下です」
「何か分かりましたか?」
「はい。5年に一度の山伏修行に出ていた住職の方が戻ってきまして、山の頂上付近で投げ捨てられているバイクを発見したらしいので、回収して調べたところ。映っていたんです。事故の時の様子が鮮明に。それで、出雲警視にお聞きしたいんですが走田一の事件を担当しているそうですね」
「えぇ」
「彼は、ただの被害者ではなく加害者でもあったんです。神崎大和を殺したのは、当時13歳の走田一です」
「えっ、このことはお伝えしても構いませんか?」
「えぇ、神崎大和失踪事件は被疑者死亡の殺人事件となりますので大丈夫です」
「分かりました。ありがとうございました」
「それとこれもお伝えしてあげてください。バイクのリアボックスの中から結婚指輪が出てきたんです。では失礼致します」
ツーツー。
美和は2人に向き直り電話の内容を告げる。
「そんなことって。うっうっ」
「アイツ、そうかそれで俺の同行を嫌がって1人で行ったのか。クソ。そこまで考えてたならお袋のこと悲しませんじゃねぇよ。あの馬鹿野郎」
「何もお役に立てませんでしたがこれで神崎大和失踪事件は被疑者死亡の殺人事件として取り扱われることとして解決となります。5年間も事件解決に至れず申し訳ございませんでした」
美和は2人に深々と頭を下げる。
「そんな、出雲さんのお陰です。ありがとうございました」
「出雲さんが謝る必要なんてねぇ。ありがとう。そうだ首なしライダーについて、まだ調べてるなら久根図書館にある過去の新聞を当たって見るといい」
「久根図書館にある過去の新聞?」
「あぁ、俺が語るより自分で見てもらった方がいいと思ってな」
「分かりました。当たってみます」
美和は立ち上がり外に出るとガコンと何かに当たる。
「イッターイ、宇宙何してくれんのよ?ってえっ美和」
「楓がどうしてここに?」
「楓、何しにきたんだよ」
「うっさいわね彼女が訪ねてくるのに連絡いるの?ひょっとしてやましいことしてたんじゃ?」
「お袋も星大もいるのにそんなことするかよ」
「楓ちゃん、いらっしゃい」
「楓ねぇねぇ、抱っこ〜」
「星大は可愛いなぁ」
ヒョイと抱っこする。どさくさに紛れて胸を触っている?エロ魔人だ。
「コラ星大、楓ちゃんに甘えない」
そう言って引き離す。
「叔母様、良いんですよ。私にとっても大事な弟になるんですから」
「まぁ、やっと宇宙が決心したのね」
「まぁ、良い機会だな。俺の時間もようやく動き出したみたいだし。楓、俺と結婚してくれ」
「えっ?」
面食らった顔をした楓は次の瞬間みるみる顔を真っ赤にする。
「何だよ?嫌なのか?」
「ううん。不束者ですがよろしくお願いします」
その場に居合わせた美和も「おめでとう楓」と祝福して、その場をこれ以上邪魔しないように立ち去る。
久根図書館に向かい。過去の新聞コーナーを読み漁り2つの記事に目が留まる。
以下抜粋
『久根県にて走り屋による渋滞誘発により、救急車が動けず
『久根県で自殺死体を発見!その死体の首は、千切れて床に無惨な姿で落ちていたが身体は警察が到着した時にはぶら下がっていたそうだ。亡くなった男性の名は
待って、久根高校の掲示板には、首なしライダーは走り屋を恨んでいると書いてあった。まさか、犯人はこれを利用した。朝霧武雄の死に方も尋常ではない。首は床に落ちているのに身体は警察官が来てから降ろしたというのだ。首を括って死んだ朝霧武雄の身体は浮いていた。恨みの強さは尋常ではない。怪異となった可能性が高いとみて良いだろう。そうでなければ浮いていた身体の説明が付かない。首なしライダーの正体は朝霧武雄?いやありえない、だとしたら走り屋ではない鶴田啓吾の元に『ツギハオマエノバンダ』と現れた説明が付かない。本物と騙るものの2人が居るのは、まず間違いない。本物が朝霧武雄。騙るもので1番怪しいのは轟翔だ。久根高校にいるという轟翔。まさかそんなことがファウストのメンバーの中に居るのね。今日はもう遅い。明日は、鶴田啓吾に轟照美転落事故と轟夫妻の交通事故について尋問して、ファウストのメンバーで怪しい人が居なかったかを柴さんにもう一度話を聞かないと。
美和は、コンビニでビールを買い自宅に帰る。お風呂から出て、何も作る気がないなぁと鞄に入れたビールを取り出す時にガサガサと音が鳴る。何だろうと引っ張り出すと店長のオススメの一品だった。
「あっ」
一昨日の昼間貰ったことをすっかり忘れていた。皿に取り出してみるとイカの唐揚げだった。ゲソ天という奴だ。レンジでチンして、イカの唐揚げを摘みにビールを飲む。
「店長、忘れててごめんなさい。すごく美味しいです」
感謝を口にして食べ進める美和だった。
そして眠る美和。プルルルルプルルルル。
「んんんん?」
なっている携帯を寝ぼけながら取る美和。
「はい」
「お前すぐに出ろよ」
「不動?」
「佐々木一課長がご立腹だ。すぐに来い」
ツーツー。不動はそれだけいうと電話を切る。
こんな朝方に何だと言うのだろう。美和は支度を済ませると加賀美警察署に向かう。
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