重要な証言!

「行ってきます」と震える足で家を出て、電車に乗り、行きつけの珈琲屋に向かう。

「美和ちゃん、顔が真っ青じゃないか、何かあったのかい?」

「マスター、ううん。何でもない」

「何でもないって顔じゃねぇなぁ。おじさんに話してみな。聞くだけなら聞いてやれるからよ」

「深夜にね。ポルターガイスト現象と怪異に遭遇しちゃったの」

「うん、まぁ何だ。ふざけてんのか?と普段なら言っているだろうが美和ちゃんの顔を見りゃ嘘じゃないのはわかる。おじさんは、怪異や都市伝説の類に関しては、わからねぇから力になってやれねぇのは、心苦しいけどな」

「マスターに聞いてもらって、少し軽くなったよ。ありがとう」

「そうかい。じゃあ、今日はサービス。卵サンドとブレンドコーヒーのセットは、おじさんの奢りだ」

「マスター大好き〜」

「うっやられた〜」

美和のバッキュンポーズにやられるマスター。

「クスクス」

「やっと、笑ってくれたな。笑顔の美和ちゃんが良いよ」

「マスター、ありがと」

「照れる美和ちゃんも可愛いねぇ〜」

「もうからかわないでください〜」

「ハハハ」

美和はペロリと平らげると。

「マスター、ホントにありがと。少し元気出たよ。行ってきます」

「行ってらっしゃい。美和ちゃん」

美和は、加賀美警察署の怪奇特別捜査課に向かう。

部屋に入ると誰かが座っていた。

「すいません。案内の人に聞いたらここで待てと言われたので、走田の取り巻きをしていた鶴田つるたと申します。次首なしライダーに殺されるのは、俺なんです。助けてください」

「どういうことですか?」

「昨日、首なしライダーが俺の前に現れて、『ツギハオマエノバンダ』と。でも心当たりが無いんです。俺は走り屋じゃない首なしライダーが狙うのは走り屋だけですよね。俺は走田の取り巻きってだけなんです」

首なしライダーが彼の前に現れた?確かに久根高校の掲示板にも走り屋だけを狙うと書かれていた。そのことを知っているということは、彼も久根高校の在校生と見て間違いないだろう。まさか、首なしライダーが2人いる?いやいやそんなはず無いわよね。本物と騙るものが現れた?可能性としてはこっちのがあり得る。ひょっとして、彼なら昨日の柴の証言に関して、新たな証言が出てくるかもしれない。聞いてみましょう。

「あの、聞いてますか?こっちは生き死にがかかってんだぞ。おい」

「あっすみません。考えをまとめていました。それで思い当たる可能性があったのですが」

「何だよ」

「走田が大金で部屋に連れ込んで薬を飲ませて強引にレイプして孕ませた女性が居たそうですね。貴方もその現場にいたんじゃありませんか?」

「グッ何故そのことを知ってるんだ。誰から聞いた」

「走田本人が自慢げに語っていたそうですよ。ファウストのメンバーにね」

「あの馬鹿野郎。後片付けした俺の身にもなれってんだ」

「墓穴を掘りましたね。強姦罪で貴方からも詳しく話を聞かねばなりませんね」

「待て、俺はやっちゃいねぇ。現場にいて、後片付けをしただけだ」

「後片付け?」

「クソッ。違法な媚薬成分の入ったドラッグの処分だよ」

「違法薬物取締法違反ですね。組織犯罪対策課に連絡させてもらいます」

「クソッ。死んでからも迷惑かけやがって」

「もう少し詳しく話を聞かせてもらいましょうか?」

「何だよ」

「その女性の身元は分かりますか?」

「確か。テルミだったかな。キャバクラHeavenのキャバクラ嬢だ。走田が胎の中の子ごと蹴り上げて、流産させてからは、連絡を取ってないからどうなったかは知らない」

「そのことを知ってるってことはその現場にもいたのね?」

「あぁ、一応対応したのは俺だ。呼んだ時にも大金を払った。慰謝料ということでその時も100万ほど包んだからな」

「クズね」

「あっ何だと人の気も知らないで」

「あっクズじゃなくてパシリくんかしら?金だけ払ってるもんね。その腹いせに走田に首なしライダーの噂を流したんでしょ?」

「ギクッ」

「走田の怒りを買って殴られた男性って君のことでしょ」

「ムカついたから走り屋であるアイツが死ねば良いと思って久根峠の話をしたんだ。走り屋の聖地での話だから食いついて来て、怒り狂ったアイツは信じず。まんまと久根峠に誘き出せたし、そこで死んでくれたってのにな」

「単純な子ね。私は、ファウストのメンバーから殴られた子が居るとしか聞いてないのにベラベラと喋ってくれるなんてね」

「えっ」

「貴方も容疑者の1人ということよ」

「くっ」

「その前に違法ドラッグの件で逮捕ですが」

「今は持ってねぇ。というよりもおそらく立憲できねぇだろ。現行犯じゃない限り。それに俺は使ってすらいねぇからそもそも検査しても何もでねぇよ」

「へぇ、でも言質取ったから」

「それも、警察に言わされたって俺は答えるぜ」

「素直に話さないって事ならずっと首なしライダーの恐怖に怯えていることね」

「ずりぃぞ。警察が市民を脅すのか?」

「善良な市民にそんなことしないわよ。でも、悪人なら何の問題も無いわよね」

「くっ、わかった。だから保護してくれ」

「良いわ。組織犯罪対策課にお願いしておくわ」

重要なことがわかったわ。Heavenのキャバクラ嬢テルミについて、調べるとしましょう。ぎゅるるる。もう13時過ぎてる。どうりでお腹も空くわけだ。まずは腹ごしらえと行きましょう。

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